AMDは9月11日、都内でEPYCプロセッサの現状と将来展望についての説明会を行ったので、この内容をまとめて紹介したい。スピーカーはでScott Aylor氏(Photo01)。
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Photo01:Scott Aylor氏(Corporate VP&General Manager, Enterprise Solutions)。ちなみに会場には4月にインタビューさせていただいたSteve Longoria氏も同席した
Aylor氏はIT部門が直面している問題を説明し(Photo02)たうえで、EPYCのエコシステムがこの1年で大きく成長したこと(Photo03)、日本国内でも採用事例が出てきた(Photo04)ことなどを簡単に触れた。
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Photo04:もっとも、んじゃYahoo! JapanやCyber Agentはシステムを全部EPYCベースにしたかといえばそんな訳はなく、現在はIntelのXeonベースとの混在環境の中で、一部のシステムを稼働させながら評価を行っている段階と捉えるのが正しいだろう
次に分野別ということで、Enterprise HostingやSAAS Providerなどに向けたマーケット(Photo05)では、1P EPYCで従来のXeon 2Pを代替可能であり、性能を引き上げながらコストと設置台数を減らせる、としている。このケースの事例としてHivelocity、Dropbox、Packetの3つが紹介された(Photo06)。
続いて18%を占めるHPC分野では、単に大学向けだけでなく、研究機関や企業でもHPCを利用する例が増えている。こちらの場合、昨今だとCompute PowerそのものよりもGPUなどを利用したアクセラレータを多用するケースが増えているのはご存知の通りであるが(Photo07)、このマーケットでも次第にEPYCの採用事例が増えつつあることが示された(Photo08)。
そして一番多い用途がVirtualization&Cloudである(Photo09)。Public/Private Cloudあるいは企業内のOn-Premiseなどで一番利用されるケースであるが、こうした部分で大きなメリットがあるとする(Photo10)。こちらではTencent/Azure/Baiduといった事例に加えて、「いまはまだ無いが今後事例を追加できるようにする」という話であった。
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Photo10:TencentにしてもAzureにしても、従来のXeonベースのインスタンスに加えてEPYCベースのインスタンスを新たに追加する形で提供されており、これを比較するとより高い性能と低い価格が実現できるとした
440億ドルの市場をEPYCで狙う
さて、Aylor氏がこんな話を各国で説いて回っているのは、今後1年の間に2Pサーバーの6割、およそ650万台の更新が予想され、その総額が440億ドルに達すると試算されているからだ。
なぜこんなに大規模な更新が行われるかといえば、長期間同じサーバーを利用すると、性能は相対的に低下し、故障などによるダウンタイムが増え、ライセンスコストも増え、結局TCOの増大に繋がるからである。
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Photo12:なぜライセンスコストが上がるかといえば、古いバージョンを使い続けられるとサポートコストが増大するから。そのためソフトウェアベンダーは古いバージョンのライセンスコストを引き上げることで新バージョンへの移行を促している
新しいシステムに入れ替えたほうがTCOの削減になるため、そうした古いサーバーの入れ替え需要をどれだけ取り込めるかが同社の鍵になっている。
そして(変な話であるが)2018年初めから話題になったCPUの脆弱性にまつわる問題は、EPYCにとって追い風となっているという(Photo13)。1月にMeltdown/Spectreが公表され、6月には新たなForeshadowも公表された。
Intel CPUの場合はこれの対策パッチをあてると大幅に性能が下がる(Foreshadowの場合、HyperTreadingの無効化が必要)ため、システムの性能も当下がることになる。こうした脆弱性への対策も、EPYCに乗り換える大きな動機の1つになる、とした。
最後に今後の製品としてすでに公表している様に、7nm Zenを利用したRomeプロセッサが現在サンプル出荷中であり、2019年に製品ラウンチが予定されているとして説明は締めくくられた。