ヤマハは、耳への負担を軽くするリスニングケアなどの独自技術を採用したノイズキャンセリング(NC)対応Bluetoothイヤホン2機種を9月30日より発売する。価格はオープンプライス。店頭価格(税別)は、ネックバンド型の「EP-E70A」が29,800円前後、完全ワイヤレス「TW-E7A」が24,000円前後を見込む。カラーはどちらもブラックとホワイトの2色。
EP-E70Aは9.2mm径ドライバーを搭載し、Bluetooth 5.0に準拠するネックバンド型ワイヤレスイヤホンで、「Empower Lifestyle」シリーズの上位モデルと位置づけられている。完全ワイヤレスへの注目が高まる中、本格的に音を楽しみたいという「ネックバンド型を選ぶユーザー」に向けて訴求する。
ヤマハの独自技術「リスニングケア」をさらに進化させた「リスニングケア(アドバンスド)」を採用。また、耳の形状や装着状態に合わせてリアルタイムに音を自動で最適化する「リスニングオプティマイザー」、NC精度を高めた「アドバンスドANC」などの機能を備え、「EPシリーズ最高の音質で、アーティストの表現を余すところなく伝えきる」としている。コーデックはSBC、AACに加え、一部のスマートフォンで採用が進んでいる最新コーデック「aptX Adaptive」もサポートする。
完全ワイヤレス「TW-E7A」は2019年11月に発表した製品で、クアルコムのBluetoothオーディオSoC「QCC5124」を搭載し、対応スマートフォンと組み合わせることで、左右イヤホンにデータを直接伝送する「TrueWireless Stereo Plus(TWS+)」が利用可能。
イヤホン本体はIPX5相当の防水性能を装備。付属の充電ケースはワイヤレス充電「Qi」(チー)に対応するのも特徴だ。発売時期については当初「2020年2月」と予告されていたが、その後、開発遅延を理由に延期。新たな発売日は9月30日に決定している。
「音・音楽のリアリティー表現」を追求したEP-E70A
Empower Lifestyleシリーズのイヤホンは、ヤマハの独自技術「リスニングケア」で耳への負担を抑える設計になっているが、最新機種の「EP-E70A」ではリスニングケアをさらに進化させた「リスニングケア(アドバンスド)」を備えているのが大きな特徴だ。後述の「リスニングオプティマイザー」を併用することで、最適な音量、最高の音質での音楽再生が可能としている。
人間の耳は小さな音量になるほど低域と高域が聴き取りにくくなり、周囲の騒音などの環境音にも影響される。しかし音量を上げて音楽を楽しもうとすると、耳への負担が大きくなってしまう。これまでの「リスニングケア」は、音量による聞こえ方のバランスの違いを4バンドEQで自動補正することで、再生曲の音量に応じて音のバランスを最適化し、必要以上に音量を上げずに耳への負担を軽くするようにしている。
今回、EP-E70Aが新たに採用した「リスニングケア(アドバンスド)」ではリスニングケアの仕組みをさらに進化させ、音量だけでなく再生しているコンテンツの録音レベルに合わせてリアルタイム(1msecごと)に音量を算出し、音のバランスを調整。本体に搭載されたインマイクで実際に耳に届く背景雑音を取り込んで背景雑音と信号の比率を解析し、コンテンツの音量をインテリジェントに制御し最適化する。
たとえば、背景雑音が多いときにはコンテンツ音量を少し上げて音楽を聴きやすくし、信号/雑音の差分が十分なときには自動でコンテンツ音量を下げるようにはたらく。これにより、「音量を上げることによる耳への負担を抑えながら、つねに最適な音質で音楽を楽しむことができる」としている。なお、この機能は音色や音量に対する処理となるため、設定値は左右とも同じになるという。専用アプリでオフにもできる。
もうひとつの特徴である「リスニングオプティマイザー」は、耳の形状や装着状態に合わせてリアルタイムに音を最適化する技術だ。
耳の形状(耳介・外耳道)の違いやイヤーチップの装着状態などによって、音の聴こえ方は変化する。EP-E70Aは、ハウジング内部に搭載したインマイクを使って実際に耳の中で鳴っている音の伝達特性をつねに測定し、リファレンスとする伝達特性と比較。違いがあるときはリアルタイムで、イヤホンの左右それぞれの音を理想的な周波数特性に自動補正する。これにより、「いつでも誰でもサウンドデザイナーがチューニングした理想的な音で音楽を聴ける」とアピールしている。
具体的には、再生楽曲をテスト信号として測定を行い、元の信号とマイク収音された外耳道内再生信号の差分を取ることで伝達特性を測定。測定された伝達特性を理想伝達特性(イヤホンの音響チューニングを実施したヤマハ・ゴールデンイヤーの伝達特性)に近づけるように特性補正をかけ、音楽が流れている間は常に測定と補正処理を継続する。
伝達特性の左右差を抑えることも目的としているため、左右独立処理で異なるパラメータを適用する。測定用のテストトーンを使わないため、測定精度を上げるために長時間平均処理を行うそうだ。ただし、必要な周波数帯域の信号が欠落していたり、再生音量が小さいときなどSNが確保されない場合は処理を保留するという、。
ヤマハ独自のプロセッシングによる「アドバンスドANC」機能も搭載。フィードバック型とフィードフォワード型のハイブリッドタイプで、左右計4マイクでノイズを取り込む。
通常のNCはノイズ成分だけでなく音楽信号にもキャンセリング処理をかけてしまうが、ヤマハのアドバンスドANCはインマイクで拾った音を音楽信号とノイズ成分に分け、ノイズ成分だけにキャンセリング処理を施すことで音楽信号の劣化を防ぎ、本来の音楽表現を保つ高精度なノイズキャンセリングを実現する。
フィードバックマイクから取り込んだ音には、ノイズと再生楽曲が合成された信号(元の音楽に、外耳道の遅延を含む伝達特性がかかった信号)が含まれている。これをあらかじめ予測して取り除くことでノイズ成分を分離し、逆相化してノイズキャンセル処理をかける仕組みだ。この予測には、ヤマハのPA製品や遠隔会議システムに使われているエコーキャンセル技術が活用されているという。
なお、EP-E70Aの内蔵マイクを活用し、イヤホンを耳につけたまま周囲の音が聞けるアンビエントサウンド機能も備えている。
EP-E70Aのネックバンド部分は、形状や硬さ、重量バランスなどを考慮し、長時間でも快適に使えるように設計。操作ボタンは左右どちらの手でも操作しやすく、ボタンを見ずに操作できるよう配置した。
イヤホン部は密閉型で、9.2mm径のダイナミック型ドライバーを搭載。アドバンスドANCなど、各機能の性能をフルに引き出すための音響設計を行った内部構造をベースに、「アーティストの表現を余すことなく伝えきるTrue Sound」のためのアコースティックチューニングを施して、タイトで厚みのある低域と芯のある中域、明瞭感に優れた高域再生を追求。「楽器・音楽を知るヤマハだからこその高音質」を目指しており、ボーカルや楽器などの細かなニュアンスや質感まで正確に表現し、音楽の躍動感までも感じられるという。
最適に配置されたスピーカーユニットと2つのマイクを包み込むようにデザインし、ティアドロップ形状や音道管、ブッシュの角度にもこだわって装着感を高めた。パーツの色やテクスチャーなども、上質かつ心地よい仕上げを追求したという。
iOS/Androidアプリ「Headphones Controller」から、「リスニングケア(アドバンスド)」や「リスニングオプティマイザー」のオン/オフ、バッテリー残量の確認などができる。音声アシスタントのSiriとGoogleアシスタントの起動にも対応し、音楽を聴くときの基本操作などをハンズフリーで操作できる。ハンズフリー通話にも対応している。
フル充電で約18時間音楽を聴ける。10分の充電で約1.5時間使用できる急速充電にも対応する。再生周波数帯域は20Hz~20kHz。USB Type-C端子はアナログ入力に対応し、付属の3.5mmステレオミニ変換ケーブルを使って有線ヘッドホンとしても使える。重さは62g。XS/S/M/L/XLの5サイズのイヤーピースやキャリングケース、航空機用プラグアダプターなどが付属する。