長く感じた緊急事態宣言、最後まで残った東京・神奈川・千葉・埼玉・北海道でも、ついに解除が濃厚となってきました。しかし、旅行は引き続き自粛が要請され、観光や遊興施設のほとんどは何らかの制限がある状態です。写真撮影でも風景や鉄道、ポートレートなど、ロケが難しいジャンルはまだたくさんあります。かといって、撮影を諦めるのはもったいない話です。

必要に迫られたり、気分転換で近場を出歩くこともあるでしょう。そんなときにカメラを持ち歩くと、制限や自粛だらけの国民我慢大会も少しは楽しくなりますよ、というのがこの短期連載のテーマです。近所の街角やちょっとした光景も立派な被写体になりますし、そうして撮りためた写真はのちのち今回の出来事を振り返るときの材料になります。いざ緊急事態宣言が明けたときに、すんなり“現場”へと復帰するためのトレーニングという側面もあります。

毎日の何気ない撮影が子どもの成長記録に

僕も緊急事態宣言が発令されてから、新たにnoteを始め、写真と日記を毎日公開しています。それもあり、限られた時間と範囲の中でも、意識して写真を撮るようにしています。仕事はほとんどがキャンセルになり、朝と夕方は1歳7カ月の息子と散歩。息子は保育園が休園でいろいろ持て余しており、まさに怪獣そのもの。毎日が育児でぐったりですが、思えば息子にあまりカメラを向けることがありませんでした。それが、今は毎日山のように成長記録を撮っています。ちょうど言葉や遊びを覚え始めたタイミングで、災い転じて何とやらです。

  • 近所の公園にある息子お気に入りの滑り台が、ある日突然封鎖されてしまった。なんで?なんで滑れないの?という息子の戸惑いをすかさず撮ってみた。困った事態ではあるのだが(富士フイルムX100V、絞り優先AE、F2.8、1/1700秒、ISO320、WBオート)

  • 観光地でも何でもない路地裏でも、光と影があればドラマチックな写真が撮れる。いや、路地裏だからこそ撮れるというべきかもしれない(シグマfp+45mm F2.8 DG DN、絞り優先AE、F5.6、1/160秒、-1.3EV補正、ISO100、WBオート)

息子を昼寝させたタイミングで買い物やジョギングに出掛けるのですが、そのときもカメラを持ち、なるべく通ったことのない道を通るようにしています。1時間ちょっとの外出ですが、制限とメリハリのある生活を自分なりに楽しんでいます。

日ごろ持ち出している3種類のカメラと使い分け

連載の初回でもあるので、どういうふうにカメラの使い分けをしているのかをちょっとだけ紹介しましょう。仕事では、ミラーレス機のソニーα7R IVとα7R IIIがメインで、ときどき一眼レフのキヤノンEOS 5D Mark IVも使っています。これらはご近所撮影でも使っていますが、持ち出す率が高いのはシグマfp+45mm F2.8、富士フイルムX100V、リコーGR IIIのいずれか。キャラクターは三者三様ですが、小型軽量である点は共通しています。

  • 鹿野カメラマンが近所の撮影に愛用している3台のカメラ

    お出かけトリオ。左からシグマfp+45mm F2.8、富士フイルムX100V、リコーGR IIIで、共通点はいずれもシャッター音がほとんどしないこと。それはそれでメリットなのだが、やはりシャッター音が恋しくなり(笑)、最近はα7R IVやEOS 5D Mark IVを持ち出すこともある

日常を撮るならスマホでも十分ですが、大切なのは「あえて写真を撮る」という意識。小型軽量でありながらAPS-C~フルサイズという大きなセンサーを積み、設定や操作も楽しめるこの3台はおすすめです。

僕はどう使い分けるのかというと、息子を連れて散歩に出かけるときや、どれにするか迷ったときはX100V。レンズは固定ですが、35mm相当という焦点距離がスナップに使いやすいのです。ランニングのときや、ちょっと買い物に出掛けるときは、ポケットに収まるGR III。反対に、短時間でも撮影を楽しみたいときは、道具としての魅力があるfpを持ち出します。

次回は、被写体の見つけ方について解説したいと思います。