日本民間放送連盟(民放連)は9月2日、「NHK経営計画(2021-2023年度)(案)に対する意見」をNHK経営委員会に提出。NHKが放送メディアを整理・削減しネット活用を拡大する姿勢を打ち出したのに対し、民放連は受信料など多くの課題について具体的な考え方や取り組みが十分示されていないと指摘。抜本的な改革を進めることを求めた。

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    日本民間放送連盟(民放連)のWebサイト

既報の通り、日本放送協会(NHK)が発表した「NHK経営計画(2021-2023年度) (案)」では、衛星波(BS放送)を現在の右旋 3波から2波へ、ラジオも3波から2波へと整理・削減する方針などを発表。受信料については、NHKの前田晃伸会長は「安くなる方がいいに決まっている。サービスを落とさずに受信料をいかにして下げていくか、経営の課題」とコメントしている。ただし、計画案では現行の料額を維持することを明記しており、受信料の支払率8割を維持しながら、衛星契約の割合を引き続き向上させたい考えだ。

これに対し、民放連は「計画案の最大の問題は、受信料水準・体系の見直しの方向性が示されなかった点」と指摘。NHKが今後3年間は受信料水準を見直す考えがないと表明したことに対し、「国民・視聴者の受信料水準・体系に対する不満や不信を解消するものではない」と主張し、「少なくとも『今回の計画期間中に受信料水準・体系の見直しを行う』ことを明記し、一層の構造改革の推進や営業経費の削減をはじめ、その具体化を進めるべき」と強調した。

NHKの現行の受信料水準・体系を巡り、民放連は5月に開催された総務省「公共放送の在り方に関する検討分科会」において、以下の2つの問題を指摘していた。

  • “受動受信問題”
    地上/BS/110度CS 3波共用機とアンテナの普及により、「テレビを買うと衛星波を含めた受信料を支払う義務が生じる」という、いわゆる“受動受信問題”。現在は「衛星込みの受信契約が事実上の標準」であり、NHK受信契約に占める衛星契約の割合は一昨年度に50%を超え、受信料収入が6,000億円台から7,000億円台に拡大した背景には「支払率の向上とともに、衛星受信契約率の向上もある」としている
  • 「現行の受信料水準は、若年層にとっては過重な負担」
    さまざまな動画配信サービスが普及している中、衛星契約を含めた現行の受信料水準は「特に収入の少ない若年層にとっては過重な負担ではないか」としており、受信料を負担に感じた結果、「『テレビは要らない、スマホで十分』となり、結果として民放テレビの視聴機会を奪う可能性がある」と懸念を表明している

そのほかにも、NHKが計画案で「コンテンツを合理的なコストにより最適な媒体(地上波・衛星波・インターネット)で提供する」と記載した点を懸念。過去の2018-2020年度経営計画で掲げられていた方針(「放送を太い幹としつつ、インターネットも活用」)と比べて、記述が「放送とインターネット活用を横並びに位置付けたもの」に変わっており、「放送波というプラットフォームの将来像を示すことなく、なし崩し的にインターネットにその重心を移行していく姿勢を示すもの」と主張している。

既に多様な民間事業者がネットを活用している中で、NHKが業務展開する際は民業を圧迫するリスクがある。民放連は、ネット分野でのNHKの役割について「速やかに自らの考え方を明らかにすべき」「インターネット活用業務実施費用を抑制的に管理する方法について具体的に記載し、実行に移すべき」とした。

保有するメディアの在り方については、計画案の衛星放送・ラジオの保有波の削減方針を踏まえて「各メディアの将来像とそれぞれが果たす役割について具体像を速やかに示し、国民・視聴者および関係事業者に丁寧な説明を尽くす」ことを要求。そのほかの複数の課題についても、具体的な取り組みを示すよう求めた。