システムのログファイルのデータ収集プラットフォームを持つSplunkは、IT管理、セキュリティ情報イベント管理(SIEM)で大きなシェアを占める。

Splunkは9月にリブランドを行い、新たに”Data to Everything Platform"というメッセージを打ち出した。今後は、クラウドモニタリングやビジネスフローにも拡大する戦略だ。日本法人代表取締役を務める福島徹氏、セールスエンジニアリング本部 部長の瀬島一海氏に日本市場を中心に戦略を聞いた。

  • Splunk 日本法人代表取締役の福島徹氏(右)とセールスエンジニアリング本部部長の瀬島一海氏(左)

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  • Splunkの「Data to Everything Platform」の製品体系

SplunkはIT管理、セキュリテイ、DevOps、IoTなど多岐にわたるソリューションを持つが、日本におけるSplunkはセキュリティ、IT管理が主要な柱となっている。

「データを主軸としているのでさまざまな使い方ができる。だがプラットフォームはできることが多い分、訴求が難しかったりわかりにくいという点もある」と福島氏。ではどのような市場戦略を取るのか?

福島氏によると、幅と深さの両方で進めるようだ。深さでは、「SIEM分野での利用が多く、まずはしっかり使い倒してもらいたい。Splunkもそれを支援したい」と福島氏、幅の部分では「セキュリティで使っていると8割ぐらいのデータをIT運用でも使うことができる。使い方を理解していただければ、そのまま横展開でき、使っていただける範囲が広がる」と述べる。日本の顧客には製造業が多く、あまり知られていないIoT分野でも活用が広がると期待を見せた。顧客が多く使ってもらうことでROIが改善し、Splunkにとってはハッピーな顧客が増えることにつながる。

Splunkは製品の拡大戦略を進めている。10月の年次イベント「Splunk .conf19」では、5月に正式提供を開始したプロセス管理のSplunk Business Flowを紹介した。Business Flowはデータの管理や分析をビジネスプロセスに応用し、ビジネスのオペレーションを把握することができるものだ。BPM(ビジネスプロセスマネジメント)と似ていることから、「製造業の顧客に訴求できそうだ」と福島氏はみる。”Splunk Next”構想として2018年のイベントで発表された際に、使ってみたいという声はもらっていたと続ける。

Splunkは顧客の声を受けた製品開発を進めており、Business Flowはその一環という。この他にも、複数の国でSplunkを使っておりグローバルで検索をかけたい、ストリーミングプロセッサで様々な処理をやりたいなどの要望があり、製品化を進めてきたとのことだ。

Splunk .cof19ではこのような既存顧客の要望に応えるだけでなく、AR(Splunk AR)やモバイル(Splunk Mobile)もデモし、どこからでもデータにアクセスしたり、使いやすく表示するという新しい世界も見せた。

SplunkはData to Everything Platform実現にあたって価格体系も見直し、「Predictive」「Infrastructure-Based」「Rapid Adoption Packages」を発表した。それまでは1日にSplunkサーバに取り込む(インジェスチョン)データ量での課金だったが、これがSplunkは高価という声にもつながっていた。

「Predictiveは層になっており、将来どのぐらいデータ量が増える見通せないという懸念を払拭できる」と福島氏、2つ目のInfrastructure-Basedは実際の構成に基づいた課金で、通常のソフトウェア課金に近いことからこれまでのインジェスチョンでの課金に抵抗がある顧客に親和性を持ってもらえるのでは、とした。3つ目のRapid AdoptionはIT、セキュリティのよくあるユースケース向けに設計されており、規模が小さい企業や組織にアクセスしやすくすることを狙ったものだ。

日本市場の特徴はパートナー戦略。現在、日本のパートナーは約30社あるが、Splunk自らが顧客とのハイタッチ営業、最終的な商流はパートナーというやり方で進めている。

パッケージアプリケーションとは違うことから、訴求にあたっては「製品力ありき。それに加えてエコシステムが重要」(福島氏)。エコシステムは、パートナーだけでなく、業界内のソフトウェアとの連携、そしてユーザーコミュニティが主な柱だ。なお、日本のSplunkのユーザーコミュニティGo Japan Splunk User Group(GOJAS)は世界で最も活発と言われている。

.coof19では300以上のブレークアウトセッションがあり、その多くがユーザーが自分たちの使い方を紹介して学び合う内容となった。日本からも、サイバー犯罪のモニタリングで導入しているジャパンネット銀行、それにNTTコミュニケーションズがセッションを開き、終了後も別のユーザーからの質問が相次いだという。

そのようなユーザーコミュニティを大事にし、ユーザーの声を製品戦略に反映させることは、競合に対する差別化にもなっていると福島氏は分析した。