Mozillaは、6月2日(現地時間)にFirefoxの新バージョンとなるWebブラウザ「Firefox 77」をリリースした。Firefox 76から1カ月でのバージョンアップである。途中、5月8日にはマイナーバージョンアップの76.0.1がリリースされた。76.0.1では、以下の修正が行われた。

  • Amazonアシスタントなどの一部のアドオンで複数のonConnectイベントが表示され、機能が損なわれるバグの修正
  • 一部のNVIDIAドライバがインストールされている32ビットのWindowsシステムでクラッシュする問題を修正

したがって、今回のバージョンアップは、76.0.1からとなる。本稿では、バージョン77の新機能などを紹介する。

Firefox 77のインストール

すでに自動アップデートが可能な状況になっているが、ここでは手動でアップデートする方法を説明したい。Firefoxメニューの[ヘルプ]→[Firefoxについて]を開くと更新が自動的に開始される。[再起動してFirefoxを更新]をクリックする(図1)。

  • 「Firefox 77」を試す - 「WebRender」が使える環境を拡充、新たな設定画面も

    図1 Firefox 77へのアップデート

アップデート後のFirefox 77は、図2のようになる。

  • 図2 バージョン77にアップデート直後のFirefox

新規に、Firefox 77をインストールする場合、FirefoxのWebページからインストーラをダウンロードする(図3)。

  • 図3 Firefoxのダウンロードページ

[今すぐダウンロード]をクリックし、保存したファイルをダブルクリックして、インストールを開始する(図4)。

  • 図4 Firefox 77のインストール

画面の指示に従い、インストールを進めてほしい。以下では、新機能や変更点のいくつかを具体的に見ていこう。

Firefox 77の新機能

まずは、英国のユーザー向けであるが、新規タブを開くとPocketレコメンデーション(おすすめの記事)が表示されるようになった。Pocketは、Webページや動画をクリック1回で保存し、後で気軽に閲覧することができる機能である。レコメンデーションは、Pocketユーザーのコミュニティに基づく(より多くのユーザーが保存したWebページなどをおすすめと判定する)。これまで、米国、カナダ、ドイツでこの機能が実装されてきた(残念ながら、日本はまだである)。

また、「WebRender」が利用できる環境が広がった。NVIDIA製GPUを搭載した比較的大画面(1,920×1,200より大きい)のWindows 10ラップトップでも有効となった。WebRender (Quantum Render)は、GPUのレンダリング機能を使うことで高速な描画を可能とする機能である。しかし、ハードウェア(特にGPU)やオペレーティングシステム、ドライバなどの必要条件があり、すべての環境で使えるというものでもなかった。Firefox 67から、対応先が順次拡大されてきた。今回のWindows 10ラップトップのサポートで、対応がより広がったといえる。

新たな設定画面(about:certificateで表示される)が追加され、Web証明書をより簡単に表示および管理できるようになった。

  • 図5 新たな設定画面(about:certificate)

修正や変更点は、以下の通り。Firefoxのアクセシビリティを向上させるために、いくつかの機能が修正された。具体的には、

  • Firefoxオプションのアプリケーションリストにスクリーンリーダーユーザーがアクセスできるように
  • 一部のライブ地域では、JAWSスクリーンリーダーで更新されたテキストが報告されなかった問題を修正
  • 日付・時刻の入力で、アクセシビリティツールのユーザーのラベルが欠落しなくなった

である。また、browser.urlbar.oneOffSearches設定が削除された。1回限りの検索ボタンを非表示にするには、about:preferences#searchページで検索エンジンをオフにする。

開発者向けでは、JavaScriptデバッグのための機能が大幅に改善された。これにより、ソースの読み込みなどが高速になり、メモリ消費も削減された。また、JavaScript APIでは、String.prototype.replaceAll()が追加された。これにより、元の文字列を保持しながら、指定されたパターンにすべて一致する新しい文字列を返すことができる。

セキュリティアップデート

同時に行われたセキュリティアップデートであるが、修正された脆弱性はCVE番号ベースで8件である。深刻度の内訳は、4段階で上から2番目の「High」が5件、上から3番目の「Moderate」が1件、最低の「Low」が2件となっている。

「High」では、

  • NSSライブラリのDSAシグネチャに対するタイミング攻撃
  • SharedWorkerServiceでのメモリ解放後使用
  • ネイティブタイプとのJavaScriptタイプの混同
  • Firefox 77およびFirefox ESR 68.9で修正されたメモリ安全性の問題
  • Firefox 77で修正されたメモリ安全性の問題

となっている。最高レベルの「Critical」はないが、早めのアップデートをすべきであろう。