ここに、1枚のマスクがあります。3月24日にシャープが生産開始を発表した、不織布マスクのサンプルです。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響でマスクの品薄状態が続く中、大手電機メーカーであるシャープがマスク生産に乗り出したのはなぜか、どのようないきさつがあったのか。同社広報へのメール取材と、マスクの実物から見えてきたことをお伝えします。
【お詫びと訂正】初出時、マスクのサンプル品の表裏を取り違えていたため、記事中の写真を正しい装着時のものに差し替えました。プリーツ(ひだ部分)を広げたときにできるポケット部分が下を向くのが正しいつけ方です。お詫びして訂正します。なお、マスクの耳ひもがついている位置は製品によって異なります(2020年4月3日 12:10)
とにかく、どこにもマスクがない
世界中で猛威を振るう新型コロナウイルス感染症(COVID-19)。感染拡大を受けてマスクが買い占められるなど社会不安が高まっており、お店にマスクが入荷されてもすぐに売り切れることが日常化しています。こうした事態を受けて、3月にヤフオク! やメルカリが衛生マスクの出品を禁止したほか、法律でマスクの高額転売が禁じられたことは記憶に新しいでしょう。
しかし、それでもマスク不足は改善していません。最寄りのドラッグストアをいくつか回ってみても「未入荷」という貼り紙ばかりで、棚にすら並ばない日々が続いているようです。筆者は毎年この時期、花粉症対策でマスクが手放せないのですが、今年はそれに加えてCOVID-19をはじめとするさまざまな病気にうつらない・うつさないためにも、より一層マスクの必要性を感じています。
もちろん、困っているのは我々一般市民だけではありません。全国の医師ら10万7,000人で構成される全国保険医団体連合会は「全国保険医新聞」(2020年3月25日号)で、医療現場の深刻なマスク・消毒剤などの衛生材料の不足を訴えています。政府や自治体が備蓄用マスクの配布を進めていますが、対応が追いついていないのが現状です。
この状況を打開すべく、新たにマスク生産に乗り出す企業が増えています。なかでも、異業種からの参入ということで注目を集めたのがシャープでした。同社は3月24日に三重(多気)工場で生産を始め、3月31日早朝には政府調達向けにマスク出荷を開始。今後は自社ECサイト「SHARP COCORO LIFE」での一般販売も予定しています。
シャープ公式Twitterアカウント(@SHARP_JP)は3月24日、マスク生産のツイートをしたあと、「電気を使わない自社製品をツイートしたの、これがはじめてだ」とつぶやいています。確かに、家電メーカーとしては異例のことだったに違いありません。
ようやっと本日、三重県のシャープ多気工場にて不織布マスクの生産を開始しました。1日に15万枚の生産ペースではじめ、いずれ50万枚/日を目指します。 https://t.co/WOmojCab0U pic.twitter.com/dKU4kKZGLf
— SHARP シャープ株式会社 (@SHARP_JP) March 24, 2020
電気を使わない自社製品をツイートしたの、これがはじめてだ。
— SHARP シャープ株式会社 (@SHARP_JP) March 24, 2020