政府の総合科学技術・イノベーション会議(議長・安倍晋三首相)がこのほど、「ムーンショット型研究開発制度」の対象となる6つの研究目標を決めた。この制度は目標達成への道のりは難しくとも野心的、挑戦的で壮大な目標を掲げ、5年間で1000億円以上の研究開発費を投じる。「ムーンショット」は、ケネディ元米大統領が人類を月に送ると表明した演説にちなんだ言葉だ。

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    「ムーンショット型研究開発制度」の概略(内閣府/総合科学技術・イノベーション会議提供)

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    「ムーンショット型研究開発制度」の3種類のロゴマーク(内閣府提供)

内閣府によると、ムーンショット型研究開発制度は「日本発の破壊的イノベーションの創出を目指し、従来の延長にない、より大胆な発想に基づく挑戦的な研究開発を、司令塔となる総合科学技術・イノベーション会議の下、関係省庁が一体となって推進する新たな制度」と位置づける。2018年に創設され、その後目標の選定や運営方法などが同会議の有識者会議(ビジョナリー会議)の場を中心に検討されてきた。

注目されていた目標は、人工知能(AI)を活用したロボット開発や地球環境問題の解決につながる画期的な技術開発、広く社会課題解決に貢献する汎用型量子コンピューターの開発など6つで、2050年までに目標達成を目指す。これらの研究を統括するプログラムディレクター(PD)を3月末をめどに選定する予定。

6つの目標は次の通り。
(1)人が身体、脳、空間、時間の制約から解放された社会を実現
(2)超早期に疾患の予測・予防をすることができる社会を実現
(3)AIとロボットの共進化により、自ら学習・行動し人と共生するロボットを実現
(4)地球環境再生に向けた持続可能な資源循環を実現
(5)未利用の生物機能等のフル活用により、地球規模でムリ・ムダのない持続的な食料供給産業を創出
(6)経済・産業・安全保障を飛躍的に発展させる誤り耐性型汎用量子コンピューターを実現

これらを目標とする研究の推進は、科学技術振興機構(JST)のほか、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)や農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)も担当する予定だ。

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