iPhone 8以降のiPhoneは、USB PD(USB Power Delivery)に準拠した急速充電に対応しています。USB PDに対応した充電器とケーブルがあらかじめ同梱されたiPhone 11 Proおよび11 Pro Maxは別にして、それ以外のモデルはUSB PD対応の充電器とケーブルを購入することで、充電速度を大幅にスピードアップできます。
もっとも、ひとくちにUSB PD対応の充電器といっても、その出力はさまざまで、iPhoneと組み合わせるのはどの製品が望ましいのか迷う人も少なくないでしょう。今回はそれらを含め、iPhoneに使える急速充電器選びでぜひとも押さえておきたい“3つのポイント”を紹介します。
最大出力が「18W」以上のUSB PD充電器を狙うべし
以前掲載した「【iPhone充電ガイド】充電器を交換すると充電が速くなる、ってホント?」で紹介したように、iPhone 8以降のモデルは、USB PD規格による急速充電をサポートしています。今後発売されるモデルもこの仕様は踏襲されると考えられますので、これから新しく充電器を購入する場合は、USB PDをサポートしている製品を購入するのが実質的に必須条件といえます。
むしろ、これからiPhone用の充電器を購入するにあたり、わざわざUSB PD非対応の製品を買うという選択肢は、予算に制限がない限り考えにくいといってよいでしょう。USB PD非対応でよいのなら付属の充電器を使えば済みますし、もともとUSB PD対応の充電器が付属するiPhone 11 Proシリーズでは、非対応の充電器に買い替えると、逆に充電速度が遅くなってしまうからです。
ところでUSB PDは、規格上は最大出力100Wという、ノートPCはもちろんディスプレイの電源としても使えるほどのパワフルさが特徴ですが、iPhoneはUSB PDの規格としてはかなり控えめな18Wの出力があれば急速充電できます。それゆえ、USB PDの充電器を購入する時は、最大出力の値が「18W」以上のモデルを選べば十分です。
もちろん、「100W」対応の充電器につないでも、自動的に電圧や電流が調整されて最大18Wでの充電が行われます。しかし、いかんせん最大出力が大きいと、そのぶん充電器のボディサイズは大きく重くなり、発熱量も大きくなります。将来的に、iPhoneがワンランク上の出力をサポートするのを見越したとしても、「30W」あれば十分でしょう。この最大出力の表記についての注意事項は、次の項も参考にしてください。
せっかくならUSB Type-Aも搭載した多ポートモデルを。出力の表記には注意
もうひとつ、チェックしたいのはポート数です。iPhoneだけを充電するのであれば1ポートあれば事足りるわけですが、USBで充電するデバイスはiPhoneだけではありません。あえて新しく充電器を購入するのであれば、多くのポート、特に従来のUSB Type-Aポートも搭載する充電器を購入しておいたほうが、さまざまなデバイスを一括で充電できて重宝します。
ただし、複数のポートを搭載した充電器は、前項で説明した大出力モデルと同様、ボディサイズはどうしても大きくなります。もし、出張や旅行で持ち歩くのが目的であれば、ポート数よりもサイズがコンパクトなことを優先すべきでしょう。逆に、自宅やオフィスで据置で使うなら、重量があるほうがケーブルに引きずられて動かないことが利点になり得ます。
ところで、ひとつ気をつけたいのは、充電器のパッケージに記載されている出力の値は、ほかのポートとの合計値であるケースが多いこと。例えば「最大出力27W」と書かれた充電器があったとして、iPhoneの急速充電に必要なUSB PDの18Wをクリアしているように見えますが、実はUSB PDは最大15Wで、残り12Wは別のポートへの出力という可能性もあります。
したがって、USB PD対応の充電器を選ぶ時は、USB PD単体で18Wという条件をクリアできているかを必ずチェックすることをおすすめします。具体的には、パッケージの裏や製品ページに書かれている、USB Type-Cの出力の値を見るとよいでしょう。
ところで「ワイヤレス充電」ってどうなの?
最後に、iPhoneを充電するもうひとつの手段、ワイヤレス充電にも触れておきましょう。
iPhone 8以降のiPhoneは、Qi(チー)という国際標準規格に準拠したワイヤレス充電に対応しています。ワイヤレス充電器の上にiPhoneを載せれば、ケーブルを接続することなく充電できます。Qiは国際標準規格ですので、別のデバイス、例えばAndroidスマホなどとも充電器を共用できる利点があります。
ケーブルをつなぐ必要がありませんので、充電中に手に取ってiPhoneのロックを解除して通知の内容を確認し、すぐに戻すという場合にも、わざわざケーブルを抜き差しする必要がありません。夜中など、抜いてしまったケーブルを見つけにくい環境でも、上に置くだけで済むので便利です。
そんな便利な仕組みがあるなら、ワイヤレス充電に一本化すればよいのでは?と思ってしまいますが、iPhoneにおけるワイヤレス充電は最大でも7.5Wと、前述のUSB PDの半分以下のスピードにとどまります。また、充電中に手などが当たって位置がずれると、容易に充電が中断してしまいます。位置がズレにくく、かつ充電に時間をかけられる環境、例えば就寝前にセットして翌朝までかけて充電するといった用途で使うのがベターです。
そんなワイヤレス充電器の選び方ですが、Qi規格に準拠している点さえクリアしていれば、あとは「スタンドタイプ」と「平置きタイプ」のどちらを選ぶかがポイントになるといえます。セットすれば位置がズレにくいスタンドタイプに対し、平置きタイプは位置をしっかり合わせないと充電が始まらない可能性がありますので、ベッドの枕元など手探りでiPhoneをセットする場合は、スタンドタイプのほうが失敗の確率を減らせます。
一方で平置きタイプは、デスク上などでも威圧感はなく、邪魔にならないことに加えて、iPhone以外のデバイス、例えばAirPodsのワイヤレス充電対応ケースなどにも使えるのが大きな利点です。自身の利用スタイルを考慮して製品を選ぶとよいでしょう。