iPhone 12発表会を読み解く - 「5Gスマホの買い時」を正当化、見えてきたAirTags

Appleが10月13日（米国時間）に「Hi, Speed」イベントを開催する直前に、The VergeのDieter Bohn氏の「5Gだけでは今年のiPhone購入を正当化するのに十分ではない」というコラムが米国で話題になった。

かいつまむと、昨年から今年のスマートフォン新製品では5Gに注目が集まっているが、米国でまともに使える5Gサービスは1つもない。3大キャリアの現状は、AT&T 5Gは論外、T-Mobileは比較的アクセスできるものの、スピードが良質な4Gネットワークと変わらず新しい体験とは言いがたい。Verizonは「ミリ波」のサービスで速い。だが、限られた都市の限られた場所でしか使えない。

「買い換えを計画していなくても買い換えるだけの価値のある大きなアップグレード・サイクルはいくつかあった。しかし、今年5Gへアップグレードするのは、買い換えの時期ならともかく、そうした類いのアップグレードではない」（Bohn氏）。

米国の5Gサービスは拡大の途上、Verizonの「5G Ultra Wideband」は今年1月時点で米国の31都市、年内に60都市以上に拡大する計画

そうして迎えた10月13日、AppleのTim Cook氏（CEO）は「iPhoneにとって新時代の幕開けです」と宣言した。新時代というのは、もちろん5G時代である。そんなに高らかに宣言してしまって大丈夫なのだろうか?

iPhone 12ファミリー全てのモデルを5G対応にし、5Gへの完全移行を示した

5Gがすぐに革命的な体験を提供できないことは、Appleも分かっているはずだ。iPhone 12シリーズの全機種を5G対応にした一方で、同社はデザインを刷新し、他社に先駆けて5nmプロセス製造のプロセッサを搭載、新機種「iPhone 12 mini」を追加してラインナップを広げた。今年Appleは5G時代のiPhoneの始まりに、3〜5年規模の新世代のサイクルの始まりを重ねた。iPhone 12シリーズは、新時代のiPhoneであり、新世代のiPhoneでもある。その価値は大きい。

消費者は際だった違いが分からなければ、高価なスマートフォンの購入に二の足を踏む。5Gサービスの現状は、5Gで「スーパーサイクル到来」と盛り上がる期待に冷や水を浴びせかねない。だが、iPhone 12シリーズはもう1つのアップグレードサイクルの始まりを通じて、新しいiPhoneの体験を提供できる。そうして5G対応のiPhoneを持つユーザーを増やしているうちに、いずれ5Gネットワークが真価を発揮し始める。「スマホで失望させない」ことで「5Gスマホの買い時」を引き寄せている。