パナソニックのロボット掃除機「RULO(ルーロ)」シリーズは、独特の三角形状が特徴。2020年4月に発売されたフラッグシップモデル「MC-RSF1000」は、センサーを従来のカメラ式からレーザーSLAMに変更し、部屋空間をよりすばやく正確に認識できるようになりました。脚が持ち上がる機構など、多くの先進的機能も取り入れています。
そのため、高機能フラッグシップモデルはなかなか高額。価格はオープンですが、2020年10月上旬時点の実売価格は約150,000円(税別)で、購入には勇気が必要です。そんな状況のなか、パナソニックはコストパフォーマンスに優れた新モデルの「MC-RSF700」と「MC-RSF600」を発表。10月30日に発売します。いずれもオープン価格で、推定市場価格(税別)は市場推定価格はMC-RSF700が93,000円前後、MC-RSF600が70,000円前後。
SLAMによる正確な障害物検知で「掃除前の片づけ」は必要なし?
今回のMC-RSF700とMC-RSF600によって、フラッグシップモデルのMC-RSF1000を含め、レーザーSLAM対応が3モデルになりました。パナソニックのレーザーSLAMは、レーザー照射部を1秒間に10回転させ、最大8mの範囲を360°全方位で認識。学習もする機能です。
これまでのルーロはカメラで部屋を撮影し、部屋の画像の差分から「自分がいる位置」を計算していましたが、レーザー式になったことで障害物までの距離をすばやく正確に認識できるようになりました。
障害物までの距離を正確に把握できると何がよいかというと、床に落ちている物にぶつからなくなったこと。一般的なロボット掃除機は、掃除中に床に置いた物を倒したり引きずったりすることがありますが、レーザーSLAM搭載のルーロはこの問題がほとんどありません。床に少々モノが散らばっていても、気にすることなくルーロを動かせるとのこと。「ロボット掃除機を動かす前に部屋の片づけをするのが面倒」というユーザーにうれしい機能です。
すでに発売されているMC-RSF1000と、新モデルとなるMC-RSF700とMC-RSF600の違いは、各種の便利機能の有無と、搭載センサーの種類、最大稼働面積などです。
もっとも多機能なのは、もちろん既発売のMC-RSF1000。他社製品にはない機能としては、本体を下部のギアで持ち上げて最大2.5cmまでの段差を乗り越える「アクティブリフト」と、目の前にいる人に追従して汚れた場所をスポット掃除する「otomo」機能があります。MC-RSF700はアクティブリフトがなく、otomo機能のみ搭載。MC-RSF600はアクティブリフトとotomo機能を搭載しません。
センサーも減りました。MC-RSF1000は29個のセンサーを搭載していましたが、新製品はアクティブリフトに利用していた段差検知用のフロント3Dセンサーなどが省かれています。MC-RSF700は前方の障害物を検知するため、レーザーのほかに赤外線センサーや超音波センサーを備えていますが、MC-RSF600は超音波センサーはなくレーザーと赤外線のみで障害物を認識します。
最大稼働面積は、MC-RSF1000が約130畳(ソフトウェアアップデート後)なのに対し、MC-RSF700は約120畳、MC-RSF600が約50畳です。
リアルタイムマップで「いま何してる?」がわかる
新製品の登場とともに、スマートフォン連携用の専用アプリも変わります。最大の変更点は、リアルタイムマップに対応すること。ルーロが認識した間取りや走行ルートなどを、アプリでリアルタイムにチェックできるようになります。
リアルタイムマップのメリットは、ルーロが認識した場所、通った場所、掃除できなかった場所が一目でわかること。たとえば、家具がジャマで掃除できなかった場所があれば、家具を少しずらして次の掃除に備えることができるわけです。
■新製品に発売にあわせてフラッグシップモデルもさらに賢く
MC-RSF600とMC-RSF700の発売に合わせて、フラッグシップのMC-RSF1000も、上記のリアルタイムマップが利用できるようになりました。MC-RSF1000の本体ソフトウェアもアップデートされ、走行アルゴリズムがより賢くなります。
今までのMC-RSF1000は、レーザーで障害物の大まかな位置を認識し、障害物に近づいたら赤外線センサーだけで障害物との距離を認識していました。アップデート後は障害物に近づいたあともレーザー検知を続け、赤外線とレーザーを併用することで、より正確に障害物の位置や形を判断します。
走行経路の判断も賢くなりました。たとえば、これまではイスの足などの障害物があると、首振りや前進、後退を繰り返しながら障害物の周囲ギリギリまで掃除をしていました。新しい制御では、障害物を一周ぐるっとまわってサイドブラシでゴミを掻き出し、これまでよりも短い時間でしっかり掃除します。
このほかにも、従来は約4×4mのブロック単位でエリア分割していたのが、約6×6m単位に拡大。掃除済みのエリアを避けて掃除するようになるなど、さまざまな点で賢さがアップ。従来は約120畳だった最大稼働面積は、約130畳まで増えました。
上位機がソフトウェアで進化するのはトレンドになるか?
今回の発表で、ルーロシリーズはレーザーSLAM対応モデルが計3モデルになりました。アクティブリフトやotomo機能など、特殊な機能はいらないけれど、障害物を避けながらすばやく部屋全体を掃除する賢い走行性能は利用したい……という人には、とてもうれしいモデルです。
個人的に注目したいのは、既発売のフラッグシップモデル「MC-RSF1000」がアップデートによってさらに賢くなること。2020年は、日立の最上位オーブンレンジがハードウェアのモデルチェンジを行わず、代わりにソフトウェアのアップデートで機能追加を発表しました。今後、IoT家電が増えるとともに、こういったソフトウェアによる家電のパワーアップが当たり前になっていくのかもしれません。