前回の「僕が持ち出す3つのカメラと使い分け」に続き、近所を撮ろうをテーマにゆるく語っていきたいと思います。

普段から街角で写真を撮っている人や、何でも撮りまくるという人ならともかく、そうでない人にとっては“近所で写真を撮る”というのは意外と難しいかもしれません。いつも見慣れた光景だけに、目を引いたものを撮るということを強く意識しないと、結局1枚も撮らずに帰宅してしまう可能性もあります。しかし、仕事でも何かの課題でもないわけですから、気楽に考えてみましょう。手と頭を使うゲームとして考えるのもよし、といったところです。

  • リコーの「GR III」

    筆者が愛用しているリコーGR III。コンパクトで近所を撮るには最高のカメラだが、機動力を生かすには少々心構えも必要だ

最初に目に入ったものに絞って撮り続ける

自宅の近所であればどこに何があるのか、写真の心得がある人なら具体的にどういう写真が撮れるかも想像できるはず。通常は、そこで撮る撮らないを判断するわけですが、今は常に撮るという方向で考えてみてください。とはいえ、近所には何も撮るものがないよ……という人も多いと思います。そんなときは外に出て、最初に目に入ったものをターゲットにしてみましょう。自宅の前からスタートするのは気乗りがしないのなら、数分後にスマホのアラームをセットして歩き出しましょう。アラームが鳴ったときに目に入ったものがターゲットです。

  • 天気のいい日だったので「影」を意識的に狙ってみた。こういう場合は、考えるよりも先にまず1枚撮ってみるのが一番。そこから構図やアングルをさらに追い込んでみる(リコーGR III、絞り優先AE、F5.6、1/800秒、ISO100、WBオート)

  • すると瞬時の判断で、あるいは無意識のうちに影を生かせるようになる(富士フイルムX100V、絞り優先AE、F7.1、1/140秒、ISO160、WBオート)

そのターゲットがたとえばマンホールなら、とにかくマンホールを探してどんどん撮り歩きます。看板ならずっと看板。車ならずっと車。そうやってルールを決めて撮っていると、偶然の産物があったり、反対にマンネリを感じたりして、大抵の人は何かアレンジをするようになります。

たとえばマンホールを撮っていれば、通行人の足が入るとおもしろいとか、太陽が当たっていれば方角で立体感が変わることに気付きます。あるいは、周囲に写真映えする何かがあり、引きで撮ろうとするかもしれません。マンホール“だけ”を撮らなければいけないルールではありますが、マンホールしか写しちゃいけないわけではありません。写真を撮るうえで重要なのは、いかに柔軟で自由な発想でいられるか。ルールの中で何ができるかを考えることがクリエイティブなのです。

  • たとえば「自販機」縛りで撮り続けると、こんなレトロなものに気づけるかもしれない(富士フイルムX100V、絞り優先AE、F4、1/550秒、ISO160、-0.67EV補正、WBオート)

これは、僕がワークショップの受講生や学校の生徒から「何を撮ったらいいか分かりません」と聞かれたとき、やってみるように勧める方法です。僕自身も、無目的に出掛けたときや、初めて訪れる場所で何を撮ろうか迷ったときにやってみることがあります。写真が上達したり楽しくなるために必要なのは、何よりたくさん写真を撮ること。まだ撮りたいものを自由に撮れない状況かもしれませんが、だからこそ近所で自分を磨くことに時間を使ってほしいと思います。

次回は、レンズの選び方や使い方について解説したいと思います。

【編集部より】鹿野カメラマンが、緊急事態宣言発令中の近所を撮った作品で写真展「明日COLOR」を行います。期間は6月30日(火)〜7月12日(日)、会場は東京・日本橋小伝馬町のルーニィ247ファインアーツです。詳細は写真展のWebサイトにて。

鹿野貴司(しかのたかし)

1974年東京都生まれ。多摩美術大学映像コース卒業。さまざまな職業を経て、広告や雑誌の撮影を手掛ける。日本大学芸術学部写真学科非常勤講師、埼玉県立芸術総合高等学校非常勤講師。