「父親が突然の病で亡くなり、インターネット株取引など資産の状況が分からなくなった」「不慮の交通事故で息子が亡くなったが、交友関係や写真を見たいのでスマホのロックを解除したい」――。いつか万人に訪れる“死”ですが、故人が利用していたスマートフォンやパソコンなどのデジタル機器やインターネットアカウントなど、“デジタル資産”の存在も無視できなくなってきました。
この年末年始、実家に帰省している人も多いかと思います。親と直接顔を合わせる数少ないチャンスを利用して、“デジタル終活”について話し合ってみませんか。そこで、今回は「実家に帰ったときに親とデジタル終活する5つのコツ」を紹介したいと思います。
デジタルに詳しい人がリードし、家族全員で話し合おう
スマホやSNSアカウントなどのデジタル資産は、持ち主が何も備えをしていないと、万が一のことがあったときに残された周囲の人をとても困らせてしまうことになります。使いこなしの度合いに依らない部分もあるので、「たまにスマホで写真を撮るくらい」「LINEをやるだけ」といった家族も一緒に備えましょう。
だから「親に」ではなく「親と」。できれば兄弟姉妹も呼んで、家族みんなで集まって行うことが重要です。
ナビゲートは私、古田雄介が務めます。およそ10年前からデジタル遺品やデジタル終活について取材しており、このテーマなら多少なりともお役に立てるのではないかと思います。
下記のデジタル終活のポイントを踏まえ、実家でデジタル終活する5つのコツを追いかけていきましょう。
- 年齢や世代にかかわらず、デジタルに詳しい家族がリードしてみんなで一緒に進めるとスムーズにいきやすい。
- 完璧を目指しても、状況は3カ月後には変わる。気楽に構えて、実践できそうな「コツ」だけやる姿勢で始めたい。
- データの内容を突き詰める方向は、プライバシーが脅かされる展開を招くので危険。「実害を避ける」という範囲よりも先に深入りしないように意識したい。
第1歩:紙を使う
デジタル終活でもっとも重要なのが、「デジタルの重要な情報は紙に残しておく」こと。手帳やノート、A4コピー用紙でも構わないので、とにかく紙のメモが残るようにしましょう。終わったあと、そのメモを家族それぞれが預金通帳や実印などを保管している貴重品入れに入れておきましょう。
デジタルのメモにしないのは、デジタルの情報は他人からは見えにくいから。スマホやパソコンにメモを残すと、いざというときに肝心の家族が端末にログインできなかったり、操作に慣れていなくて目的のファイルが見つけられなかったりということが起こりえます。デジタル環境を必要としない紙にして、かつ、預金通帳などの重要なものと一緒に保管することで、緊急時の情報伝達性を飛躍的に高めることができます。
私のサイトでは、デジタル資産のメモ用紙を無料公開しています。自宅のプリンターで印刷し、利用してください。
第2歩:ネット&スマホ環境の名義を確認する
デジタル終活する場が整ったら、まずやりたいのは「家族が使っているネット環境の名義を確認しあう」ことです。
自宅のネット回線は、家族の誰かの名義になっていることが多いでしょう。契約者であるお父さんが亡くなったことで、プロバイダー契約が継続できなくなり、家族のメールアドレスもろとも使えなくなったというケースが実際にあります。みんなが元気なうちなら、名義や引き落とし先の変更が可能な場合が多いので、この機に確認しておきましょう。
また、子どものスマホや携帯電話の名義が親のままになっていたり、夫婦でどちらの名義の端末を使っていたりというケースもしばしばあります。元気なときは問題にならなくても、不測の事態に遭ったときに混乱を招くので、とりあえず現状を把握しておくことが大切です。