スマートシティ事例:超越した複合システムの開発における課題
1. 統合的アプローチの必要
都市部は様々なインフラで構成されており、複雑なシステムを構成しています。しかしながら、こうしたインフラは典型的なサイロ化されたオペレーションで運営されています。
スマートシティのインフラを最大限に活用するためには、これらを統合するためのアクションが必要となります。統合されたアプローチは人や政策、環境をダイナミックに関連付ける効果的なツールとされています。
以下に最新の事例をご紹介します。
- ニューヨークのデータ解析室(Mayor's Office of Data Analytics:MODA)は「サービスの質と公平性を改善する効率化とともに、都市のコスト削減と収益増加を報告するための公式のストラクチャーを開発しています」
- マサチューセッツ州ウェルズリーは、建物のエネルギー使用量を定期的に管理および報告しベンチマーキングするデータ分析で、エネルギーコストを13万2000ドル削減しました。
- カリフォルニア州サンディエゴではオープンデータポータル、予測分析、地理分析およびパフォーマンスの管理プログラムで経費削減に成功しました。プロジェクトの一部を以下に紹介します。
- リーンシックスシグマを活用し、緊急通報の入電に対しよりスピーディーに対応できるよう、緊急性の低い入電を識別できる応答とディスパッチプロセスを確立しました。
- センサーで自動調光する街灯により、年間240万ドルのエネルギーコストを削減しました。
ここで紹介した例はすべて、個別に計画されたプロジェクトですが、こうした手法を統合しデータを相関させることで、より良い結果が得られた事例を以下にご紹介します。
- ケーブルテレビ(CCTV)モニターと連携した緊急通報データを使用することで、街灯や路地裏など、犯罪発生率が高いエリアのデータを取得し、インフラを活用したセキュリティの向上につながります。
- 建物のエネルギーデータの構築とベンチマーキング法を使用し、スマートグリッド戦略を活用したエネルギー供給の均一化および送電・配電のムダを排除することが可能となります。
2. 収益化戦略:インフラの所有と利用
広く活用できるクラウドやデータ接続アーキテクチャーがない場合、統合アプローチには別の課題が発生します。新しい技術やプロトコルの設計および提案に伴って、多様なシステムのコネクティビティに対する標準化が必要となります。
テクノロジーを量産するビジネスモデルは確立されていないため、IoT導入の初期コストは大きな障害の1つとなっています。今後市場が成熟するにつれて、コスト、法令対応、インフラシェアリングビジネスモデルが初期コスト回収の道筋を作っていくでしょう。
3. モビリティ、アプリケーション、見える化
テクノロジーを活用することによって多くの利点がもたらされますが、セキュリティやプライバシーの脆弱性といった大きな課題も同時に生まれます。こうしたリスクを低減するためには戦略を定め、課題を認識する必要性があります。
以下の項目はサイバーセキュリティ戦略を作成するための必須事項です。
- IoTにおける脅威の方向性理解
- 電子機器へのIoT導入
- データのプライバシーと所有権に関する問題を認識
- 産業ごとの標準に対する理解と、リソースの有効活用
- 注目されている最新技術とその標準理解
- セキュリティポリシーの設計と実行
- データ保護と考察
- リスク管理とコンプライアンスプログラムの構築
- ハッキングおよびセキュリティ監査プログラムの策定とプライバシーの有効性
- サイバー攻撃対応と効果的なコミュニケーション
4. スマートシティにおけるビジョンと市民パートナーシップの欠如
今後の課題は都市環境においてどのように質の高い生活を提供するか、ということです。これにより、クラウド、IoT、モビリティとアプリケーション、ITおよびデータセキュリティ業界に可能性がもたらされます。ユースケースからわかるように企業はより新しい製品を開発もしくは採用し、技術革新を推進、新製品を開発することで、スマートシティ実現に取り組んでいく必要があります。
未来のスマートシティの居住者は、さらなる利便性を追求し続けるため、進化するテクノロジーやスマートシティソリューション提供にコミットし続けることが重要となっていくでしょう。
著者プロフィール
スブラタ・バッタチャリヤジョンソンコントロールズ
インドエンジニアリングセンター
マネージングディレクター
アンクル・タレハ
ジョンソンコントロールズ
インドエリアエンジニアリングセンター
データイネイブルドビジネスおよび先進プロダクトリサーチ
グループ長およびシニアGM