PCの光学ドライブがほぼ無くなり、リビングからもオーディオコンポがほとんど消えた今、音楽CDを再生するのはひと苦労。気軽に聴ける方法は……と物色していたところ、乾電池で動いてBluetooth出力できる「enas(イーネーズ) EASY CD PLAYER」を見つけた。これは試してみねば。

  • enas EASY CD PLAYER

    ポータブルCDプレーヤー「enas EASY CD PLAYER」(CDは付属しない)

気軽に使えるポータブルCDプレーヤーを見つけた

かつて新譜・ニューアルバムといえば、なんの疑いもなくCD(ひとつ前の世代はLPレコード?)を連想したものだが、いまやストリーミングの同時配信も珍しくない時代。動画を見たいからCD+Blu-rayの初回限定盤を購入したけれど、CDはさっぱり聴かずにスマホでストリーミングで聴く、という人も多い。というより、若年層限定でいえば、こういった聴き方のほうがメジャーなはず。それはそうだろう、いまやCDプレーヤーのない家庭が多いのだから。

とはいえ、CDプレーヤーがないと困ることも。筆者の書斎にCDを聴く環境はそろっているが、近ごろ音楽に熱心な高2の娘に、配信されていないCDを聴かせつつ蘊蓄(うんちく)をひけらかしたいとき、書斎まで来てもらうのは無理な話。ウザがられる前に娘の部屋まで出向いて再生できなければダメなのだ。

蘊蓄話はさておき、手軽に使えるCDプレーヤーには娘も興味津々。ヘッドホンリスニングがメインの彼女にとって、有線/無線どちらでも聴ける「enas EASY CD PLAYER」は、これまでPCでリッピングするだけの存在だったCDの新しい魅力を発見するデバイスと映るらしい。CDウォークマンを知る世代にとってはそう珍しいものではないが、乾電池駆動も斬新に感じるようだ。

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    単3形乾電池×2本、またはモバイルバッテリーで動作する

CDケース3枚分のコンパクトサイズ、音飛び防止機能も

「enas EASY CD PLAYER」は、とてもコンパクト。サイズは128×145.3×27mm(幅×奥行き×高さ)、CDケースを3枚重ねたときとほぼ同じ大きさといえばわかりやすいだろう。重さも246gとじゅうぶん軽い。アクリルカバーは手動開閉式で、閉めないままでも再生できる。それどころか、再生中でも開閉できてしまうし、ボタンの誤操作を防止するためのHOLDスイッチもないという潔さだ。

単3形電池×2、またはUSB Type-C給電で動作する。電池駆動時の再生時間は約3時間だが、モバイルバッテリーを用意すれば長時間の連続再生もできる。

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    背面には電源用のUSB Type-Cポートと3.5mmステレオミニジャックを備えている

操作はシンプルそのもの。CDを載せてMENUボタンを押せば準備完了、再生/停止ボタンを押せばCDが回転し始め、3.5mmプラグにヘッドホン端子を挿していればヘッドホンから音が出る。ボリューム調整は「+」と「-」、曲戻しと曲送りは「|←←」と「→→|」と説明書は不要なレベルだが、ランダム再生やリピート再生、プログラム再生できないなど、機能がシンプルすぎる傾向はある。

回転するディスクをぼんやり眺めていたところ、曲が再生されているにもかかわらず回転が止まった。40秒ほどすると何事もなかったように再び回転し始め、それでも音は途切れることなく出続けている。そう、等速より若干速くCDを回転させて信号を先読みし、約60秒間バッファしたものを送り出す「音飛び防止機能(ESP、Electronic Shock Protection)」が動作しているのだ。ただし、ESPをオン/オフする機能はないため、CD再生中はつねにある種の間欠運転が続くことになる。

Bluetooth再生時にノイズが……

音声出力はワイヤレス(Bluetooth)と有線(3.5mmステレオミニ)の2系統をサポートするが、同時利用はできない。ステレオミニ端子からプラグを引き抜くと出力は自動的にワイヤレスへ、端子にプラグを差し込めば有線接続へと切り替わる仕組みだ。

Bluetoothペアリングは、表示部に「BT」の文字が点滅しているときに自動接続される。あらかじめBluetoothヘッドホン/スピーカーをペアリング登録状態にしておいてから、enas EASY CD PLAYERのMENUボタンを押すだけでいい。ペアリングが完了すると文字は点滅しなくなるので、ひと目でわかる。次回以降は、MENUボタンを押すだけでペアリング済みのデバイスとの通信が始まるから、手間がかかるのは最初だけだ。

  • enas EASY CD PLAYER

    表示部を見ると、Bluetoothイヤホン/スピーカーとのペアリング状況がわかる

それにしても、Bluetooth接続時のノイズがだいぶ気になる。CDが回転しているかどうかにかかわらず、つねにプルルルルというノイズが聞こえている状態なのだ。enas EASY CD PLAYER側のボリュームを上げれば多少は気にならなくなるが、音量を下げるとはっきり聞こえる。Bluetooth受信側のボリューム調整にあわせてノイズの大きさも変わるため、オーディオ信号の送信時に乗るノイズなのだろう。アップル AirPodsなどのイヤホンのほか、JBL GO2などのスピーカーでも試したが、結果は変わらない。

(編注:メーカーに問い合わせたところ、Bluetooth接続したイヤホン/ヘッドホンやスピーカーの音量を調整したいときは、enas EASY CD PLAYER側のボリュームボタンで行うよう回答があった)

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    Bluetoothスピーカー「JBL GO2」で聴いてみた

なお、有線接続の場合は上記のノイズは発生しないが、代わりにホワイトノイズが聞こえるようになる。ポータブル機ということもあり、内蔵ヘッドホンアンプの出力にそれほど余裕はないようで、インピーダンスが120Ωとやや高めのAKGヘッドホン「K612 PRO」ではボリュームを最大にしても音量が足りなかった。もっとも、16Ωや32Ωといった一般的な水準では、音量不足を感じることはないだろう。

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    AKGのヘッドホン「K612 PRO」でも試聴した

“聴けるインテリア”にもなる、新しい切り口の製品

CDジャケットサイズでBluetooth出力に対応、2系統の電源(乾電池/USB給電)で動作可能という、新しい切り口のポータブルCDプレーヤー。価格は1万円台半ばと、Amazonなどネットで販売されている中国メーカー直販製品と比べれば割高に見えてしまうが、きちんと電波法に基づく技術基準適合証明を取得した製品だ。

上記のノイズのこともあり、enas EASY CD PLAYERをオーディオ機器として見ると厳しい部分はある。とはいえ、カバーはクリアでCDのラベルが見えるうえ、本体の底面にある穴を使えば壁掛けにできるため、Bluetoothスピーカーと組み合わせれば“聴けるインテリア“にもなる。このように気軽に使える点はうれしい。

本当は大量にある筆者の(未リッピングの)CDコレクションを娘に気軽に聴かせる道具として使いたかったが……。娘にウザがられるのを覚悟で、書斎に来てもらおうと思っている。

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