GoProは9月16日、アクションカム(アクションカメラ)の新製品「GoPro HERO9 Black」を発表しました。シリーズの最上位モデルで、前面にもカラー液晶を搭載して自撮りしながらライブビューが確認できるようにしたのが特徴です。動画は最大5K画質の高精細動画の撮影に対応したほか、手ブレ補正の効果を大幅に高めつつ、手持ちでも常に水平を維持した動画が撮影できるようにしました。アクティブに動きながらでもなめらかな動画を撮影したい人や、大雨などスマホを使うのをためらう状況でもVlog用の動画を撮影したい人をターゲットに売り込みます。

  • アクションカムの代名詞となったGoProが、装備や手ブレ補正を高めた新製品「HERO9 Black」を発表。派手なアクティビティでの撮影を楽しむ人だけでなく、Vlog撮影に使いたいビデオブロガーもターゲットとする

価格はオープンで、予想実売価格は税別59,000円前後。販売開始は9月17日。

フルHD画質のライブストリーミングやWebカメラ機能も搭載

GoPro HERO9 Blackのおもな特徴は以下の通り。

  • 前面に1.4インチのカラー液晶を搭載、前面からライブビューの確認が可能に
  • 背面のタッチパネル液晶は2.27インチ、HERO8から16%サイズアップ
  • 手ブレの補正効果を高めたHyperSmooth 3.0+水平を維持した動画撮影が可能になるホライゾンレベリング機能(カメラ内での処理に対応)
  • 23.6メガピクセルの新開発イメージセンサーを搭載
  • 超広角撮影に対応するMaxレンズモジュラーをオプションで用意、カメラを360度回転させても水平を維持できる異色の撮影が可能に
  • 動画は5K/30fps、4K/60fps、2.7K/120fps、フルHD/240fpsなどの撮影に対応
  • 1080p画質でのライブストリーミング機能
  • 1080p画質でのWebカメラ機能
  • マイクを改良し、ダイナミックレンジを広げつつ振動など不快な音をカットできるように
  • 1720mAhのバッテリー搭載、HERO8 Blackよりもバッテリー駆動時間を30%アップ
  • パッケージを一新、マウントやアクセサリーも収納できるトラベルケースに入れた状態で販売
  • 一新したHERO9 Blackのパッケージ。透明なプラスチックの梱包をやめ、持ち運びに使えるトラベルケースに入れた状態で販売する

2019年10月に販売を開始した「HERO8 Black」の後継モデル。前面の液晶をGoProシリーズでは初めてカラー液晶とし、ライブビューの表示ができるようにしました。特に、Vlog撮影やライブストリーミングで自撮りをする際は便利に使えそうです。

  • 前面にスクエアタイプの1.4インチカラー液晶を搭載し、ライブビューが前面から確認できるようにした。大きさはミニマムだが、構図はしっかり確認できる。タッチ操作には対応しない

  • 背面液晶は2.27インチで、HERO8から若干サイズアップした。タッチ操作に対応している

動画は、4Kを上回る5K/30fpsの高画質動画の撮影に対応しました。5K動画は、そのまま動画として楽しむほか、決定的瞬間を切り出して写真として保存する「フレームグラブ」機能も搭載します。切り出した動画は14.7メガピクセルの大きさがあるので、クオリティも十分で実用的に使えます。写真を撮るか動画を撮るか迷った際は、とりあえず動画で撮っておけばよい、というわけです。

ハイスピード動画(スローモーション動画)は、フルHDを上回る2.7K/120fpsでの撮影に対応し、フルHD画質ならば240fpsで撮影できます。

ユニークな撮影機能としては、シャッターボタンを押す最大30秒前にさかのぼって動画を記録する「HindSight」機能や、シャッターボタンを押す前後1.5秒(合計3秒間)のショートムービーを記録する「LiveBurst」機能を搭載。シャッターチャンスを逃さない工夫が盛り込まれました。

電子式手ブレ補正機能を「HyperSmooth 3.0」に改良して大きな揺れも補正できるようにしたほか、撮影時にカメラが傾いても動画は水平をキープするホライゾンレベリング機能を搭載しました。ホライゾンレベリング機能はカメラ内で処理され、スマホアプリでの処理を実行する必要はありません。

  • 爆走するラジコンカーにHERO9 Blackを載せて撮影し、手ブレ補正機能「HyperSmooth 3.0」や水平をキープするホライゾンレベリング機能の実力をチェックした

ラジコンカーのボンネットがものすごい揺れまくっているのに対し、動画はなめらかで水平も基本的に保たれており、手ブレ補正機能のすごさがうかがえる。改良されたマイクのおかげか、音も耳障りな印象ではない

HERO9 Blackは、屋内でライブストリーミング用のカメラやWebカメラとして使うのにも向いています。ライブストリーミングは、専用アプリを使えばFacebookで簡単に配信を開始できます。Webカメラも、USBケーブルでパソコンと接続し、カメラとしてHERO9 Blackを選ぶだけ。どちらの用途でも、前面の液晶パネルを使って構図が確認できるので、セッティングがラクにできるのが便利だと感じました。

  • パソコンに接続すれば、1080pのWebカメラとしても利用できる

新しいオプションとして用意されたMaxレンズモジュラーも注目です。標準搭載のレンズと交換して装着する仕組みで、標準よりも広角(約155度)での撮影が可能になります。さらに、手ブレ補正機能は「Max HyperSmooth」が働いて補正能力がさらに高まるうえ、Maxレンズモジュラーの装着時はカメラを360度回転させても水平が保たれるようになります。Maxレンズモジュラーの販売は2020年10月の予定で、価格は未定です。

  • Maxレンズモジュラーを装着したHERO9 Black(右)

  • Maxレンズモジュラーはモジュール自体に厚みがあるうえ、レンズ先端が魚眼レンズのように出っ張っている

昨今のVlogブームを受け、ソニーやパナソニックからVlog撮影向けの高画質デジカメが続々と登場しています。しかし、いずれもカメラメーカーだけに「常に水平を維持する」といった極端な手ブレ補正は採用せず、おとなしめの補正のみにとどまります。それに対し、HERO9は最新のテクノロジーで常識外れの補正を可能にしているのが対照的といえます。どちらがよいとは一概にはいえないものの、HERO9は前面液晶のカラー化でライブビューが確認できるようになったのと、手ブレ補正の効果が飛躍的に高まったことで、歩きながらの自撮りVlogにうってつけの製品になったといえます。スマホカメラを用いた撮影のクオリティに満足できない人を中心に、注目を集めそうな製品だと感じました。