AMDは米国時間の4月21日に、Ryzen 3 3100/3300とB550チップセットの存在を明らかにしたのは既報の通り。発売はRyzen 3 3100/3300が5月21日、B550搭載マザーボードは6月16日以降となっているが、これに先駆けてもう少し細かい資料が公開されたので、これをご紹介したいと思う。

  • Ryzen 3 3000シリーズとB550チップセットの詳細が明らかに

    Photo01: 米国では5月20日の発売となる。日本は時差の関係で5月21日発売。ちなみにこのレベルでは2製品の差異は動作周波数のみである。

Ryzen 3 3100/3300

まずRyzen 3について。こちらは2製品で、どちらも4コア8スレッド構成となっており、L3は16MBである。TDP 65Wも共通となっている。異なるのは動作周波数と価格のみであるのは前述の記事の通り。国内価格はRyzen 3 3300Xが120USDを13,980円、Ryzen 3 3100が99USDを11,980円としており、正直Ryzen 3 3100にはちょっとだけ割高感を感じる。(換算レートはRyzen 3 3300Xが116.5円/$、3100が121円/$となる)。ちなみに製品のポジショニングはこちら(Photo02)。今回発表のRyzen 3 3100はCore i3-9100Fを、Ryzen 3 3300XはCore i5-9400Fをそれぞれ競合製品と位置付けている形だが、Core i3-9100Fが本日付けのAmazonで8,535円、Core i5-9400Fが同じくAmazonで23,808円という値段をつけている事を考えると、余計にもRyzen 3 3100の割高感が強調される気がしなくもない。

実はこのRyzen 3 3100、当初は8,980円という話であった。これがいきなり3,000円も上がった理由であるが、Ryzen 5 1600AFのためではないかと筆者は疑っている。Ryzen 5 1600AFは、1000番台の番号ではあるが、実際にはGlobalfoundriesの12LPを使った製品で、本来なら2000番台の番号でないとおかしい製品である。ただスペック的にはRyzen 5 1600と全く同一で、Ryzen 5 2600と比べるとやや動作周波数が下回っているため、敢えて1000番台にしたものと思われる。

これが何で関係するかというと、このRyzen 5 1600AFが5月16日より国内発売されることが本日アナウンスされたのだが、その価格が9,980円に設定されているためだ。AMDとしては、12nmプロセスの製品のいわば在庫処分的にこのRyzen 5 1600AFを投入しており、これを下回る値段で7nmプロセスのRyzen 3 3100を投入すると、誰もRyzen 5 1600AFを買わなくなると判断したのではないか? というのが筆者の推測(というか、下種の勘繰りというか)である。中々に価格戦略的に難しい事は判るが、結果的にRyzen 3 3100の魅力が薄れたことは否定できない。

  • Photo02: これはあくまでも今年前半のラインナップであって、後半はまた変わる(恐らくRyzen 4000シリーズが投入される)と考えられる。

さて、まずRyzen 3 3100と前世代のRyzen 3 2300X、及びCore i3-9100と比較した結果がPhoto03~05となる。大きく性能面で水をあける、という感じにはなっていないが、まぁ互角で戦える感じになっているのは判る。

  • Photo03: PCMarkなどではそもそもあまり性能差が出にくいが、一応全てのテストでCore i3-9100Fを凌ぐ性能となっている。7ZipやCinebench nTは8スレッドの効用だろう(Core i3-9100FやRyzen 3 2300Xは4コア4スレッド)。

  • Photo04: 別に結果に文句をつける気はないが、Core i3でこのあたりを必要とするニーズがどの程度あるのかは疑問。

  • Photo05: こちらが本命ではないかと思う。どんなGPUカードを組み合わせ、どんな環境でテストしたのかの詳細は公開されていない。

さて次がRyzen 3 3300Xであるが、ちょっとここで興味深い話が公開された。Ryzen 3000シリーズは2つのCCXを搭載したCCD(CPU Chiplet)とCIoD(I/O Chiplet)からなるのはご存じの通り。ところがRyzen 3の場合は4コアなので、

  • 2つのCCXを2コアずつ生かす
  • 1つのCCXを4コアフルに生かし、もう片方は殺す

の2つのパターンがある。ここで性能面でのメリットが大きいのは、1つのCCXのみを生かす形だ。というのは、CCX間の通信は、一度CIoDを経由する形になるので、Latencyが大きいためだ。これはL3の共用に関しても同じで、あるCCXから反対側のCCXのL3をアクセスする場合、CIoD経由になってしまうためにどうしても遅くなる&帯域が低くなる(CCDとCIoDの間のInfinity Fabricの帯域がボトルネックになる)。そこで、Ryzen 3 3300Xでは1つのCCXを4コアフルに生かす4+0構成を取る事で、Ryzen 3 3100よりも性能を引き上げる(というか、Ryzen 3 3300XがNativeのパフォーマンスであって、Ryzen 3 3100はやや足かせを嵌められている)形になる。

これについて「んじゃRyzen 3 3100の構成にメリットはあるのか?」と確認したところ、「その分安い」という返事が返ってきた。要するにどういう話かと言えば、全部のダイに欠陥が無い、ということは無い訳で、時折欠陥のあるダイは当然発生する。ここで、片方のCCXのみに欠陥が集中していれば、そのCCXのみを殺せば済むのだが、両方のCCXに欠陥があると、Ryzen 3 3300Xの方式ではそのダイが使えなくなる。ところがそういう場合でもRyzen 3 3100ならば利用できる可能性がある訳だ。そう考えると、最終的な製品のYieldを高く保つためにはRyzen 3 3100の2+2の構成は欠かせないし、本来は廃棄になる筈だったダイを救えるわけで原価的にはかなり低く抑える事ができる。その分価格も低く抑えられる、ということである。

  • Photo06: 厳密に言えば1+3とかの構成もあり得るだろうが、そこまでラインアップを広げなくても十分Yieldを高く保てると判断されたと思われる。

ではより高性能なRyzen 3 3300Xの性能は? というのがこちら(Photo07~09)。比較対象はCore i5-9400Fである。こちらは市場価格が17,000円強~18,000円弱というあたり(GPU内蔵のCore i5-9400だと22,000円前後)で、これに比べると大分お買い得感は高い。まぁRyzen 3の本命はこちらと考えた方が妥当かもしれない。

  • Photo07: 先ほどのPhoto03と比較していただくと面白いが、更に性能差が顕著である。

  • Photo08: Photo04同様、ニーズがどの程度あるのかはよく分からない。まぁでも簡単な動画のトランスコードとかデジカメの現像とかをやる方は多少はおられるかもしれないが。

  • Photo09: 先のPhoto05もそうだったが、Deus Ex:Manking DividedはどうもRyzenは苦手らしい。ただ先ほどはCore i3-9100F比で93%のフレームレートだったPUBGがこちらでは102%とやや性能を大きく引き上げているのは、2+2構成を4+0構成に変更した効用だろうか?

ちなみにパッケージは従来と同じ薄型のもので、Wraith Stealthが同梱される(Photo10,11)。

  • Photo10: アングルのせいか、やけに厚みを持っている様に見える。

  • Photo11: 反対側から。こちらのアングルの方が実際の厚みに近い。