では、このような広告展開のデータ基盤を活用すると、どのような広告展開が可能になるのか。鵜山氏は2つの例を挙げて説明した。
ひとつめは、大手不動産会社が記事の本文内に出てくるインリード型動画広告を展開した際の事例だ。一般的に、動画広告を展開した際には、視聴回数、視聴完了率、広告クリック率などが主なKPIになるが、鵜山氏によると同社では動画視聴後の検索やサイト訪問などポストインプレッションの行動も含めてデータを分析しているのだという。
「動画の価値は(視聴時の)直接的なアクションではなく、視聴されたことによって態度変容や意思決定にどのような影響を与えられたかという点だと考えている」(鵜山氏)
ポストインプレッションのデータにまで注目すると、実際にどのような分析と発見ができるのか。鵜山氏は「視聴完了度の違いによってサイト来訪率にどのような違いが生じているか」というテーマを例に説明した。
この大手不動産会社が動画広告を展開した際、直接的な広告クリック率は0.1%程度だったのだそうだが、ポストインプレッションを含めると視聴完了率50%の人で0.6%程度がクライアントサイトを来訪。そして、100%視聴を完了した人については、来訪率は1.4%と飛躍的に高くなったのだという。つまり、この広告展開では、いかに100%視聴完了してもらうか、そのためにはどのようなコンテンツを配信するかが、非常に重要であることがわかるのだ。
さらに、この「動画を100%視聴してくれる人」はどのような人なのかを分析すると、広告主への関心が高い見込み顧客がどのような人物像なのかが、さらに明確になってくる。具体的には、視聴完了率100%の人がどのようなコンテンツを視聴しているかによって関心のあるテーマなどを分析することで、新しいクリエイティブのコンテキスト設計、ターゲティングの見直し、ランディングページのコンテンツ企画といった具体的なアクションに活用することができるのだ。
「マーケターのなかには、顧客理解を非常に重視している方が多いと感じている。私たちはマーケティングの戦略面に貢献できるよう、顧客理解につながるような分析を推進していきたい」(鵜山氏)
聞き手の大野氏は、こうした動画接触者のインサイト分析について、「これがないとコンテンツの企画やカスタマージャーニーの設計がすべて仮説ベースになってしまう」としたうえで、「再生回数や再生視聴完了率はブライトコーブでの提供するシステムでも把握できるが、Treasure Data CDPと連携することで、動画を最後まで観た人がどういう記事を読んでいるかといった細かい分析をすることができ、で動画視聴者のインサイトを深く理解できる。この分析を次のマーケティング施策に活かすことができる」とそのメリットをまとめた。