パナソニックは、同社独自技術である「ナノイー」などに代表される帯電微粒子水技術が、細菌および真菌に対して、抑制効果があることを示した。
大阪府立大学が細菌9種類、真菌9種類を対象に行った試験によると、試した全種類において99.9%の抑制効果が認められたという。
試験を行った大阪府立大学の向本雅郁教授は、「細菌、真菌の代表となる種において、抑制効果があった。この結果から、耐性の高い細菌や真菌、未知の細菌や真菌に対しても同様の効果が期待できると考えられる」とした。
一方で、パナソニック アプライアンス社技術本部ホームアプライアンス開発センターの中山敏部長は、「新型コロナウイルスについても、効果の可能性がありそうだ。新たなウイルスであり、実際には、実物で検証してみないとわからない。その成果については、近々発表できる」と述べた。
帯電微粒子水は、ウイルスに届くとウイルス表面のスパイクに付着。帯電微粒子水に含まれ、酸化性が高く、反応性が高いOHラジカルがウイルス表面のたんぱく質を変性させ、ウイルスを抑制。OHラジカルは水素と反応して水になるという仕組みだ。
パナソニックでは、2009年に鳥インフルエンザや新型インフルエンザの抑制効果を実証したほか、カビや花粉、ペットに関するアレル物質や菌、ウイルスなどの抑制効果を実証している。また、2012年1月には、ウイルスへの抑制効果を実証。エンベロープの有無、遺伝子のDNAとRNAの組み合わせによる4つの分類において、代表的なウイルスに対する抑制効果を確認した実績を持つ。
「ここで使用したモデルウイルスと同じ分類のウイルスは、同じ生物学的特性を有しており、未検証のウイルスについても同じ生物学的作用機序を予測できる。すべての分類において効果が実証されたことは、未知のウイルスを含み、すべての分類のウイルスにも効果が見込まれる」(パナソニックの中山部長)とする。
新型コロナウイルスへの効果の可能性については、こうした観点から示してみせたものだ。だが、これらの検証は、あくまでも帯電微粒子水技術についての検証結果であり、この技術を搭載した製品の効果とは異なるとしている。
一般的に空気の浄化技術は、物質を空間から除去する「物理的浄化」と、物質を分解して除去する「化学的浄化」の2種類がある。
物理的浄化では、換気扇などによる換気、空気清浄機などによるフィルター、電気式などによる集塵があり、化学的浄化ではアルコールやラジカル、次亜塩素酸、オゾンがある。
反応性が最も高いOHラジカルを用いた技術が帯電微粒子であり、パナソニックのナノイーなどが含まれる。
パナソニックでは、水には臭気成分を溶かす性質があることに着目。これを空気浄化に生かすことを検討し、1997年から研究を開始した。2001年には帯電微粒子水発生技術の開発をスタートし、製品化に生かす一方、現在もこの研究を続けている。
「帯電微粒子水は、空気中の水に高電圧を加えることで生成されるナノサイズの微粒子イオンで、5~20nmの水でできた粒子。そのなかに、高反応成分であるOHラジカルが含まれ、脱臭のほか、菌、ウイルス、アレル物質抑制などに作用する。また、弱酸性であるため、肌や髪にもやさしい」(パナソニック アプライアンス社技術本部ホームアプライアンス開発センターの中山敏部長)とする。
同社では、帯電微粒子水が、うるおい美肌や髪ツヤ、髪のまとまりなどの「美容」、付着臭脱臭や除菌、カビ抑制などの「清潔」、鮮度維持、栄養素アップなどの「保鮮」に効果を発揮するとしている。
今回の試験は、病原微生物に対する抑制効果を検証するために実施したものであり、これまでのウイルスに対する実証に加えて、新たに細菌と真菌においても効果を実証したことになる。
パナソニックの中山部長は、「空気質に対する社会的関心が高まっている。帯電微粒子が社会に貢献できるということを広く知ってもらいたいという狙いから実施した」とし、「人体や生活環境には、様々な微生物が数多く存在する。そのなかで、とくに注意しなくてはならないのが、細菌、真菌、ウイルスといった病原微生物である。帯電微粒子水が、院内感染などで注目されるMRSAなどの細菌、食中毒を起こすアカカビなどの真菌でも、抑制効果を実証できた」とする。
また、大阪府立大学の向本雅郁教授は、「どんな清潔な生活をしていても、人は微生物と一緒に生活している。そして、人に病気を起こす病原微生物も、人の生活環境にある空気中、食品、動物などにたくさん存在している。一般的に、子供や老人、糖尿病などの慢性疾患、心疾患などの患者は免疫力が低く、感染症を起こしやすい。抵抗力が上回ると感染症は成立せず、同様に微生物の数を減らすと感染症は成立しない。帯電微粒子水によって、細菌や真菌といった病原微生物を抑制することが確認できた」とする。
試験対象となったのは、細菌では、黄色ブドウ球菌(MRSA)、リステリア菌、枯草菌、スメグマチス菌、ノカルディア菌、淋菌、サルモネラ菌、インフルエンザ菌、カンピロバクターの9種類。また、真菌では、マラセチア菌、白癬菌、スポロトリックス、エクソフィアラ、ユミケカビ、赤色酵母(ロドトルラ)、クロカビ(クラドスポリウム)、アカパンカビ、スエヒロダケの9種類。
いずれも、45リットルの空間において、床面から10cmの位置に、帯電微粒子水を発生させる装置を設置。その下に菌液を滴下したガーゼをシャーレに設置して、一定時間をかけて帯電微粒子水を曝露。菌数をカウントして、抑制率を算出した。
それによると、すべての細菌が2~4時間で抑制率が99.9%となり、すべての真菌で4~8時間で抑制率が99.9%になった。
「細菌では、グラム染色性などの『細胞壁の構造』、球菌/桿菌、らせん菌といった『形状』によるマトリクスにおいて、すべての分類で抑制効果があることを確認できた。また、真菌でも環境汚染真菌、病原性真菌を対象として、接合菌や子のう菌、担子菌などの『分子系統』、酵母様や糸状菌、二形性といった『形状』によるマトリクスで、すべての分類の真菌に対して抑制効果があることを確認した。この結果から、未知や未検証の細菌、真菌に対しても同様の効果が期待できる」としている。