ソフトバンクは2月7日、2020年3月期 第3四半期 決算説明会を開催しました。2019年度Q3累計の売上高は3兆6,180億円で、営業利益は7,951億円に到達。コンシューマ、法人、流通、ヤフーの全事業で増収増益になりました。

決算発表会でソフトバンクの宮内謙社長は、ソフトバンク社員が逮捕された件をはじめ、PayPayとLINE Payの関係、楽天への対抗策、新型コロナウイルスの影響など、さまざまな話題について言及しました。

  • 発表会に登壇したソフトバンク 代表取締役社長兼CEOの宮内謙氏

2019年度Q3決算は堅調に推移、PayPayも好調

2019年10月から改正電気通信事業法が施行され、また消費税も増税されましたが、宮内社長は「そのなかでも順調に売上を伸ばすことができました。売上高にして1,635億円、営業利益は656億円も伸びています」と評価しました。

  • セグメント別の売上高

  • 2019年度Q3累計の連結業績

キャッシュレス決済サービスのPayPayについては「スタートからまだ1年半も経っていませんが、登録ユーザー数は2,400万人を突破しました。これほど一気に成長したサービスはありません。大規模なキャンペーンをしたあとも、順調に登録者数が伸びています。コンビニ3社の取り扱い額が非常に大きい」と説明。そして、ひと月あたりの決済回数については1億回超を記録したと報告し、「いまアクティブに使っていただけるペイメントサービスとして、業界でダントツ1番でしょう」と胸を張りました。

  • PayPayの登録ユーザー数は2,400万人を突破しています(2020年2月2日現在)

スマホの累計契約数は2,348万契約になりました。「ソフトバンク、ワイモバイル、LINEモバイルという3つのブランドがシナジーを生み出す、いい関係になりました。3ブランド、すべてが純増している状況です」と説明。なお、ソフトバンクでは2020年3月下旬から5Gサービスをスタートし、2024年には3G回線によるサービスを終了する見込みです。

  • ソフトバンク、ワイモバイル、LINEモバイルの3ブランドが純増しています

質疑応答ではヤフーとLINEの経営統合も話題に

質疑応答の時間では、記者団の質問に宮内社長と、宮川副社長が回答。5Gの料金体系について聞かれると、宮内社長は「折を見て、どこかで榛葉(代表取締役 副社長)から詳しく話ができれば。ドコモの吉澤さん、KDDIの高橋さんもコメントしていますが、私は5G時代にはアンリミテッドの世界にならざるを得ないのではないかと思っています。我々のギガモンスターでは、月を追うごとに膨大な量のデータが使われるようになった。今後、データを大量に消費する世界がやってきます」との考えを示しました。新料金プランについては「これから検討していきます」とのことです。

NTTドコモが2030年頃のサービス提供開始を目指す「6G」に関するコンセプトを発表したことについて聞かれると、宮川副社長は「いま5Gのベースバンドをつくれる国内メーカーはありませんが、10年後の6G時代には、ぜひとも国内メーカーと一緒に取り組めるといいですね。日本のベンダーさんにがんばっていただきたい。現在は大学、総務省などと連携して、ミリ波を使った実証実験などをしているところです。5Gでは出遅れた企業さんと、10年かけて協力してやっていきたい」と話しました。

  • 記者からの質問に答えるソフトバンク 代表取締役 副社長執行役員兼CTOの宮川潤一氏

2019年10月の改正電気通信事業法の施行、消費税の増税の影響について聞かれると、宮内社長は「他社さんと同じく、10月になって総販売台数が落ちた部分はありますが、3ブランドを展開している強みがあります。特にワイモバの勢いが落ちません。他社から乗り換えてくださるお客さんがいらっしゃるので、契約数は500万を超えました。LINEモバイルにも来てくれている。そういった意味で、ヘコみ幅は少ないものでした」と話します。

また、新型コロナウイルスの影響について、宮川副社長は「直近で困ることはありません。ただこのまま続くようだと、影響が出てくるかもしれない」とコメント。宮内社長は「3月商戦に向けて、販売数がドカンと伸びるところで果たしてどうなるか。いまのところは、切り抜けられるのではと考えています」と回答しました。ただ、ウイルスの終息時期が分からないので、そこが懸念材料であるとのことです。

ヤフーとLINEの経営統合によりPayPayとLINE Payの関係はどうなるのか、と聞かれた宮内社長は「詳しく言えないんです。相当、大きなシナジーが出せる。でも、どういう形で展開するかは、まだ言えません。中国でいえば、アリペイとWeChat Payがくっつくような話。おもしろいいことができるのではと思っています」と答えるにとどまりました。

  • ヤフーとLINEは経営統合を目指しています

TポイントとPayPayの関係については「うまい連携をしていければと思っています。例えばPayPayモールでショッピングするときにTポイントがつき、PayPayモールの20%オフも利用できる、そんな具合です。両方をうまく使って安く買い物ができるように、併用できるようにしていきたい。いいシナジーが生まれるよう、いま計画しているところです」と宮内社長。

続いて、楽天の携帯事業参入について聞かれると「どういった料金プラン、サービスを提供されるのか、いくつか想定しています。でも我々は3つのブランドを持っているので、楽天さんがどんな形で出てきても3つのブランドで対応できるのではないか。俊敏に対応します」としたうえで、「ひょっとすると、対応しなくてもいいかも知れません。というのも、直近でもドコモさんが新しい料金プランを出したり、KDDIさんが料金プランを値下げしたりしましたが、ソフトバンクはこの2年間、ずっと変わらずに独自のやり方でやっているからです」と説明していました。

ソフトバンク社員逮捕を受けて

2020年1月下旬に、ソフトバンク社員が在日ロシア通商代表部の職員に機密情報を漏らした疑いで逮捕された件については、決算発表会の最後にも時間をもうけ、あらためて謝罪した宮内社長。なぜ事件は起こったのか、と記者団に聞かれると「彼自身は真面目な人間でした。奥さんも子どももいる。なんで、こんなことになったのか、驚いています。古典的なスパイ活動にハマってしまった、ということでしょうか。基地局をつくる手順書を漏らしたとのことで、そんなものをロシアに持っていって何をするのか分かりませんが、ソフトバンクとしても警視庁公安部に全面的に協力している状況です」と説明します。

セキュリティについては厳しくやっている、として「外からのアタックに関しては日本企業のなかでもトップクラスだと自負しています。ロシア、中国などからのハッキングは全部、撃退している。一方で、今回のケースは社員が起こしたものでした。セキュリティに関して社員の再教育をするのは当然のことですが、これまでやってきたセキュリティ対策に加え、不審な行動をAIが検知するソフトウェアの導入も検討しています」と続けます。

社員が日頃と違う行動をしている、キーボード操作に不審な点がある、業務では扱わないデータベースにアクセスしようとしている、そういった行動から不正を未然に防ぐと宮内社長。そして「働き方改革により、場所や時間にとらわれないワークスタイルが広がっています。今回のような事件が働き方改革の足を引っ張らないよう、ソフトバンクでもAI、IoTを駆使したシステムなどの構築に注力していきます」と説明しました。