スタートアップ起業の聖地・シリコンバレーで2015年に誕生し、現在アメリカ国内に23店舗、ドバイ(アラブ首長国連邦)に1店舗を展開している体験型ストア「b8ta」が、ついに日本に初上陸。2020年8月1日に新宿マルイ店と有楽町店がオープンした。

今回は、最新ガジェットからコスメまで、幅広いアイテムを100点以上取り扱う有楽町店「b8ta Tokyo - Yurakucho」を訪れて、オススメを紹介してもらった。

驚きの機能を持つ日本初上陸プロダクトがズラリ

有楽町駅と日比谷駅と銀座駅のちょうど真ん中あたり、晴海通りに面する一等地にオープンした「b8ta Tokyo - Yurakucho」。新型コロナ感染症拡大防止の対策として、入店者制限を実施したうえで、初日から来客1,000人超えの大盛況だ。

店内には、ARゴーグルやスマートウォッチといった最新ガジェットから、コーヒーメーカー、浄水器といったライフスタイル関連製品まで、幅広いジャンルのアイテムが並ぶ。入口付近には自転車もディスプレイされていた。

  • b8ta Tokyo

    b8ta Tokyo – Yurakuchoの店頭。取材に訪れたのは閉店30分前の19時ごろだったが、店内はまだ賑わっていた

今回、店内を案内してくれたのは、b8ta Tokyo – Yurakucho General Manager(ゼネラルマネージャー)の堀切洋介氏。注目の日本初上陸プロダクトを紹介してもらった。

まずは、水泳用ARスマートゴーグル。スマートグラスは聞いたことがあるが、水泳の世界にまでハイテク化の波が押し寄せていたとは……。驚きだ。

「経験者なら分かると思うのですが、水泳って陸上競技と違って運動しながら時計を見たり、泳いだ距離を確認したりするのが難しいんですよね。そんな悩みを解決してくれるのがこのスマートゴーグル。水泳競技者によって開発されたものなので、タイムや泳距離、心拍数を測って右レンズに表示し、泳ぎながら運動量や練習の成果をチェックできるという実用的な仕様になっています」(堀切氏)

ちなみに、b8ta Tokyoは“売ることが目的ではない”お店だ。ストアの「スペース」を企業に提供し、来店客にはそのアイテムによる「体験」を提供するというサービスを展開する。もちろん、気に入ったプロダクトは購入できるが、それがメインではない。にもかかわらず、オープン初日ですでにスマートゴーグルを購入した人がいたという。体験の力、恐るべし。

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    FORMの「Smart Swim Goggles」。すでに水泳やトライアスロンの競技者に支持されている

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    タイムと泳いだ距離が表示される

次の初上陸プロダクトは“食べた物のカロリーを測れる”スマートウォッチ「GoBe3」だ。

「これまでも運動量や心拍数から消費カロリーを計測できるスマートウォッチはありましたが、付けているだけで勝手に摂取カロリーを測定してくれるものは初めて。人間が食物を摂取したときの生理反応(体液の移動)から摂取カロリーを計算するので、面倒な入力の手間がかかりません。もちろん、睡眠の管理、歩数と距離の計測といった、これまでのスマートウォッチ機能も備えています」(堀切氏)

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    Healbe Japanの「GoBe3」は、体内の水分レベルや、運動以外による消費カロリーも測定できる

「テクノロジー」×「○○○」で広がる世界

b8taでは、店頭で展示する商品をあえてキュレーションしていないと堀切氏は語る。それは「こだわりがない」わけではなく、自分たちを定義しすぎると新しい発見がなくなってしまうからだという。

「最新ガジェットのお店です、と言ってしまうとお客さまの層も偏ってしまいます。でも、ファッションアイテムや文房具なんかもある、となるとさまざまな方が来てくださる。そういう場を作ることで、生まれるシナジーってあると思うんですよね」(堀切氏)

では、ガジェット以外ではどんなプロダクトがあるのだろうか。テクノロジーとその他の要素との融合がおもしろい、こんなアイテムたちに出会った。

【テクノロジー×アパレル】

FABRIC TOKYOの「STAMP」は、試着室のような3Dスキャナーで全身をスキャンし、その人だけにフィットしたジーンズが作れるというサービス。b8ta Tokyo店舗スタッフのユニフォームの「オーダーメイドジーンズ」にも使われている。

「オーダーメイドというと時間もお金もかかるイメージですが、STAMPなら15,000円で自分にピッタリのジーンズが作れます。また、LINEで予約手続きをして、無人のボックスでスキャン――という、完全に無人で完結する顧客体験もおもしろさのひとつですね。今はジーンズだけですが、この先Tシャツやスラックス、スーツなんかのオーダーメイドもできるようになるかもしれません」(堀切氏)

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    「SCAN BOX」

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    中に入ったら、たったの3秒ほどでスキャンが完了する

  • b8ta Tokyo

    BOXの角に4カ所のスキャナーが設置されている

  • b8ta Tokyo

    b8taスタッフユニフォームのジーンズは尻ポケット部分に「B」のマークが入った特製品

【テクノロジー×かわいい】

b8taに並ぶのは便利で洗練されたものばかり、とは限らない。思わず抱きしめたくなってしまう、かわいい“アイドル”たちもいるのだ。

まずは「かわいいロボット」の代表格である「LOVOT(らぼっと)」。b8ta特製Tシャツを着たLOVOTが週末店長を務め、来店客に愛嬌を振りまいていた。初めて見る“生LOVOT”は想像していたよりもかわいく、「これが体験の力か」とまたも唸ってしまう。

「この子は人懐っこい性格なので、店長として頑張ってくれています。かわいさもさることながら、1体ごとに性格が違うというからすごいですよね」(堀切氏)

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    GROOVE Xの「LOVOT」。そんなつぶらな瞳で見つめられたらおうちに連れて帰りたくなっちゃう……

撫でるとしっぽで反応してくれるセラピーロボット「Qoobo(クーボ)」もかなりの癒やし系。通常サイズのQooboの上に、プチサイズが乗っかった姿があざといほどにかわいい……! 猫を飼いたいけれど、マンションがペット不可、猫アレルギー持ちといった人にも、“ねこちゃん成分”を提供してくれる天の恵みと言ってもいいのではないだろうか。

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    ユカイ工学のQooboは、そっと撫でるとゆっくり、普通に撫でると元気にしっぽをふってくれる

Qooboをわしゃわしゃした

そして、「こっちの子もかわいいですよ」と堀切氏が教えてくれたのが、Qooboの隣に展示されていた「MOFLIN(モフリン)」。その名の通り、モフモフのペットロボットだ。撫でるとモゾモゾとうごめいて「きゅー」とかわいい鳴き声をあげる。しかも、触ると柔らかくて温かい。

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    Vanguard IndustriesのMOFLIN。まだ一般発売されていないそう。手乗りサイズが愛くるしい

MOFLINをモフモフした

「エクスペリエンスルーム」でブランドの世界観を体験

また、アイテムの展示だけでなく、b8ta Tokyoの店舗には半個室の空間「エクスペリエンスルーム」が用意されている。ここでは空間全体を使って、ブランドの世界観が表現されており、b8ta Tokyo – Yurakuchoには、現在「Google」と「カインズ」のエクスペリエンスルームがある。

Googleのエクスペリエンスルームで最も興味をひいた体験は、Googleのスマートフォン「pixel 4」のカメラを使ったものだ。エクスペリエンスルームの中心に設置されているLEDチューブで作られたオブジェを、「pixel 4」のカメラ越しに見ると、肉眼よりも色鮮やかに見えるという仕組みである。

「口で説明したり、ただプロダクトを使ってもらったりするよりも、インパクトのある体験をしてもらうための空間が、ここエクスペリエンスルームです。どうすればお客さまに唯一無二の体験や学びを提供できるか。企業さまと綿密なミーティングをして、こだわりや工夫を詰め込んだ空間を作り上げています」(堀切氏)

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    肉眼だと白っぽい光しか見えないが、「pixel 4」のカメラでは虹色のオブジェに映る

もうひとつのエクスペリエンスルームで展示をしているのは、埼玉県に本社があるホームセンターのカインズ。世界最大規模のIT企業Googleと、郊外を中心に店舗展開するホームセンター・カインズという並びは、少々意外に感じられた。

「お客さまにとって新しい出会いを創出するという意味では、最新ガジェットでも生活用品でも変わらないと思っていて。カインズさんのスペースを訪れたお客さまが『これ便利そう、ほしい!』と感じてくれたら、自分たちにとっては大成功です。実際に、人気商品の『箸先がつかない菜箸』や『スパッと切れるラップケース』は今日だけでも在庫がほとんど捌けてしまいました」(堀切氏)

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    カインズのエクスペリエンスルームでは、ラップケースや傘立て、ほうきなどの生活用品が並ぶ

企業の想いを伝え、もっと体験できる空間に

「新しい」「便利」「かっこいい」から「かわいい」までがそろう、b8ta Tokyo – Yurakuchoに展示されたプロダクトについて、自身の実体験や開発者の情報などを交えながら解説をしてくれた堀切氏。その理由は「出展企業の想いを代弁する」つもりで接客をするというb8taのポリシーにあるという。

「もちろん、いろいろなプロダクトの情報をインプットするのは大変。しかし、各企業の担当者さまから研修を受けて、プロダクトにかける想いを聞いていると『この想いを私たちがお客さまに伝えないと』という気持ちになってくるんです。すると、商品紹介に終わらない“ストーリー紹介”になっていくんだと思います」(堀切氏)

この話を聞いて、RaaS(Retail as a Service)の先駆的存在と呼ばれているb8taの、意外にも人間臭い努力に驚いてしまった。クラスの優等生に「昨日勉強した?」と尋ねたら「もちろん、死ぬほどしたよ」と答えられたような。そして同時に、だからこそb8taの店頭には、どこか温かみのある雰囲気が漂っているのだろうと、納得がいった。

掲げた理想に向かってひた走るb8taのこれからが知りたくなって、オープン初日で聞くのは気が早いかもしれないと思いつつも、最後に直近の目標について尋ねてみた。

「今は店内に入れる人数も、店頭でできることも限られている中で運営している状態なので、これからもっと体験できることを増やしていきたいですね。路上で自転車の試乗会をしたり、食品の取り扱いを増やしたり」(堀切氏)

堀切氏の頭には、すでに体験のアイデアであふれている。

「本当は、展示中の浄水器、『和食のためのクリンスイ』の水も試飲してもらえるようにしたかったんです。また、製品を展示している企業さまを招いて、店頭でお客さまと交流してもらうといったb8taならではの取り組みなど、今はもう挑戦したいことしかないですね」(堀切氏)