江崎グリコのポッキーとカプコンの『ストリートファイターV アーケードエディション(ストV)』がコラボレーションし、「Pocky K.O. Challenge」を2019年11月18日から展開しています。これは、『ストV』の体力ゲージをポッキーに見立て、勝利したときの「減った体力と残り体力の比率」を「ポッキーのチョコとビスケットの比率」と同じにする、というチャレンジゲームです。

K.O.シーンのスクリーンショットを投稿してPocky K.O.に成功しているかどうか判定する「Pocky K.O. Checker」なるものも用意。さらに、Pocky K.O.と判定された動画を、ハッシュタグ「#PockyKO」付きでTwitterに投稿すれば、抽選で選ばれた11人の「Pocky K.O.成功動画」が、米国カリフォルニア州ロサンゼルスで開催される「CAPCOM CUP 2019(以下、CC2019)」(2019年12月13日~15日)の会場の巨大スクリーンで放送されます。

  • 「Pocky K.O.」を展開中

そして、CC2019の会場では、ゲームのユーザーインターフェイスをPocky仕様に変更した『Street Fighter V Pocky Edition』を設置。来場者による試遊のほか、プロプレイヤーによるエキシビションマッチを予定しています。この専用モデルは、Pocky K.O. Challenge用に『ストV』をカスタマイズしたもので、CC2019の3日間しかプレイできない激レアなバージョンです。

この『Street Fighter V Pocky Edition』をカプコン東京本店で試遊させてもらえると聞いたので、実際に触らせてもらいました。

いざ、Pocky Editionをプレイ! ギリギリの駆け引きがアツい

『Street Fighter V Pocky Edition』は、タイトル画面からカスタマイズされています。ゲームを開始するといきなりステージ選択画面に移行。次にキャラクターを選択します。大会ステージ4つが用意されており、さまざまな場所にポッキーとのコラボ要素が入っています。

  • 『Street Fighter V Pocky Edition』のタイトルロゴ。プロモーション用の特別バージョンながら、専用ロゴを作成する凝りようです。なお、遊べるモードは「VERSUS」のみ

  • ステージ選択画面。ポッキーのアレンジが施された4つのステージから選びます

  • 筆者は持ちキャラのザンギエフでチャレンジ

  • ローディング中も「Pocky」

今回はカプコン ストリートファイターシリーズ プロデューサーの松本脩平さんに相手をしていただきました。まずは、「Pocky K.O.」について解説していただきながらの対戦です。

基本的なルールは通常の『ストV』と同じ。ただし、よく見ると、体力ゲージのところが通常の『ストV』と異なります。体力が減った部分がチョコレートのような色、残っている部分がビスケットの色になっているだけでなく、「Pocky Chance !」ゾーンが赤く表示されています。

自分の体力ゲージを、このゾーンのところまで減らした状態で相手を倒すと、みごと「Pocky K.O.」です。ただし、ここまで体力を落とした状態で戦うのはなかなかリスキー。もちろん相手も「Pocky K.O.」を狙っているので、お互いがこの状態になると、そこからはまさに一触即発です。ビスケット部分は意外と少ないので、クリティカルアーツ(CA)はもちろん、ちょっとしたコンボでも倒されてしまいます。

  • 体力ゲージには赤い「Pocky Chance !」ゾーンが表示されています

  • 体力が減っていくと、だんだんとゲージがポッキーらしくなります

「Pocky Chance !」を超えて体力が減ってしまった場合は、「次の試合まで持ち越し!」とはならず、なんと体力が「Pocky Chance !」ラインまで徐々に回復していく仕様。勝負が決まるまで何度もチャレンジできます。このとき、CA発動に必要な「EXゲージ」や、特殊技「Vトリガー」を発動するための「Vゲージ」も溜まっていくので、より一層「Pocky K.O.」のチャンスが高まります。

さらに、このゲームは「Pocky K.O.」が目的なので、「Pocky K.O.」を決めればそこで勝負が確定。今回は2ラウンド先取でのプレイでしたが、1ゲームめで「Pocky K.O.」を決められればそこでセット終了です。

CAで勝負を決めると、演出とともに「Pocky K.O.」の文字が浮かび上がるので、全キャラ分見てみたい気持ちになります。今回の体験では4ステージ分プレイさせてもらいましたが、3回「Pocky K.O.」を出せました。もちろん松本プロデューサーの忖度によって、うまく「Pocky K.O.」を出せたところもあるので、これが真剣勝負になるともう少し成功確率は下がるでしょう。

とはいえ、「Pocky Chance !」の幅といい、配置といい、体力ゲージの回復スピードといい、絶妙なバランスのように感じました。「Pocky K.O.」を決めるためにはある程度自分もダメージを受ける必要があるので、そのあたりの駆け引きも勝負をより白熱させます。

  • 「Pocky K.O.」達成! 「Pocky K.O.」をアナウンスする声もわざわざ録り下ろしているこだわりっぷりです

  • CAで「Pocky K.O.」を出せたときは爽快です

  • コラボステージはRing_of_Justice、Ring_of_Pride、Ring_of_Destiny、Ring_of_Powerの4種類。大型モニターやコーナーポストなどいたるところにポッキーが

ポッキー仕様に変更した『Street Fighter V Pocky Edition』のプレイ動画

ポッキーがeスポーツに参入した背景を聞いた

コラボキャンペーンで、ここまで既存のゲームをカスタマイズするのはかなり珍しいのではないでしょうか。しかも、この「Pocky Edition」、プレイできるのはロサンゼルスで開催される「CC2019」の会場のみ。期間はわずか3日間です。かなり贅沢なキャンペーンだといえます。

今回のキャンペーンについて、仕掛け役である江崎グリコ アシスタントグローバルブランドマネージャーの玉井博久さんは「数年前からeスポーツの盛り上がりは感じており、大会運営やメーカー、チームなどから協賛のご提案はいくつもいただいていました。しかし、ありがたいことに、日本でポッキーの認知度はほぼ100%。単純に冠スポンサーやチームのスポンサーに就くのは価値を活かしにくいと思って、断っていました。2016年から海外に携わるようになり、そこで、海外のポッキー認知度が日本ほど高くないことを知りました。また、世界でeスポーツが日本と比較にならないほど盛り上がっていることから、海外プロモーションの一環としてeスポーツへ参入したのです」と、今回のコラボについてきっかけを話します。

  • コラボを記念して、PockyのStreet Fighter V限定パッケージが登場。ECサイト「Asian Food Grocer」や「It’s Sugar」「Hot Topic」「FYE」などアメリカの店舗で販売されます

ポッキーを展開している「北米」や「中国」「韓国」などのエリアで、eスポーツが盛り上がりを見せていたことも、参入を決めた要因の1つ。さらに、ポッキーがお菓子であり、eスポーツと相性がいい点も後押しになったそうです。サッカーやバスケットボールの試合中にお菓子を食べることはあまりないと思いますが、eスポーツは試合中でもパクッとお菓子を食べられますし、広義として「ゲームのプレイ」と考えた場合でも、親和性は高いといえるでしょう。

ただ、今回も冠スポンサーや商品提供でeスポーツと関わるつもりはなく、玉井さんはおもしろい案を模索。いくつか出た案のなかから「体⼒ゲージがポッキーに⾒える瞬間がある」という企画を進めることに決めました。

「eスポーツにはよく体力ゲージがありますし、それがポッキーに見えるのはかなり強いのではないかと考えました。『ストリートファイター』シリーズに決めたのは、対戦ゲームと聞いて真っ先に思い浮かんだタイトルだったためです」(玉井さん)

おもしろい企画に期待は高まりますが、社内では賛否両論。すんなりとは通りませんでした。3度のプレゼンで玉井さんは、いずれも同じことを言い続けたそうです。

「『Pocky K.O.』は、ギリギリできそうなドキドキ感がいいんですと伝えましたね。アマチュアでもプロでも、eスポーツプレイヤーの好奇心をくすぐる企画なんですと」(玉井さん)

玉井さんがブレずに企画のポイントを主張し続けた結果、みごと予算を獲得することに成功しました。

「現時点で『Pocky K.O.』は話題になっており、その点ではプロモーションの効果はあったと思います。しかし、結果も大事。実際に売上げもどのくらい影響があるか、冷静に判断したいと思っています。eスポーツがますます拡大することは間違いないでしょう。今回の件が成功したら、ほかの国でも展開し、より大きな企画をやっていきたいですね」(玉井さん)

おもしろさを追求する開発陣のプロ意識が、クオリティの高いコラボ企画に

ポッキーからコラボを提案されたカプコン。先ほどのデモ機体験でお相手いただいた松本さんは「Pocky K.O.」の企画について2つ返事で乗ったと言います。

「お話をいただいたとき、単純におもしろいと思いました。普通のコラボと違い、ゲームの仕様を変更するため、やはり現場にも負担がかかるのですが、開発メンバーの反応もよく、かなりポジティブに取り組めましたね」(松本さん)

  • カプコン ストリートファイターシリーズ プロデューサーの松本脩平さん

企画が動き出したばかりのころは、体力ゲージの見た目をポッキーに変える程度の変更でした。しかし、それだけでは「Pocky K.O.」がなかなか出なかったそう。そこで、せっかくのコラボがつまらなくなってしまうと思った開発陣が、「Pocky K.O.」よりゲージが減った場合は体力が回復するよう主体的に手を加え、その回復時間もコンマ何秒という単位で微調整を繰り返したといいます。

「最初はここまでのものを作るとは思っていませんでした。でも、私も現場も、負担よりおもしろさが上回り、プロ意識をもってやれたと思います。これだけのことをやっておきながら、プレイできるのは、CC2019の会場で、しかも3日間だけなのもおもしろいですよね。私としては、できあがったもののクオリティはもちろん、開発チームメンバーの熱意とプロ意識を改めて実感できたことにも満足しています」(松本さん)

実際に体験してみて感じたのは、驚くほどの完成度の高さ。「CHALLENGE」モードの1つとして導入してほしいと思ったほどです。

記事を読んで、自分も『Street Fighter V Pocky Edition』をプレイしたいと思う人がいるかもしれません。ですが、現時点ではCC2019会場以外の展開は考えてないそうです。限られた場所と時間でしかプレイできない刹那的なキャンペーンだからこそいいのかもしれません。

まぁ、個人的には、日本で「Pocky K.O.」を経験した数少ない者として、後々の語り草とするために、このままでいいかなとも思ったり……。

カプコンは「Red Bull」や「ユニクロ」「オニツカタイガー」など、積極的に他業種とのコラボを実施しています。もちろん、開発のタイミング次第ではありますが、今後も「Pocky K.O.」のような仕掛けをする可能性はあるでしょう。また、今回のポッキーのように、eスポーツを通じてナショナルブランドの価値を高められるものであれば、eスポーツの運営としてもやる価値はあるはずです。おもしろいプロモーションを期待せずにはいられません。

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