東北大学は9月28日、同大学の大学院工学研究科航空宇宙工学専攻・宇宙ロボット研究室(SRL:Space Robotics Lab)と英Asteroid Mining Corporation(AMC)との間で、将来の小惑星資源探査のために宇宙探査ロボットに関する共同研究に向けた覚書に署名したと発表した。

宇宙開発が新たな段階に入りつつある。火星有人飛行も見据えて、月面の資源を活用しようと、日本も含め、米中露の大国やインドなどの宇宙開発新興国も月を目指している。そうした中、2020年5月にはNASAが、宇宙資源開拓に関する新たな枠組みとして「アルテミス協定」を提案し、今後、資源開拓の観点から月面開発と並んで小惑星探査の需要も高まっていくことが期待されている。

宇宙科学および探査ミッションのためのロボットシステムの研究開発を長年にわたって取り組んでいるのが、吉田和哉 教授が率いるSRLだ。これまで国内外の幅広いプロジェクトに参加し、さまざまな組織とのパートナーシップを組んでおり、月惑星探査用超小型ロボットの研究開発における世界の中心地の1つとなっている。SRLではさまざまな宇宙ロボットの研究開発が行われているが、月惑星探査超小型ロボットに関しては、その力学と制御、そして微小重力下での探査ロボットの活用に焦点を当てた研究開発が進められている。

一方、AMCは、まさに社名の通りに小惑星資源採掘事業を目的とした、英国の新興企業だ。現在、英国では国を挙げて宇宙ビジネスに力を入れており、宇宙関連の商業活動が活発化している。そうした追い風を受けて2016年3月に設立されたAMCは現在、太陽系で最も経済的に資源採掘を行える地球近傍小惑星の候補を探査するための衛星「Asteroid Prospecting Satellite One」を開発中だ。

今回の共同研究の合意に対し、吉田教授は、「小惑星表面移動のための宇宙ロボティクスの専門知識が、AMCとの実りある国際的なコラボレーションをもたらすことを嬉しく思います。小惑星探査は非常に挑戦的ですが、この革新的なコラボレーションは新しい時代を開くでしょう」とコメント。一方のAMCのCEO兼創設者のミッチ・ハンター・スカリオン氏は、「AMCがSRLと共同作業できることを非常に嬉しく思います。AMC-SRLパートナーシップは、宇宙ロボティクスの主要なグローバルリサーチセンターとして、小惑星の商業的探査に向けた世界的な取り組みをリードします」とコメントした。

両者は、これまでの研究開発の実績をベースとして、ロボット技術を活用した小惑星探査の共同研究を2021年より開始する予定だ。

  • SCAR-E

    SRLにてこれまでに開発された探査ロボットの研究モデル。AMCとSRLの共同研究では、これまでの研究成果をベースとして、新しいプラットフォームである「SCAR-E」(Space Capable Asteroid Robotic Explorer)の開発を中心に進めていくとしている。同プロジェクトでは、新世代の歩行探査ロボットプラットフォームの実現を目指しており、その成果が小惑星探査のグローバルスタンダートなることを期待するとしている (出所:東北大学プレスリリースPDF)