インターネットイニシアティブ(IIJ)は8月20日、個人向けMVNOサービスのIIJmioにて、1GBのデータ通信が月額480円から(以下すべて税別)という低価格な「IIJmioモバイルプラスサービス 従量制プラン」をスタートさせました。在宅時間が増え、外出先におけるモバイル通信の利用が減ったユーザーに向けた、1GB単位で使った分だけ課金される従量制プランとなっています。

  • テレワーク需要に対応する、IIJmioモバイルプラスサービス 従量制プランがスタート

新プラン導入の背景

新型コロナウイルスの影響により、IIJmioの利用動向はどのように変化したのでしょうか。オンライン発表会に登壇したIIJ MVNO事業部長の矢吹重雄氏によれば、ブロードバンドのトラフィックは増加したものの(家庭内のWi-Fi利用が増えたため)、モバイルのトラフィックは減少(外出しなくなったため)。そしてモバイルの通話時間に大きな変化はないとのことでした。

  • 2020年の上半期における消費者の利用動向

これを受けて「いま必要なプランとは何か、IIJmioならどんなプランが提供できるのかを考えて、いち早くリリースしたのが今回の新プランになります」(矢吹氏)とします。

  • IIJ MVNO事業部長の矢吹重雄氏「通信の使われ方が変わってきた」

従量制の新プラン、どこがお得?

続いて、IIJ MVNO事業部の亀井正浩氏がプランの詳細について説明しました。新プランの特徴は「低容量」でありながら、「急な需要にも対応」でき、「通話はかけ放題」というもの。ブロードバンド(IIJmioひかり)とセットにすることで、より経済的に使えることも重要視しました。

  • 【ポイント1】通信容量の追加は200円/1GB

業界最安級で経済的に使えるよう、タイプA専用プラン(auの4G LTE回線)を採用しました。料金設定は、データSIM契約(SMS付)なら月額480円から、音声通話SIM契約なら月額1,180円から。追加容量は1GBあたり200円で、最低1GB~最大20GBまで利用できます。

低容量プランを利用していると「在宅が多くなったので低容量に契約変更したのに、外出が思ったより多くて容量が足りなくなった」といったトラブルも起こり得ますが、本プランは従量制なので、そうした問題も回避できそうです。

  • 【ポイント2】ストッパー機能が良心的

従量制は青天井のため、気がついたら大容量を使っていた……という怖い事態にも陥りがちです。そこで、使いすぎ防止のストッパー機能が用意されました。1GB単位で設定でき、上限値に達すると最大200kbpsの低速通信に切り替わる仕様です。この上限値は、月の途中でも変更が可能。このあたりの対応も柔軟です。

  • 【ポイント3】データ容量のシェアは最大3枚まで、追加SIMの利用料は1枚あたり400円/月

複数のSIMを契約し、スマートフォン、タブレット、ノートパソコンなどで利用する場合は、データ容量のシェアが可能です(SIMは最大3枚まで)。購入したデータ容量を無駄なく利用できるのはうれしいところ。ただし、余ったデータ容量は翌月に繰り越せないので、ここは注意が必要です。

  • ブロードバンドとのセット割も用意

IIJmioひかりを契約している場合は、毎月600円オフの「mio割」が利用できます。このほか、データの「高速通信 ON / OFF」機能もあり、任意で低速に設定することで、毎月の「ギガ」(使用可能なデータ容量)を減らさずに運用できます。

  • ユースケース

  • 従量制プランのまとめ

なぜau回線だけ?

オンライン発表会の最後に、メディアからの質問に矢吹氏と亀井氏が回答しました。

au回線にしぼった理由について、亀井氏は「サービスとシステム設計をシンプルにするため、1キャリアのみの対応となりました。お客さまからは、ドコモ回線にこだわっている、au回線にこだわっている、という声が思いのほか少ない。接続料の観点(au回線の方が安い)もありますが、データSIMにSMSが付与しているau回線を採用することで、お客さまの迷いが少なくなることも狙いです」と説明。

IIJでは、大容量ではなく低容量のニーズに応えるべきと考えているのか、といった質問には「業界や他社さんの動向を意識して設計したというよりは、低容量のニーズが多いこと、低容量タイプのMVNOが減ってきていることを考えた結果です」としました。

音声使い放題プランの導入は?

「追加容量は200円/1GBと安い印象だが理由は」と聞かれると、亀井氏は「3GB、6GB、12GBのプランとは違い、余った容量の繰り越し機能がありません。そこで追加容量に関しては、使いやすい値段を考えました。従量制ならではとして『階段』を低く設定しています」

他社は音声使い放題プランを導入したが、との質問に矢吹氏は「各キャリアさんと条件の交渉をしているところです。日本通信さんが音声通話定額を発表されて以降、さまざまなお問い合わせをいただいていますが、まだ判断材料が整っていません。競合他社に対抗しうる積極的なプランをつくっていきたいと考えています」と回答しました。

毎月、どのくらい使われるのか見込みが立てづらいため、通信回線を増強するタイミングが難しいのでは、といった質問に亀井氏は「コンシューマと法人を合わせて、IIJではかなりの回線容量を保有しています。その大きなグロスの中で、日々のユーザー動向、お申し込み状況を見ながら増強を細かく行っております」と回答。

楽天モバイルの影響は?

第1四半期でIIJmioの回線数が純減した理由について聞かれると、矢吹氏は「楽天さんの影響について、皆さん興味がおありと思います。たしかに無料で展開されているので多少の影響があるのは事実ですが、第1四半期に減少した理由は、楽天さんや最近元気なUQ mobileさんの影響というよりは、コロナ禍による販売の不調が大きな要因と考えています」と回答。

また、収益性について聞かれると亀井氏は「IIJmioでは、本プランでARPUを維持できれば、それに越したことはありません。市場の動向、お客さまの声を生かしながらプランをつくりました。収益性はさまざまな要素で決まり、もちろん収益性が上がればよいですが、本プランでIIJの利用が増えればよいと思っています」と回答しました。

  • 2021年3月期 第1四半期の連結業績。IIJmioの回線数はわずかに純減へ