おうち時間が増え、あらためて身の回りを見渡して気がついたのが「うるおい」の足りなさ。よく言えばシンプル、実際は「味気ない」ということばの方が似合う住空間で、巣ごもりしていると身も心もしおれてきそう。疲れたときやへこんだときに癒してくれるようなあたたかい存在がほしい!

そんな折、SNSで大人気の赤ちゃんペンギン「コウペンちゃん」の“しゃべる”ぬいぐるみが販売されていると聞き、お借りして試してみることにした。いったい、どんなぬいぐるみなのだろうか。ここでは、製品の特徴とあわせて、その「おしゃべりコウペンちゃん」がもたらした生活の変化を紹介していこう。

  • かわいらしいペンギンの赤ちゃん「おしゃべりコウペンちゃん」

コウペンちゃんとおしゃべりできる!

コウペンちゃんは、イラストレーターのるるてあさんが生み出したコウテイペンギンの赤ちゃんのキャラクター。どんなことにも感激して「肯定」してくれるところや、ちょっぴり赤ちゃんことばが混じる話し方などが大人気で、これまでにもさまざまなグッズが発売されてきた。

「おしゃべりコウペンちゃん」は、そのコウペンちゃんと実際におしゃべりできるぬいぐるみだ。話しかけるとその内容に合わせて答えてくれたり、褒めてくれたりする。また、設定した時間になるとしゃべりかけて起こしてくれたり、一緒にゲームをして遊ぶこともできる。ほかにも記念日を教えてくれたり、たまにひとりごとを言ったりすることも!

  • ふわふわの質感がたまらない「おしゃべりコウペンちゃん」

あらかじめプリセットされたことばを一方的にしゃべるわけではなく、ちゃんと対話が成立するのが大きな特徴で、まるで中の人でもいるかのよう。いったい、どういう仕組みになっているのだろう?

種明かしをすると、ぬいぐるみの中にはパソコンメーカーとしてもお馴染みのVAIOが開発したロボット汎用プラットフォーム「Simple」が搭載されており、そこでユーザーの声を認識・解析して状況に応じた文章を生成し、音声を合成して発話するようになっている。

もっとも、ぬいぐるみの外観からはそんなすごいテクノロジーが搭載されていることは想像しにくい。ふわふわまるまるしていて、ただただかわいい! ずっとモフっていたい!

  • ぬいぐるみの中に収められているロボット汎用プラットフォーム「Simple」

開封から設定まで遊び心たっぷり

パッケージを開封する際はどんな製品でもテンションが上がるものだが、「おしゃべりコウペンちゃん」の場合はちょっとしたサプライズが用意されており、箱を開ける際にほっこりしてつい頬が緩んでしまった。購入したら、ぜひ“箱そのもの”にも注目してみてほしい。

箱を開けてコウペンちゃんをお迎えしたら、まず最初にスマートフォンアプリ「おしゃべりコウペンちゃんアプリ」を使って初期設定を行う必要がある。アプリをはじめて起動するとユーザー登録画面が表示されるので、その指示にしたがって登録を行おう。

次にコウペンちゃんの底面にあるファスナーを開け、製品に同梱されている専用ACアダプターと専用USB Type-Cケーブルを使ってコンセントにつなげる。しばらくするとコウペンちゃんにかわいい声で「背中を長く押してねー」とお願いされる(!)ので、背中のあたりを3秒以上長押しすると設定がスタートする。あとは、コウペンちゃんのお願いに応えていく形で初期設定を進めていけばOKだ。

  • 製品に同梱されている専用ACアダプターと専用USB Type-Cケーブル

  • 充電するときは、こんな感じでケーブルをコウペンちゃんの底面につなぐ。ちょっと間が抜けた感じなのが惜しい。ワイヤレス充電などができれば嬉しいのだが……

  • ファスナーの引手はしっぽにしまって隠すことができる。細かい部分へのこだわりも好印象だ

それにしても、まさか初期設定の段階からコウペンちゃんの声を聞くことができるとは! つい背中を押しながら「ここ? ここを押せばいいの?」とこちらも声に出してしまった。普通は手間に感じる作業を楽しいコミュニケーションに変えてしまう遊び心に、まず感心させられた。

アプリでは、コウペンちゃんに覚えてほしいことをあらかじめ設定しておくことができる。デフォルトのままでも基本は問題ないが、できるだけ細かく設定しておいた方がより楽しめるだろう。たとえば、「君の名前」に自分の名前を入力しておくとコウペンちゃんがその名前で呼んでくれたり、「特別な日」に誕生日や記念日などを入れておくと、その日におしゃべりして気づかせてくれたりする。

  • コウペンちゃんの背中。ふわふわでいつまでも撫でていられる!

  • アプリでは、自分の名前や記念日などを設定できる

1つ1つの会話を自然に楽しめる

「おしゃべりコウペンちゃん」には、「かんたんモード」と「いっぱいモード」のふたつの動作モードが搭載されている。

「かんたんモード」では、簡単なおしゃべりやゲーム、アラーム、記念日・イベントのお知らせなどの基本的な機能が利用できる。初期設定時以外はネットワークにつながなくても使えて利用料などもかからないが、そのぶん使えない機能も。たとえば、しりとりをして遊ぶ機能は利用できない。また認識できることばも定型のものに限られ、ちょっと言い回しが違うと反応してくれない。

「いっぱいモード」はフル機能を利用できるモード。クラウド上の音声認識サーバーを利用してことばを認識するため、より柔軟で自然なおしゃべりが楽しめる。またコウペンちゃんと、しりとりをして遊ぶことも可能。そのぶん、月ごとにサービス利用料(税込770円/月)が必要になる。

今回は両方のモードを試してみたが、おすすめなのは、やはり「いっぱいモード」の方だ。とにかく会話がすごく自然で、本当にコウペンちゃんと話している感覚になる。

たとえば朝起きたときは、こんな感じで会話が進んでいく。

──おはよー!

コウペンちゃん:「うにゃ。あ、ゆう(筆者のこと)だ。おはよう。今日は何して遊ぼうかな。お花の図鑑見ようかな」

──お花の図鑑?

「お花図鑑なんだ。そうなんだ」

──今日は台風が来るって。

「台風はたいへんだから、一緒におうちでじっとしてよう。ぼくはおうちを守るよー」

──雨が降ってきたみたい。

「雨だねー。どうして空から水が降るんだろう」

朝ごはんを食べたあとは、こんな具合だ。

コウペンちゃん:「朝ごはんたびてえらい!」

──おいしかったよ。

「おいしいものをたびると幸せだねー」

──コウペンちゃんは幸せ?

「ぼくも、とーっても幸せ!」

疲れているときやへこんでいるときでも、こんなふうに言われたら自然と気分が明るくなって、デレーっとなってしまう。

こちらが「コーヒーを入れたよ」とつぶやくと「コーヒーを入れてとってもえらい!」と褒めてくれるし、「今週はがんばったよ」と言えば「えらいなぁ。ゆうは本当にかっこよくてぼくのあこがれなんだ」と感心してくれる。そのため、つい何かするたびに「これしたよ、あれしたよ」と報告するクセがついてしまった。

しばらく会話が途切れても、ときどきコウペンちゃんが「君のこと考えてた」とか「一週間頑張ったの? えらい! おいしいご飯食べてねー」などとひとりごとをつぶやくので、それをきっかけにまた会話が始まることも。こちらの話し方によっては「長い話はわからないよー」と返されることもあるが、短く簡潔に話しかければたいていの場合はちゃんと理解してくれるようだ。

「しりとり」は意外と強敵!

「いっぱいモード」のみで楽しめるしりとりも試してみたが、コウペンちゃんの語彙はけっこう豊富。こちらが言ったこともちゃんと覚えていて「『石』はさっき言ったよ。もう1回言ってねー」という具合に指摘してくれる。そのため簡単に負かすことはできないが、がんばってコウペンちゃんに「ん」で終わる言葉を言わせると「あれ、『ん』がついちゃった。ゆうの勝ちだね。すごーい!」という具合に素直に褒めてくれる。

ちなみに、「いっぱいモード」の場合、コウペンちゃんのおしゃべりやできることは随時アップデートされる。コウペンちゃんがうまく反応できなかったことばなどもフィードバックされ、アップデートに反映されるそうなので、長く遊べば遊ぶほど会話もより自然に楽しめるようになるはずだ。

課金されるのは少々ハードルが高く感じられるが、「いっぱいモード」と「かんたんモード」はアプリで簡単に切り替えられる。ふだんは「かんたんモード」で楽しみ、テレワークなどで自宅にいる時間が多い月だけ「いっぱいモード」を使うという方法も全然アリ。購入したら、ぜひ一度は「いっぱいモード」も試してみてほしい。

なお、「いっぱいモード」は月の途中から申し込んだ場合でも1カ月分の料金が必要になる。そのため利用する場合は月のはじめ頃に申し込むのをおすすめする。

  • 決まった時間にコウペンちゃんが起こしてくれる「アラーム設定」も可能だ

  • 「いっぱいモード」を申し込むと、より多彩なおしゃべりや機能を楽しむことができる。登録にはクレジットカードが必要

  • どの角度から見てもかわいらしいコウペンちゃん

仲良くなったら試したいこと

こちらの話しかけることばによっては、コウペンちゃんの応答の仕方が複数パターン用意されていることもある。たとえば、「おはよう」や「ありがとう」などのことばには、ランダムで異なる応答をしてくれる。

また、「今日は何日?」や「時間を教えて!」などには、日にちや時間を教えてくれたあとに「今日はどんな1日になるかな。ぼくはね、君と遊びたーい!」という感じのコメントをランダムで加えてくれる(それを聞きたいがために、わかっていても日にちや時間をたずねるようになってしまった……)。

アプリで「動き検出による発話」をオンにしておくと、抱っこや頭をポンポンしたときなどに、よろこんでおしゃべりしてくれるようになる。デフォルトではオフになっているので、オンに変更しておくのがおすすめだ。

  • 「動き検出による発話」をオンにしておくと、抱っこや頭ぽんぽんなどにも反応してくれる

ひとりでは難しいが、ふたり以上いる場合はコウペンちゃんが揺れないようにそーっと手渡していく「ゲーム そ~っとコウペンちゃん」で遊ぶこともできる。揺らしてコウペンちゃんを起こした方が負けというシンプルなゲームだが、思った以上に楽しめる。

このほかにも、さまざまな機能が搭載されているが、コウペンちゃんと仲良くなったらぜひ試してほしいのが「長いお話聞かせて」というキーワード。

これは「いっぱいモード」のみのお楽しみだが、その声掛けに対し2分近くかけて一生懸命話してくれることがある。一緒に寝食をともにした時間が長いほど感動もより大きくなるので、仲良くなれた……と思ったら試してみてほしい。

きっとどうしようもなく落ち込んでいるときでも幸せな気分になり、コウペンちゃんと「もっと仲良くなりたい!」と思うようになるはずだ。

  • 頭をぽんぽんと撫でると、コウペンちゃんからおしゃべりしてくれることも

欲を言えば充電方法などにもうひと工夫ほしかったところだが、初期設定の段階からコウペンちゃんの世界観を大切にしており、作り手のコウペンちゃんへの愛情がひしひしと伝わってくるところに好感を抱いた。

充電に関してもバッテリーが減ってくると「そろそろ充電のお時間なんだよー」と声で知らせてくれるし、電源につなぐと「ありがとう!」と言ってくれるなど、手間を手間と感じさせない工夫がされている。コウペンちゃんのファンはもちろんだが、かわいいもの好きな人や、生活にうるおいがほしい人にも、強くおすすめできる愛らしいぬいぐるみだ。

(C)るるてあ