NVIDIAは10月5日から9日までの期間、オンライン上で開発者向けのカンファレンス「GTC 2020」を開催中。既報の通り、今回は主要な製品としてワークステーション向けGPU製品「NVIDIA RTX A6000」、サーバ/DC向けGPU「NVIDIA A40」、開発者向けシングルボードコンピューター「Jetson Nano」などが発表されている。本稿ではさらに、GTC 2020で紹介された注目すべき発表をいくつか取り上げておきたい。

  • 仮想空間で自動運転AIをトレーニング、GTC 2020でNVIDIAが見せた未来

    仮想空間でトレーニングする自動運転AIのデモ

GTC 2020の名前はGPU Technology Conferenceの頭文字から取ったもの。基調講演を行ったNVIDIA CEOのジェンスン・ファン氏はGPU技術がもたらす「AIの時代」到来を強調し、新しい製品・技術がどのようにこの時代を加速していくかについて、新薬の発見やロボティクス分野における革新、仮想空間でのAIトレーニングなど、具体的には以下のようなサービス・ソリューションを紹介した。

  • NVIDIA Omniverse
    NVIDIA GPUによる高度なグラフィックス処理能力で、パストレーシングとマテリアルシミュレーションを備えた仮想空間「メタバース」を構成するソリューション。
  • NVIDIA Clara Discovery
    新薬発見のためのツール群。病気の原因となるタンパク質の検索や、低音電子顕微鏡で取得したイメージの画像処理の他、10の60乗も存在するという潜在的化合物からの新薬候補スクリーニング、分子動力学、出版物や医療記録を精査し直す自然言語処理を含む。
  • Cambridge-1
    NVIDIAがイギリスに設置した、ヘルスケア向けのコンピューティングインフラストラクチャー。400PFlopsの処理能力を誇り、AstraZeneca、GSK、キングス・カレッジ、NHS、Oxford Nanoporeが最初のパートナーとして参画する。
  • NVIDIA DGX SuperPOD
    NVIDIAが提供するDGXシステムを集積した既製のAIスーパーコンピューター。20台から140台までのDGXシステムで構成できる。
  • NVIDIA NGC(NVIDIA GPU CLOUD)
    クラウド環境におけるNVIDIA GPUを利用したソリューション群。NVIDIAは今年だけで166エクサOPSを超える推論性能をCSP(Cloud Solution Provider)に導入しており、今後AWS、Azure、GCPで利用できるようになる。
  • NVIDIA Jarvis
    ニューラル対話型AIアプリケーション。CPUで実行するよりもはるかに人間に近い発声を行える他、対話型AIのレイテンシを半分に、コストは3分の1に抑えることが可能。システムは高いスケーラビリティを備え、自由に拡張できる。NVIDIA DGX SuperPODのように大規模な環境でしかトレーニングできない。
  • NVIDIA Maxine
    クラウドネイティブなストリーミングAIプラットフォーム。ノイズの消去や解像度の向上、光量調節、背景の変更などさまざまな機能を備える。また顔の表情など必要なデータだけを送受信して映像データを削減できる機能や、字幕の生成やリアルタイムでの言語翻訳も機能も搭載する。
  • NVIDIA Merlin
    広告配信システムをAIで最適化する高速レコメンダーシステム。収集した情報からより適した最新ニュース、新しい動画、新製品などの広告を配信するためのレコメンドをAIで実現。データの読み込みから、トレーニングや推論までの全てを行える。
  • NVIDIA EGX AI PLATFORM
    AIコンピューターシステムソフトウェア、AIフレームワーク、フリート管理クラウドサービスを含む、エッジAIプラットフォーム。BlueField-2とAmpere GPUを搭載するハードウェアとサービスを含み、Linux管理者無しでプロビジョニング可能。製造、医療、小売、物流、輸送に関わる世界中の企業が使用でき、産業向けAIサービス導入のためのAIプラットフォームとして提供される。
  • NVIDIA Isaac sim
    NVIDIA Omniverseによる仮想空間を生成し、その空間内でロボットを設計して学習させる現実を模したシミュレーター。GTCではメルセデス・ベンツの自動運転機能のトレーニングを行うデモが披露された。
  • NVIDIA Omniverse。タンパク質と化学物質の振る舞いをシミュレートできるほどの高忠実度(High Fidelity)を備える

  • Cambridge-1。ケンブリッジはフランシス クリックとジェームズ ワトソンがDNAを発見した場所で、
    イギリスのヘルスケア産業の中心地

  • NVIDIA Jarvis。青いしずくのようなビジュアルを採用する対話型AIインタフェース

  • NVIDIA Maxine。ビデオ会議システムに導入することでデータ量を減らせる他、アバターの口パクもできる

  • NVIDIA Isaac sim。NVIDIA Omniverseで生成された空間内でAIをトレーニングできる

  • 車も3DCGで、視界に広がる風景も全てOmniverseによる仮想空間

このように多数の新しいサービスやSDK、企業向けソリューションが発表された。その多くは必ずしも直接ユーザーの手に触れるものではなく、まだオープンベータ仕様でもあるが、これから「AIの時代」が到来し、例えばWordの文法校正機能がMicrosoft AzureのNGC(NVIDIA GPU Cloud)で演算されたり、ふと開いたWebページの広告レコメンデーションがいつのまにかNVIDIA Merlinによって生成されていたり、インターネット上で購入した商品の物流システムがNVIDIA EGX AI Platform上で稼働していたりするなど、近い将来、気が付けば身近な存在になっている可能性があるものばかりなのだ。