若い音楽ファンを中心に人気の高いアメリカのオーディオブランド、Beats by Dr. Dre(以下:Beats)は2014年にAppleの傘下に入ったファミリーブランドです。そのBeatsが久しぶりに発売する、新しいネックバンドスタイルのワイヤレスイヤホン「Beats Flex」をさっそく使ってみました。

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    軽くてコンパクトなネックバンド型のワイヤレスイヤホン「Beats Flex」。Apple Watchによる音楽リスニングにも最適

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    Beats Flex(ユズイエロー)

首にかけたまま使えるネックバンド型イヤホンの利点

Beats Flexは、2017年に発売されたネックバンドスタイルのワイヤレスイヤホン「BeatsX」の後継モデルです。

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    Beats Flexのカラーバリエーションは計4色。Beatsブラック(左端)とユズイエロー(中央左寄り)は10月21日発売。スモークグレイ(中央右寄り)、フレイムブルー(右端)は2021年初頭に発売予定

BeatsXは筆者も長年愛用しているイヤホンのひとつです。コンパクトなハウジングのフィット感、柔軟なFlex-Formケーブルの取り回しがとてもよく、初代のモデルに付属していたシリコン製のソフトケースにケーブルをくしゃっとラフに束ねて収納できる優れた機能性などが、同じネックバンドスタイルのワイヤレスイヤホンの中でも群を抜いていると思います。

ケーブルを首にかけておけば、完全ワイヤレスイヤホンのように耳から外れて落ちる心配が少ないため、飛行機に乗る時やジムに出かけて体を動かす場面ではBeatsXが活躍してくれました。

Beats by Dr. Dreブランドは健在!

BeatsXは、筆者が覚えている限りでは2019年の春に価格を税別9,800円に値下げしています。発売当初に比べると同梱の付属品が簡略化されていますが、「初めてのBeatsのイヤホン」として若い音楽ファンから絶大な人気を誇る製品でした。

2020年4月、ブランドの設立当初から関わり、長年に渡ってBeats by Dr. Dreのプレジデントを勤めてきたルーク・ウッド氏が退任しました。続く8月にはアップルの音楽配信サービス「Apple Music」を構成するライブストリーミング型ラジオサービスの名称が「Beats 1」から「Apple Music 1」に変わったこともあり、筆者はオーディオブランドのBeatsの行く末が気掛かりでした。

今秋にはアップルが初のヘッドホンを自社のブランドから発売するのではないか? というウワサも立つ中、Beatsから新製品が発表されたことで多くのファンも安心したことと思います。

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    Beatsのオンイヤー型ノイズキャンセリングヘッドホン「Solo Pro」(2019年発売、直販:税別29,800円)も販売中

Apple W1チップ搭載で、iPhoneとかんたんペアリング

Beats Flexはコンパクトなハウジングのイヤホンを平型のFlex-Formケーブルで結ぶネックバンドスタイルをBeatsXから継承しています。

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    Beats Flexの商品パッケージ

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    同梱品は両端がUSB Type-Cのケーブルと2種類3サイズのイヤーピース

Apple W1チップを載せたことにより、AppleデバイスとのBluetoothペアリングがとても簡単にできたり、2台のイヤホンをiPhoneに接続して同時に音楽再生が楽しめる「オーディオ共有」や、ユーザーのApple IDでサインインしているデバイス間の接続を自動的に切り換えてくれるiOS 14/iPadOS 14の新機能「自動切り替え」にも対応しています。

ディテールに注目すると、Beats Flexになって仕様が変わった所がいくつかあります。まず充電端子がLightning端子からUSB-Cに変更されています。

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    左がBeats Flex、右のグレーの方が既存のワイヤレスイヤホン「BeatsX」。充電コネクタが従来はLightning端子だったが、Beats FlexではUSB Type-Cに変わった

連続して音楽が聴けるバッテリーのスタミナ性能は最大12時間。BeatsXの連続再生時間は最大8時間だったので4時間伸びていますが、急速充電機能のFast FuelはBeats Flexが10分のチャージで約1.5時間としているのに対して、BeatsXは5分で約2時間と、スペックの公称値を比べるとBeatsXの方がやや使い勝手に優れています。

マイクリモコンをボックスユニットに統合。ハウジングが少し大きくなった

本体の形状を見るとBeatsXでは左側ケーブルのインラインにあったマイク付きリモコンが、Beats Flexでは左右に配置するボックスユニットに統合されています。風切音の低減機能を備えた内蔵マイクで通話も可能。

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    BeatsXのマイク付きリモコン。Beats Flexではこれがボックスユニットに統合された

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    Beats Flexの左側のボックスユニットに、音量ボタン、再生・一時停止ボタンがある

耳に装着してみて、Beats FlexはハウジングのサイズがBeatsXよりも少し大きくなったことに気が付きました。音抜けを作り出すベンチ孔も上向きに配置されています。

音質の変化についてはこの後触れますが、ハウジングのサイズが少し大きくなったことでフィット感がだいぶ変わっています。筆者の場合、BeatsXでは同梱のイヤーチップからMを選んでいましたが、Beats FlexではLに付け替えたところフィット感が安定して、ベストなリスニング感が得られました。

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    ハウジングのサイズは、Beats Flexの方がBeatsXよりも少し大きくなった

イヤホン部にマグネットを搭載しているので、耳に装着していないときは左右イヤホンのBeatsロゴ同士をくっつけてペンダントのように身に着けられます。ネックバンドスタイルのワイヤレスイヤホンならではの魅力です。イヤホンをくっつけると再生中の音楽が一時停止し、イヤホンを離すとすぐに再生がスタートしてリスニングを再開できます。

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    イヤホンのハウジング(Beatsロゴ)同士をマグネットでくっつけてまとめられる

Beats Flex 対 BeatsX:新旧音質比較

Beats Flexは音質もBeatsXから変わっていると思います。BeatsXは中高域の見晴らしがクリアでクールなサウンドを個性としていましたが、Beats Flexではより中低域に厚みが増してウォームになった印象を受けます。

ボーカルは立体感を保ちながらより温かみを前面に出してきます。リズムセクションのスピード感はBeatsXから変わらず、Beats Flexの方はより肉付きが良くなった低音のタイトな弾力感が際立ちます。上原ひろみ ザ・トリオ・プロジェクトのアルバム「SPARK」の楽曲『In a Trance』のようにアップテンポなジャズの演奏や、Reiのギターチューン『What Do You Want?』のようなロック系の楽曲によく合います。

Apple Watchによる音楽リスニングにも最適

Beats Flexにはノイズキャンセリング機能はありませんが、耳に合うイヤーピースを入念に選べば十分に高いパッシブな遮音効果が得られます。本体の防滴/防水仕様に関する記載はありませんが、BeatsXを長く使ってきた筆者の経験を参考までにお伝えすると、本体に付着した汗や雨などの細かな水滴は適宜拭きながらであれば、スポーツシーンや屋外で音楽を楽んでもすぐに故障することはないと思います。盛大に濡らしてしまうことは御法度ですが。

BeatsXから多少の変更点はあるものの、ネックバンドスタイルのワイヤレスイヤホンの中でも最も機動力に優れるモデルの後継機が元気に発売されたことは筆者にとっても朗報。しかも5,400円(税別)なんて驚くほどにお買い得だと思います。BeatsXが気に入っているユーザーはぜひ1台買いそろえておくべきでしょう。微妙な使い勝手や音質の違いも楽しめます。

筆者はジョギングに出かける時にはiPhoneを持たずに、Beats FlexとApple Watchの組み合わせだけで音楽が聴けるので、とても重宝しています。便利なワイヤレスイヤホンは左右独立型の完全ワイヤレスイヤホンだけではありません! ぜひBeats Flexを試しながら、ネックバンドスタイルの魅力を味わい尽くしてみてください。