Appleは5月4日に、主力ノートパソコンのMacBook Pro 13インチモデルを刷新した。筆者は、2016年モデルのMacBook Pro 13インチをメインマシンとして活用しており、上位モデルへの買い替えを検討している。いわゆる「ターゲットユーザー」にあたる。そうした前提で、このマシンをレビューしていきたい。まずは、目玉の1つとなったMagic Keyboardの搭載だ。

  • 5月4日に登場した新しいMacBook Pro 13インチモデル。最廉価モデルの価格は税別134,800円

今回のMacBook Pro 13インチモデルは、プロセッサの消費エネルギーで上位モデルと下位モデルに分かれる。プロセッサの世代やメモリの速度などはモデルごとに異なるが、Magic Keyboardの採用は全モデル共通となった。そのキーボードの変更について、打鍵感の感想を含め、考えていきたい。

MacBookシリーズ共通の上質なタイピング

筆者は、バタフライキーボードとTouch Barを備えるコンピュータを愛用してきた。個人的には、バタフライキーボード自体に不具合はなく、0.55mmという浅いキーストロークについても、これに合わせた指の動かし方を会得してからは、決して入力しにくいとは思わなかった。

  • 0.55mmと浅いキーストロークが特徴だった、旧MacBook Proのバタフライキーボード

しかし、多くのユーザーには打鍵感に欠ける、音がうるさく上質感がない、そして後述する信頼性の問題で不評となっていた。そこで、2019年11月に登場したMacBook Pro 16インチモデルで新しい、というよりは以前採用していたシザー構造に戻しながらも改良を加えたMagic Keyboardをデビューさせた。

16インチMacBook Pro、MacBook Air、iPad Pro向けMagic Keyboardに続いて、MacBook Pro 13インチモデルに採用されたことで、現在Appleが販売するモバイルコンピュータすべてがMagic Keyboardに置き換えられた。

Magic Keyboardのメカニズムはどのデバイスでも共通だ。1mmのストローク、キーのどこを押しても正確に押し下げられるシザー構造、そして適度な抵抗と反発力を与えてくれるラバードームは、とにかく「ちょうど良い」という言葉がふさわしい快適さを提供してくれる。

  • 新しいMacBook Pro 13インチモデルが搭載したMagic Keyboard。1mmのキーストロークを備え、しっかりとしたキータッチをもたらしてくれる

少し込み入った話になるが、バタフライキーのころは、常に自分の指の筋力を弱く使いながらタイピングをしていた。これは、キーを押し下げた際の反発力がさほどないからで、それを意識しながらタイピングする必要があったからだ。もちろん、そのコツが分かれば、長時間一定のペースでタイピングでき、使いにくいとは感じない。ただ、万人受けするタッチではないとも感じていた。

Magic Keybardは、前述の通りちょうど良い反発があるため、キーを押し下げたあとは力を抜き、ラバーではね返る力を利用し、よりリズミカルに次のキーへと指をジャンプさせながらタイピングできる。こちらの方が、多くの人にとってタイピングのスピードを高めやすいと感じるのではないだろうか。

静かで上質なタイプ音をもたらす

13インチMacBook ProのMagic Keyboardで上質さを感じる理由は音だ。

新しいメカニズムになり、パチパチとした打鍵音は小さくなった。手元にあるiPad Pro用のMagic Keyboardと比較すると、メカニズムは13インチMacBook Proと比べると同じでも、13インチMacBook Proの方がより静かな音を奏でるのである。

その理由として考えられるのが、本体の質量や、キーボード直下のパーツによる吸音や反響の違いが影響していると考えられる。特に、リターンキーやスペースキーなどの大型キーで、iPad Pro用のMagic Keyboardはカチャカチャという音が大きく耳に残るのだ。タッチは同じでも、音が違うと打鍵感も違って感じるから不思議である。

  • iPad Pro用のMagic Keyboard

13インチという持ち運ぶメインマシンにふさわしいサイズに、常用して多くの人が納得できるMagic Keyboardを搭載した点は、13インチMacBook Proの大きな『体験上の進化』と評価できる。

葬り去られたバタフライキーボード

もう少し事実を正確に分析すると、「Appleは早くバタフライキーボードをやめたかった」ということになるだろう。

そのことは、Appleの公式サポート文書も物語っている。「MacBook、MacBook Air、MacBook Proキーボード修理プログラム」だ。Appleは、バタフライキーボードを備える製品に対して、「キーボードの不具合が出やすい」というユーザーからの批判に応える形で無償修理を提供しているのだ。

このドキュメントには、バタフライキーボードを採用したMacBookシリーズにおいて、文字が勝手に反復入力される、文字が入力されない、押したキーが跳ね返らない、反応が一定しない場合、無償で修理することが書かれている。修理は1つまたは複数のキーのみの交換、あるいはキーボード全体の交換の対応が行われる。

これらは、バタフライキーの構造、すなわち本体の薄型化を優先し、キーのメカニズムを薄くしすぎた結果、埃やゴミの侵入に弱くなったり、そもそも構造が小さすぎて強すぎる打鍵で壊れやすかったり、と原因を分析できる。もちろん、年々改良が加えられてきたが、それでも解決に至らなかった。

この文書は2019年7月9日時点の情報とされており、リストにある対象モデルは最初にバタフライキーボードが採用されたMacBook (Retina, 12inch, Early 2015)から、MacBook Air (Retina, 13inch, 2019) 、MacBook Pro (13inch, 2019, Four Thunderbolt 3 Ports) 、MacBook Pro (15inch, 2019)までが含まれる。

同時に「本プログラムは、対象となるMacBook、MacBook Air、MacBook Proに対し、その最初の小売販売日から4年間適用されます」とも添えられている。つまり、バタフライキーボード搭載のMacBookシリーズは、すべての製品がこのキーボード修理プログラムの対象に含まれているのだ。

こうした状態を根本的に解決すること。これが、MacBookシリーズ全体でMagic Keyboardへの移行を早めたことになる。

では、今回の13インチMacBook Proはキーボードが主題なのか? 実はそうではない。(後編に続く)

著者 : 松村太郎(まつむらたろう)

1980年生まれのジャーナリスト・著者。慶應義塾大学政策・メディア研究科修士課程修了。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)、キャスタリア株式会社取締役研究責任者、ビジネス・ブレークスルー大学講師。近著に「LinkedInスタートブック」(日経BP刊)、「スマートフォン新時代」(NTT出版刊)、「ソーシャルラーニング入門」(日経BP刊)など。Twitterアカウントは「@taromatsumura」。