米クアルコムのイベント「Snapdragon Tech Summit」にて、モバイル向けSoC「Snapdragon」の新ラインナップが発表されました。フラッググシップの「Snapdragon 865 Mobile Platform」をはじめ、明らかになった3つのSnapdragon、そのスペックを読み解きながら、2020年の第1四半期(1月~3月)ごろに登場するとみられる「最新Snapdragonを搭載する5Gスマホ」を一足早く予想してみましょう。

  • クアルコムが、最新Snapdragonシリーズの詳細な仕様をハワイで開催中のイベントで発表

Snapdragon 865 / 765 / 765Gを搭載するスマホ、ここが変わる

新しいSoCは、フラッグシップの8シリーズ「Snapdragon 865」のほか、ハイエンドクラスの7シリーズでスタンダード版となる「Snapdragon 765 」と、モバイルゲーミング端末向け「Snapdragon 765G」です。Snapdragon 765Gは、グラフィックスの処理性能が約10%ほど強化されています。

  • フラッグシップのSnapdragon 865 Mobile Platformは、現行のSnapdragon 855から全方位にパフォーマンス強化が図られています

どのSoCも、強力なマルチモード5G対応が特徴です。Snapdragon 765 / 765Gは、5GモデムICを内蔵しているのに対して、Snapdragon 865は別途モデムIC「Snapdragon X55 5G Modem-RF System」を組み合わせる構成としています。

フラッグシップのSnapdragon 865では、5Gモデムは統合されていません。その理由について、クアルコム プレジデントのChristiano Amon氏は、「アプリケーションプロセッサとモデム、どちらの性能にも妥協をしたくなかったから」と述べています。

  • イベントに集まったジャーナリストからの合同インタビューに答えるクアルコムのCristiano Amon氏

7シリーズのSnapdragon 765 / 765Gは、8シリーズと比較してアプリケーションプロセッサとモデムをスケールダウンさせることによって、統合型の5G対応プラットフォームを実現しています。5G通信の最大通信速度(理論値)は、Snapdragon 865が下り7.5Gbps・上り3Gbpsなのに対し、7シリーズは下り3.7Gbps・上り1.6Gbpsと、およそ半分程度の性能です。5Gのミリ波、Sub-6による通信幅の帯域も、7シリーズに対して8シリーズは2倍の性能を持ちます。

報道陣を集めたラウンドテーブルに出席したクアルコムのモバイル部門の責任者、Alex Katouzian氏は、次のように説明を加えました。

「どちらのシリーズも、狙ったターゲット層に対してベストパフォーマンスを提供するという意味では妥協していない。アーキテクチャを可能な限りシンプルにしながら、それぞれの仕様でベストパフォーマンスを発揮できるようになっている。

Snapdragon 865は本格的な5G時代の到来に向けて、通信とアプリケーション処理の両方でフルに性能を発揮できるフラッグシップであるべき。そう考えて、アプリケーションプロセッサとモデムの統合を避けた」(Alex Katouzian氏)

  • ラウンドテーブルに出席したAlex Katouzian氏

■4Gから5Gへの移行期にも安心して使えそう

新しいSnapdragonシリーズのSoCには、4Gから5Gへの移行期に柔軟な対応が取れるよう多彩な5Gソリューションがそろっています。同一の周波数帯域上で4Gと5Gの展開を可能にするダイナミックスペクトラムシェアリング(DSS)、帯域間キャリアアグリゲーション、グローバル5Gローミングなどです。

  • エリクソンのベースステーションとSnapdragon 865を載せたテスト端末による、5G/4Gのダイナミックスペクトラムシェアリング(DSS)のデモンストレーション

2020年には、日本でも商用の5Gサービスが各通信キャリアから提供されます。最新のSnapdragonを搭載するスマホを購入しておけば、当面の間は国内でも海外でも、高速通信サービスを安心・快適に使えると考えられます。