近距離無線通信規格の「Bluetooth LE(Low Energy)」は、低消費電力が大きな特長です。多くの時間をスリープモードで動作し、センサーの値が変化するなどのきっかけでアクティブモードに切り替わり、データの送受信などの処理を行います。新型コロナウイルス接触確認アプリに採用されたのは、この消費電力の少なさが理由のひとつと考えられます。
ところで、Bluetooth LEが登場したBluetooth 4.0以前、バージョン3.xまでのBluetoothは、区別するために「Bluetoothクラシック」と呼ばれることもあります。どちらも2.4GHz帯で通信するものの、Bluetooth LEの電力消費量はBluetoothクラシックの約10分の1など、仕様が大きく異なります。
しかも両者に直接の互換性はありません。たとえば、ワイヤレスイヤホンなどオーディオ機器の接続に使われる通信仕様(プロファイル)の「A2DP」は、「Bluetooth 2.1+EDR」の範囲で運用されるプロファイル、つまりBluetoothクラシック用です。iPhoneなどBluetooth 4以降に対応したスマートフォンであっても、ワイヤレスイヤホンはBluetoothクラシックのモードで通信しているのです。
自分にワイヤレスイヤホンなど必要なし、新型コロナウイルス接触確認アプリさえ使えればいいという人は、Bluetooth LEだけ有効にしたい、そうすれば消エネ効果を期待できると考えるかもしれませんが、iPhoneでそれは困難です。「設定」→「Bluetooth」画面にあるスイッチは、Bluetooth LEとBluetoothクラシックの両方をオン/オフしてしまうからです。オフにすれば、両方とも動作しなくなります。
なお、コントロールセンターにあるBluetoothボタンは、接続/未接続を切り替えるためのもので、Bluetooth LEとBluetoothクラシックのいずれも無効にはなりません(オフにすると通信中の機器が接続解除されるだけ)。世の中にはBluetooth LEだけ(シングルモード)で動作するデバイスも存在しますが、iPhoneにそのような使い方は想定されていません。