アマゾン ウェブ サービス(AWS)はこのほど、ヘルステック領域に関する説明会を開催した。同社のインダストリー事業開発部 シニア事業開発マネージャー(ヘルスケア・ライフサイエンス)の佐近康隆氏が医療業界における取り組みについて説明し、オンライン診療サービスを提供するMICIN 代表取締役 CEOの原聖吾氏がAWSを活用した同社の取り組みを紹介した。

  • 左から、MICIN 代表取締役 CEO 原聖吾氏、アマゾン ウェブ サービス インダストリー事業開発部 シニア事業開発マネージャー(ヘルスケア・ライフサイエンス)佐近康隆氏

ヘルステック領域で導入が進むAWS

ここ数年、ヘルステック領域におけるITの活用は進んでいるが、新型コロナウイルスの影響で規制が緩和され、オンライン診療を提供する医療機関が増えている。例えば、新型コロナウイルスの感染拡大により、病院で診察を受けることが難しくなったことから、4月13日から、特例措置として、初診のオンライン診療が認められた。

アマゾン ウェブ サービス ジャパン インダストリー事業開発部 シニア事業開発マネージャー(ヘルスケア・ライフサイエンス)の佐近康隆氏は、同社のサービスが医療機関、技術機関、保険者、政府などヘルステック領域のさまざまなステークホルダーにおいて活用されていると語った。

  • アマゾン ウェブ サービスの国内のヘルスケア関連の顧客

佐近氏はヘルステック領域においてAWSのサービスを活用するメリットとして、「低コスト」「インフラ調達の俊敏性と弾力性」「(豊富で統合されたマネージドサービス」「最先端で幅広いAI・機械学習サービス」「高いセキュリティ」を挙げた。

AWSはクラウドサービスを提供しているため、利用にあたっては、初期投資が不要で、利用した分だけ料金を払えばよい。さらに、規模を拡大しながら効率を改善することで、累計80回以上の値下げを実施している。

また、左近氏は「われわれのサービスはスケールアップが容易。例えば、本来、1台で10時間かかるシミュレーションを実施する際、AWSなら一時的にスケールアップすることで、同じ料金でも1時間で完了することができる。その空いた時間をアイデアの実現に回すことができる」と述べた。

⼀気通貫でオンライン診療・服薬指導・医薬品の配送を

MICINは、オンライン診療サービス「curon(クロン)」や薬局専用サービス「curonお薬サポート」といった医療サービスを提供しているほか、医療データをAIなどで解析・活用するデータソリューション事業、医薬品の臨床開発向けデジタルソリューション事業「MiROHA」を運営している。

AWSのサービスは「curon」や「curonお薬サポート」のインフラとして、活用されている。「curon」は、スマートフォンを使って、予約から問診・受診、処方箋の受け取りまでをオンラインで完結させるサービスで、「curonお薬サポート」は電話による服薬指導から医薬品の配送までをサポートするサービスだ。

原氏は、「新型コロナウイルスの登場を機に、オンライン診療を取り巻く事情が大きく変わった。対象の疾患が拡大し、初診が可能になったほか、診療報酬も高くなった」と語った。

患者や医療機関におけるニーズも高まっており、新規患者の登録数が1月の平均と比べて約10倍になり、医療機関のアクティブ数も1月と比べ約4倍、問い合わせは約10倍に上っているという。

MICINでは、サービス開始時よりAWSを活用している。原氏は、AWSを導入した理由として、「豊富なマネージドサービス」「迅速なサービスの立ち上げが可能」「アーキテクチャを変更することなく容易にスケー ル可能」の3点を挙げた。

  • MICINがAWSを導入した理由

  • AWSをベースに構築されているMICINのインフラ環境

「curonお薬サポート」は「curon」の機能であり、両サービスによって、診療の予約、問診、診察、請求、配送をオンラインで解決させることを目指す。「curonお薬サポート」は5月21日に正式リリースされたが、クレジットカード決済・配送サポート機能から提供を開始し、順次、オンライン服薬指導に求められる各種機能(ビデオ通話機能、予約機能など)を提供する。これにより、今後オンライン診療・服薬指導・医薬品の配送まで ⼀気通貫で⾏えるシステムを提供していくという。

  • 一気通貫のオンライン診療サービス