オートファジーの研究・事業化を目指す大阪大学(阪大)発のベンチャー企業「AutoPhagyGO(APGO)」は7月28日、UHA味覚糖、MERESCO、ならびに成毛眞氏を対象とした第1回第三者割当増資を実施し、約1億円の資金調達を行ったことを発表した。
同社は2016年のノーベル生理学・医学賞受賞者である東京工業大学の大隅良典 教授のまな弟子の1人としてオートファジーの研究に携わってきた大阪大学大学院 生命機能研究科 細胞内膜動態研究室 医学研究科 遺伝学教室の吉森保 教授の哺乳類におけるオートファジー研究の成果を元に、人間の健康寿命伸長などに向けた研究の推進と、オートファジーの研究成果をもとにした事業化を目指して2019年6月に設立された阪大発ベンチャー。今回の第三者割当増資は、オートファジーを活用して、アルツハイマー型認知症やパーキンソン病などの神経変性疾患などの予防・治療、老化防止、健康寿命伸長などへのオートファジー研究および事業化の推進を目的に実施されたもの。
また、すでにUHA味覚糖、MORESCOに加え、花王、ダイセル、小林製薬の5社と受託・共同研究を進めているとのことで、今回の発表に合わせてUHA味覚糖より、共同研究により、細胞でのオートファジー活性を確認した2成分、ならびにすでにオートファジーを活性化することが知られていたポリアミンの3種類の成分を配合したサプリメント「UHA味覚糖 オートファジー習慣」を即日、自社の通販サイトで販売が開始されたことが発表されている。
APGOでは、オープンプラットフォームのビジネスモデルの下、今後も事業の拡大を図っていく計画で、2021年7月に第2回第三者割当増資の実施を目指すとするほか、同時期までに8社との受託・共同研究の実施を果たし、共同開発製品も3製品にまで増加させたいとするほか、2024年7月までに受託・共同研究の対象を15社にまで拡大させつつ、共同開発製品も6製品に拡大させ、さらに2つの創薬パイプラインの臨床ステージ入りを果たすことで、増資を必要としない自立した企業となることを目指すとしている。
また、事業規模の拡大に合わせて研究体制の拡充も進めていくとしており、2021年7月までに、現在の2名の研究員体制を5名に増員し、さらに事業開発員も1名雇用するとしているほか、2024年7月までに研究員10名、事業開発員5名体制を構築したいとしている。
このほか、阪大の吉森教授が、研究分野で日本が強みを発揮しているオートファジーについて、より産学の活動を促進することで、日本の経済発展と国民生活の向上に寄与することを目指して、非営利型の一般社団法人「日本オートファジーコンソーシアム(仮称)」の設立に向けた準備を進めていることを併せて明らかにしている。
同コンソーシアムでは、オートファジー研究に関わる人材の育成・交流、オートファジー研究の事業化基盤の構築、そしてオートファジーに関する質の高い情報の社会への発信を活動の中心に据えていくとのことで、すでに最高顧問には大隅良典 教授が就任することが決まっているほか、吉森 教授が代表理事に、東京大学の水島昇 教授ならびに順天堂大学の小松雅明 教授が理事に就任する予定など、アドバイザリーボードのメンバーも含め、日本のオートファジー研究をけん引してきた代表的な研究者が参加。国内の多くの著名オートファジー研究者たちからの賛同を得ており、今後、さらに広くオートファジー研究者からの参加を募りつつ、企業からの参加も促し、2020年9月に社団法人として設立したいとしている。