■スマホと音声UIの融合が加速。外国語のリアルタイム翻訳も便利に

新しいSnapdragonシリーズの特徴としては、5Gに加えて「AI性能の強化」が伝えられました。8シリーズ、7シリーズともに、CPUとDSP、GPUを組み合わせたAIプラットフォーム「Qualcomm Artificial Intelligence Engine」の最新となる第5世代エンジンが積まれています。

  • 最新のSnapdragonシリーズには、第5世代の「Qualcomm Artificial Intelligence Engine」が搭載されています

さらに、スマホをロックした状態でもユーザーの音声入力(ウェイクワード)に応答したり、声紋認証などのセンサー情報を活用するセンシング機能のハブ「Qualcomm Sensing Hub」を新たに設けています。

これが加わったことにより、現行のSnapdragon 855と比較して、スマホの待機時に消費する電力が一段と低く抑えられるほか、より多くのウェイクワードに反応できるようになります。画面ロックの状態から複数のAIアシスタントを呼び分けて使うなど、まるでスマートスピーカーのように、スマホの音声操作で実現できることが格段に増えるかもしれません。

  • 各センサーからの情報を制御してアプリケーションプロセッサと連携する「Qualcomm Sensing Hub」を新設

Snapdragon 865は、AI関連の処理を制御するHexagon 698プロセッサに新しく「Tensor Accelerator」を統合しており、現行のSnapdragon 855と比べて約4倍の能力に。消費電力の効率も35%改善されています。

  • 865と855の音声入力待機状態での消費電力を比較。865ではさらなるパフォーマンス改善が実現されています

高度なAI処理性能を獲得した次世代のSnapdragon。それを搭載する端末ができることとして紹介されたのは、音声入力による速く・正確な文字認識、外国語のリアルタイム翻訳などです。

クラウドとエッジのAIプラットフォームが5Gの高速ネットワークと結びつき、スマホがポケットサイズの携帯翻訳機になります。違う言葉を話す人々と、誰もがスムーズにコミュニケーションができる日がすぐにやってきそうな期待が高まりました。

  • Snapdragon 865の高度なAI処理能力を活かした音声入力による文字起こし、外国語の自動翻訳などにサービスの可能性が広がります

■カメラは「8K対応」が見えてきた

スマホのカメラ機能も、新しいSnapdragonシリーズによってますますリッチになりそうです。特に、Snapdragon 865が持つ画像処理エンジン「Spectra 480」の、強力なパフォーマンスに注目が集まりました。

  • Snapdragon 865シリーズの画像処理エンジン「Spectra 480」とAIエンジンが連動して、スマホのカメラがさらに強力なものになりそうです

今回の発表会でクアルコムが例示したカメラの機能はあくまで、最新のSnapdragon 865が備えるこれほどまでの高性能をアピールするためのもの。実際にスマホで実現するためには、レンズ、イメージセンサー、ソフトウェアといった総合力が必要です。

ただ、クアルコムが一例に挙げた「8K対応」は、5Gの時代が到来すれば遅くないタイミングで、スマホのカメラは8Kに向けて進化の舵を切るものと考えられます。発表会後のデモンストレーションでは、米WeVideoの「8K対応動画編集アプリ」(5Gスマホ向けのプロトタイプ)などが紹介されていました。

  • SoCは8Kの動画情報も処理できる高いパフォーマンスを備えています

スマホのカメラによる4K/HDR対応の高画質動画撮影は、Snapdragon 845からHDR10とHLGがサポートされ、現行のSnapdragon 855からはHDR10+にも対応しています。次世代フラッグシップのSnapdragon 865では、スマホでDolby Visionの4K/HDR動画を撮影できるようになります。

これはオプション機能なので、Snapdragon 865搭載の全スマホが対応するわけではなく、スマホメーカーとしてドルビーのライセンス取得が必要になるかもしれません。ただ現在のところ、Dolby VisionのHDR動画を撮影できるコンシューマー向けのカメラ機器は存在していないため、最初にこれを搭載するスマホはマニアを中心に大きな注目を厚めそうです。

  • デモンストレーションの会場では試作機による8K動画の撮影、WeVideoの8Kオンライン編集アプリが紹介されました

  • Snapdragon 865は、Dolby Visionの4K/HDR動画撮影をオプションとしてサポートできるように