あらゆる機能や装備を“特盛り”にした「iPhone 12 Pro Max」
続いて、iPhone 12シリーズでもっとも大きなモデルとなるiPhone 12 Pro Maxです。おもな注目点は以下の通りで、ベースとなるiPhone 12 Proからカメラ性能を引き上げたのが特徴です。
▼ iPhone 12 Pro Maxのおもな特徴
- iPhone史上もっとも大きく、もっとも高精細の6.7インチSuper Retina XDRディスプレイ(2778×1284ドット)を搭載
- 広角カメラのセンサーサイズを従来より47%大型化、手ブレ補正機構をセンサーシフト式に変更
- 望遠カメラの焦点距離を望遠寄りの65mmに変更
- iPhone 12 Proとの価格差は11,000円に抑えた(SIMフリー版、同容量モデルでの比較)
▼ iPhone 12 ProとiPhone 12 Pro Maxの販売価格(SIMフリー版、税別)
容量 | iPhone 12 Pro | iPhone 12 Pro Max | 差額 |
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128GB | 106,800円 | 117,800円 | +11,000円 |
256GB | 117,800円 | 128,800円 | +11,000円 |
512GB | 139,800円 | 150,800円 | +11,000円 |
パネルサイズとバッテリー容量の違いにとどまっていたiPhone 11 Pro/Pro Maxに対し、iPhone 12 Pro/Pro Maxはカメラ機能でも違いが設けられ、あらゆる機能や装備を“特盛り”にしたという印象が強まりました。一方で、iPhone 12 Proからの価格アップは容量を問わず11,000円に抑えられており、価格面はかなり頑張ったという印象も受けます。
iPhone史上最大となる6.7インチのSuper Retina XDRディスプレイは、従来のiPhone 11 Pro Maxと比べて数字上ではわずか0.2インチの増加ですが、数字以上に大きくなったと感じます。解像度も高まっており、動画の再生だけでなく動画編集などの細かな作業もストレスなくできるでしょう。画面サイズの拡大を図りながら、デザイン変更で本体サイズは高さがわずかに増した程度に抑えられ、重量は約226gで据え置かれた点は評価できます。
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iPhone 12 Pro Max(左)は旧世代となった「iPhone 11 Pro Max」(右)よりも狭額縁となったため、画面が大きくなった割に本体サイズの肥大化は最小限に抑えられている。一見するとiPhone 12 Pro Maxは重そうに見えるが、重量はどちらも同じ
デザインや仕上げはiPhone 12 Proと同じで、高級感や存在感はタップリ。細かな部分の仕上げもていねいで、スマホに質感の高さを求める人にとっては最高のモデルとなりそうです。
注意したいのが厚みで、7.4mmという数字はカメラ部を除いた部分の数字となること。センサーの大型化などを受けて、カメラ部はiPhone 12 Proと比べてもかなり大きく、盛り上がりもかなり増しています。カメラ部の盛り上がりでほかの機器を傷つけないように、しっかりとしたケースに入れるのがよさそうです。
カメラ機能はiPhone 12 Proから強化するも、体感できる変化は小さめ
カメラ機能は、iPhone 12 Proからいくつかの部分が強化されています。おもな改良点は以下の通りで、普段もっとも利用する機会の多い広角カメラを重点的に改良しています。
- 広角カメラのイメージセンサーを従来より47%も大きい大型タイプに変更
- 広角カメラの手ブレ補正機構をレンズシフト式からセンサーシフト式に変更
- 望遠カメラの焦点距離を従来の52mm相当から望遠寄りの65mm相当に変更
イメージセンサー(撮像素子)の大型化で撮影時に取り込める光の量が増えるので、室内や夜景など低照度のシーンではiPhone 12 Proよりもいくぶんノイズが少なく精細感のある仕上がりになったと感じました。多少薄暗いシーンでもナイトモードに移行せず、通常モードで撮れる場面が少し増えたようにも感じます。センサーサイズが大きくなったことで被写界深度が浅くなり、ピントが合った前後のボケが大きくなって立体感のある写真に仕上がる場面もありました。
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iPhone 12 Pro Maxの広角カメラを使って撮影。仕上がりの写真よりも相当暗い状況だったものの、撮影に数秒かかるナイトモードに移行することなく、通常モードで撮影できた。ノイズも少なく、精細な仕上がりに驚く
手ブレ補正機構の改良は、センサーの大型化を受けてレンズが大きく重くなったことで、レンズシフト式よりはセンサーシフト式のほうがブレ補正の性能を確保できる、という判断だとみられます。ただ、新たに回転方向のブレ補正が可能になったわけでもなさそうで、iPhone 12 Proと動画を撮り比べても明確な差は確認できませんでした。
改良の違いが分かりやすかったのが望遠カメラです。望遠側にシフトしたことで、バストアップのポートレート撮影がいくぶん離れた場所から可能になり、ゆがみを抑えたバランスのよい印象になったと感じます。望遠寄りになることで背景が写り込む範囲も抑えられ、よりスッキリと仕上がるメリットもあります。
複数枚の画像合成による“ハイレゾショット”が追加される?
実際にカメラ機能を使ってみた印象では、うたい文句から想像したほどの大胆な変化や違いが感じられたわけではなく、思っていたよりは控えめの改良だったと感じます。ただ、利用頻度の高い広角カメラの基本的な画質向上は、後日対応するRAW撮影機能「Apple ProRAW」を見据えたポテンシャルの向上を狙った可能性があります。撮影時のノイズが少なければ、現像でさまざまな調整を施しても画質が荒れることが少なくなるので、大胆な調整も可能になるからです。
現状では変更の効果がいまひとつ感じられなかったセンサーシフト式の手ブレ補正機構は、「複数枚の画像合成による高画素撮影機能」を将来的に追加するための変更なのでは…?と感じました。
センサーシフト式の手ブレ補正機構を搭載するオリンパスなどのミラーレスカメラは、イメージセンサーをピクセル単位で細かく動かしながら連続で撮影し、撮影した画像を合成することで、4000万~5000万画素前後の高精細な写真を生成する機能を備えています。手ブレ補正機構がセンサーシフト式になったiPhoneも、理論的には同様の機能を搭載できるので、ファームウエアのアップデートのタイミングで追加してくる可能性も考えられるわけです。
近ごろ、4000万画素~1億画素クラスの高画素センサーを搭載するスマートフォンが増えてきましたが、そこまで高画素だと1ピクセルあたりの面積が小さくなり、画質面でのメリットは薄くなります。iPhone 12 Pro Maxは大型センサーながら画素数を1200万画素に抑えており、1ピクセルあたりの面積はかなり余裕があります。このセンサーで複数枚の画像を合成すれば、ダイナミックレンジが広くノイズの少ない高精細写真が得られるのは間違いなく、一般ユーザーのみならずプロにとっても相当魅力的な機能になりそうです。
画像の重ね合わせ技術はナイトモードで実績がありますし、A14 Bionicの処理性能や機械学習性能を生かせば、撮影後の画像合成がより自然に、より短時間で処理できるのは間違いありません。現時点ではアップルからは何も発表されていませんが、期待したいと思います。
メモリー容量を問わず、iPhone 12 Pro MaxはiPhone 12 Proの1万1000円高に抑えられており、大画面化やカメラ機能の向上など装備の差を考えると最低限の価格アップといえ、お買い得感が高いと感じます。ちょっぴり大きめのサイズを許容できるならば、プロに限らずiPhoneで写真や動画を楽しみたい人に薦められるiPhoneといえます。