「2020年のMacを考える」シリーズ、前回の「iMacをどうするのか問題」に引き続き、2回目は13インチMacBook Proがテーマだ。

  • MacBook Proで売れ筋となっている13インチモデル。2019年秋にモデルチェンジした16インチモデルと同様の改良を施し、大きく進化する可能性がある

MacBook Proは、2016年にフルモデルチェンジを受けた。デザインについては、ファンクションキーの代わりにTouch Barを搭載したことや、ストローク0.55mmの薄型バタフライキーボードを備え、デバイス全体の薄型化を図ったのがポイント。機能面では、Tシリーズのチップを搭載したのが光る。

売れ筋の13インチモデルのMacBook Proは、15インチに比べてラインアップが複雑だ。同じ13インチモデルでも、Thunderbolt 3ポートを4つ搭載する上位モデルと、2つしかないエントリーモデルが用意されている。かつては、Touch Barが存在しないモデルもあってややこしかったが、そちらは実質的にMacBook Airに移行したとみてよい。

そうしたなか、2019年11月に状況が変わった。15インチモデルのMacBook Proが16インチモデルへと置き換えられたのだ。これによって、13インチMacBook Proの上位モデルは、16インチモデルの特徴を取り入れた新モデルへと進化する可能性が出てきた。

16インチの特徴を踏襲する「13インチモデル」とは?

15インチモデルはすでに生産が終了し、16インチMacBook Proに置き換えられた。モデル名の通り、ディスプレイサイズが1インチ大きくなったのがポイントだが、それ以外にも変化は少なくない。改めてまとめておこう。

  • ノート型Macのフラッグシップとなる16インチMacBook Pro。ディスプレイの大型化にとどまらない多くの改良が施された

  • ディスプレイサイズが1インチ拡大したが、ディスプレイの縁が狭くなったことで、筐体のサイズ拡大は最小限に抑えられている。
  • 筐体の厚みが0.7mm増した。
  • キーの深さ0.55mmのバタフライキーボードから、深さ1mmのシザーメカニズムを採用するMagic Keyboardへ変更され、ESCボタンとTouch IDがTouch Barから分離された。
  • 熱設計が見直され、ヒートシンクを35%拡大したほか、ファンも改良し通気量を28%増加させた。
  • グラフィックスに、初めてAMD Radeon Pro 5000Mシリーズを搭載。ベースモデルの5300Mでも、それまでの最大仕様だったRadeon Pro Vega20に比べて1.8倍高速に動作するようになった。ビデオメモリーの最大搭載量も8GBに拡大された。
  • 第9世代の8コアCore i9プロセッサを上位モデルに採用した。
  • 搭載バッテリー量を、米国連邦航空局(FAA)が定める機内持ち込みバッテリー容量制限の100Whとし、11時間のWebブラウジングを可能にした。
  • 付属のACアダプターは、USB Power Delivery(USB-PD)の上限100Wに近い96Wとした。
  • 2つのウーハーを向かい合わせて設置し振動を抑えながら、豊かな低音を実現する特許技術を採用し、内蔵スピーカーとしては非常に高音質なオーディオ再生を実現した。
  • 3つのマイクを活用して、低ノイズの高品位録音を可能にした。
  • 16インチMacBook Proは、キーボードがバタフライキーボードからMagic Keyboardへ変更されたのが評価された

ディスプレイが1インチ拡大されただけでデザインの変化こそ大きくないが、内部的には非常に多くの改善が施されていることが分かる。これらの特徴を踏襲する13インチモデルの改善版はどうなるか、予測してみた。

  • ディスプレイサイズが1インチ拡大され、14インチになる。
  • 厚みも拡大し、熱設計の見直しが行われる。
  • Magic Keyboardを採用する。
  • スピーカー、マイクの改善。
  • バッテリー容量の拡大。

このあたりは、さほど議論の余地なく採用される改善ではないか、と考えられる。いずれも、MacBook Airや13インチMacBook Proのエントリーモデルとの差別化を明らかにする意味でも、間違いなく行われるのではないだろうか。

その一方で、Thunderbolt 3ポートを2つだけ搭載するMacBook Proのエントリーモデルは、MacBook Airとの差別化を図るため、Touch Bar搭載とThunderbolt 3ポートを4つ備えるモデルへと置き換えられるかもしれない。

注目は「グラフィックスがどうなるか」

ここで、新しい13インチモデルについて議論が分かれるポイントが、グラフィックスをどうするか、だ。

これまでのラインアップでは、13インチモデルはIntelの内蔵グラフィックスのみ、15インチはAMDグラフィックスをいくつかの選択肢から選べる仕組みだった。新しい13インチモデルでは、このルールを変更する可能性が半々じゃないか、と感じている。

確かに、AMD Radeon Pro 5000Mシリーズなどの強力なグラフィックスを搭載できれば、既存の13インチユーザーの強力な買い替え動機になると同時に、同クラスでグラフィックスパフォーマンスを強化してきた競合となるWindowsゲームPCに追いつくことができ、特にビデオ編集や機械学習処理などの面で顧客を逃すことがなくなる。

その一方で、外部グラフィックスを用意しない可能性を半分見ている理由は、Intelのグラフィックスチップの性能向上にある。

長らく内蔵グラフィックスに特化してきたIntelは、2019年末に単体グラフィックスカードを発売し、現在まで残っているNVIDIA、AMDに続く「第3のブランド」に返り咲いた。このことが象徴するように、Intelのグラフィックスチップの実力は上がってきており、2020年モデルに採用されるとみられる第10世代Intel Coreプロセッサの内蔵グラフィックスの性能も、AMD Radeon Vegaシリーズに遜色ないものになると見られている。

前述の熱設計の見直しも相まって、Intelの内蔵グラフィックスがより高い性能を示すこともあるかもしれない。AMDグラフィックスの採用にしても、Intel内蔵グラフィックスの継続にしても、現在の13インチMacBook Proのグラフィックス性能に対して不満が募っていることは事実であるため、何らかの形で改善されることになるはずだ。(続く)

著者プロフィール
松村太郎

松村太郎

1980年生まれのジャーナリスト・著者。慶應義塾大学政策・メディア研究科修士課程修了。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)、キャスタリア株式会社取締役研究責任者、ビジネス・ブレークスルー大学講師。近著に「LinkedInスタートブック」(日経BP刊)、「スマートフォン新時代」(NTT出版刊)、「ソーシャルラーニング入門」(日経BP刊)など。Twitterアカウントは「@taromatsumura」。