初詣や花火大会、コンサート会場など狭い範囲に人が集中するイベントで、携帯電話会社のロゴが入った車両を見かけることがあります。あれは「車載型移動基地局」、文字どおりクルマに載せて移動できるタイプの携帯電話基地局で、混雑が予想される場所に設置することにより、通信量が急増し通話/データ通信ができなくなる輻輳(ふくそう)の軽減を図ります。

車載型移動基地局には、地上で電波を送受信するためのアンテナのほか、発電機やバッテリー、光ファイバー回線につながる通信機器などが搭載されています。設備は車両によって異なり、衛星通信用のパラボラアンテナを搭載するものもあれば、4G/LTE回線でもキャリア・アグリゲーションに対応するなど高速/大容量化を図ったものもあります。

計画的に出動できる場合は、近隣の光ファイバー回線に接続するようあらかじめ手配しますが、災害発生時など緊急時には衛星を利用します。通信状況(トラフィック)を監視し、必要に応じてチューニングを施すなどの最適化もリアルタイムに行われています。

どのキャリアも大型イベントのエリア対策には熱心で、車載型移動基地局以外にも持ち運びできる臨時基地局(可搬型移動基地局)が運用されています。モバイル回線だけでなく、小型Wi-Fiアクセスポイントを背負ったスタッフがイベント会場に投入されるとか、Wi-Fiシステムを搭載した気球を車両に係留するなどの試みもこれまで行われています。

なお、各キャリアは遠隔操作により対象基地局周辺のエリア補完が可能な固定基地局を展開するなど、災害に強い体制の構築に注力しています。車載型基地局のように形としては見えなくても、大型イベントや災害発生時にはなんらかのエリア対策が取られているかもしれませんよ。

  • 初詣などのイベントで見かける「キャリアの車両」はどういうしくみ?

    初詣などのイベントで見かける「キャリアの車両」はどういうしくみ?