無償サービスと有償サービスの違い

それぞれの特徴を理解し、目的によって使い分けることを推奨しますが、どちらの動画配信方法にも無償サービスと有償サービスが存在します。さまざまなサービスが存在するため、一概には言えませんが、その差はセキュリティ、機能制限、保証、サポートです。

ブロードキャスト配信において、無償サービスの多くは動画を広く公開する目的で設計されています。そのため、限られた参加者に限定して動画を公開したい場合に不向きなことがあります。有償サービスでは、その公開範囲を設定でき、自社のWebサイト(もしくは会員サイトやイントラサイト)にアクセスできる視聴者だけを対象に、動画を公開・配信することが可能です。また、社内の端末からYouTubeやFacebookの閲覧を禁止されている会社も未だ多く存在します。この点も視聴者の属性によっては考慮すべきでしょう。

双方向配信においては、無償サービスの多くが、参加者の上限数や機能に制限を設けています。例えば、無償サービス(もしくは無償版)は会議の録画(アーカイブ)ができないことや、自社のドメインを利用できないなどの制限が存在します。有償サービス(もしくは有償版)は、これらの制限を取り払うことができ、より効率的でセキュアな運用が可能になります。

ブロードキャスト配信・双方向配信を問わず、有償サービスは稼働率を保証していたり、日本語によるサポートを用意したりしていることが多くなっています。重要もしくは有償のセミナーや展示会をライブ配信する場合、これらの保証やサポートが選定に際して重要視されるでしょう。有料で参加費を取っているセミナーなど、どうしても失敗できないイベントならば、有償サービスを使うのがおすすめです。

有償サービスの1つとして、ブライトコーブでもブロドキャスト配信(片方向)型のソリューションを提供しています。昨年の実績値として99.999%の稼働率を誇るほか、日本語によるサポートも用意しています。また、ライブ配信をするためのWebサイトを簡単に作成することができる機能や、YouTube・Facebookで同時にライブ配信をするための機能を有しています。

MarketoやOracle Eloquaといったマーケティングオートメーションツールと連携する機能も好評ですが、最大の強みは動画専用のCMSであることです。ウェビナーが一般化し、定期的にライブ配信を実施していくと、動画の数がおのずと増えていきます。複数の部署にまたがり動画資産が増えていくと、それらの動画や視聴データを管理することが重要になってくるでしょう。

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以上、動画配信の方法を説明してきました。さまざまま方法があることを理解いただけたと思います。このように、セミナー・展示会のインターネットライブ配信に踏み切る前に、まずは、本当にライブ配信の必要性があるか(オンデマンド配信ではなぜ駄目なのか)を考慮し、ライブ配信の必要性がある場合はブロードキャスト・双方向配信のどちらが適しているかを検討することをお薦めします。

ライブ配信には、リアルタイムならではの緊張感や、一度しか見れない(一部サービスはDVR機能により巻き戻し再生を実現可 )というプレミアム感があります。ところが、ライブ配信は規模が大きくなればなるほど、失敗できない(撮影の失敗や、システムダウンが許されない)という緊張感が常に付きまといます。リスクを回避するには撮影や配信システムの安定性や冗長性を担保する必要があり、それらがコストや工数に跳ね返ります。

セミナー・展示会を単にインターネット動画配信に置き換えることは、真のデジタルトランスフォーメーションとは言えません。インターネットならではの見せ方や構成を検討することが必要です。また、取得できる視聴データをどのように活用するか検討することで、オフライン・オンラインを問わず、より良い結果を得ることができるでしょう。

インターネット動画配信の普及により、マーケターによってオフラインイベントの意義が再度検討されることが予測されます。オフラインにはオフラインのメリットが必ずあるため、それが今後どのように再定義されるのか楽しみです。

著者プロフィール

ブライトコーブ株式会社 マーケティングマネジャー


大野耕平


大手独立系slerにてソリューション営業を10年経験後、2016年にブライトコーブ入社。3年間の営業を経験した後、2019年より現職。さまざまな角度で、企業における動画活用の啓蒙に注力し、様々なイベントやメディア取材で講演をしている。また、日本における大企業内での社内広報や従業員エンゲージメントにおける動画活用の提案も多数実施している。