科学技術振興機構(JST)は2020年9月16日、JST理事長記者説明会を開催し、その冒頭に戦略的創造研究推進事業のCRESTの中で「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)への対応に向けたJSTプランB」という緊急プロジェクトの募集を始めると公表した。

JSTの濱口道成理事長は「COVID-19対応のプランAはワクチン開発や治療薬開発になるが、その実用化の時期がまだ明確に見通せないために、新型コロナウイルスの存在を前提としつつ、制限なく移動でき、自由に人と会える・集える、経済活動ができる社会インフラ基盤の実現を目指すプランBも並行して研究開発し、実用化するプロジェクトを始める」と説明した。

この「プランB」では、「新型コロナウイルスを見つける」「新型コロナウイルスを清める」「新型コロナウイルスから護る」という対策向けのツールを実用することを目指す計画だ。

まず「新型コロナウイルスを見つける」では、高感度なウイルス検出技術の実現などを目指す。具体的には、フォトニック結晶による高感度なウイルス検出技術が現在、研究開発中であり、こうした研究開発シーズを基に実用化を目指す。あるいは、低侵襲高速高感度検出技術の実用化を図る研究開発を進める計画だ。

「新型コロナウイルスを清める」では、現在着目されている深紫外線LEDによる空気や水の殺菌技術の深掘りを進める。また、最近話題を集めた“ダチョウ抗体”によるエアコンディショナー用のフィルターへの応用の実現を図るなどの技術開発を進める。

また、「新型コロナウイルスを不活性化する“スーパー抗体酵素”の実用化を目指す考え方もある」という。

「新型コロナウイルスを護る」では、「“ダチョウ抗体”を用いた高機能マスクやハニカム構造フィルターなどの実用化などが候補に挙がっている」という。

今回、有力な対策向けのツールに名前が挙がる“ダチョウ抗体”とは、京都府立大学発ベンチャー企業のオーストリッチファーマ(京都府相楽郡精華町)が事業化を進めている新規抗体利用を指している。このオーストリッチファーマは、JSTが起業を支援した経緯がある。

この「プランB」は「コロナ対策臨時特別プロジェクト」として戦略的創造研究推進事業のCRESTの中で、募集を近々、始める。

採択件数は10件ほどで、研究開発費として1件当たりに1年間に5000万円(直接経費)として提供される計画だ。

研究期間は令和2年度から令和5年度(2020年度から2023年度)の3年間になる。異分野横断型の研究開発・実用化を目指している。

応募期間は2020年9月下旬から10月下旬までの予定という。

  • コロナ対策臨時特別プロジェクト「プランB」

    コロナ対策臨時特別プロジェクト「プランB」の説明図