ソニーは、ウォークマンZXシリーズの新モデル「NW-ZX500」を11月2日に発売する。価格はオープン。店頭価格(税別)は、内蔵メモリ64GBの「NW-ZX507」が8万円前後を見込む。

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    ソニー「NW-ZX507」(64GB)

ZX300の後継機で、4.4mmバランス出力を備え、銅切削ブロックや強化されたアナログ電源など、音にこだわったハードウェア設計を採用した。カラーはブラックとシルバーの2色。

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    左からブラック、シルバーの2色

ソニーのAndroidウォークマン「NW-ZX2」(2015年発売)以来となるAndroid OSの採用により、音楽ストリーミングサービスのアプリが利用可能になった。SpotifyやAmazon Music、Youtube Musicなどの音楽を再生できる。さらに、PCを使わずにダウンロード型の音楽配信サービス(mora、e-onkyo music)から、ウォークマンで直接音楽を購入してダウンロードすることも可能。

ただし、ZX500はSIMなどは備えていないため、単体ではネットワーク通信はできず、無線LAN環境が必要。また、カメラは無く、QRコードの読み込みなどは行えない。本体スピーカーも非搭載で、音楽を聴くにはイヤホンやヘッドホンが必要。以上がAndroidスマートフォンとの違いだ。

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    Android OSを採用。音楽ストリーミングサービスのアプリが利用可能になった。画面左下に、後述する標準プレーヤーアプリ「W.ミュージック」が見える。その隣のイコライザー風のアイコンは「音質設定アプリ」のものだ

端子がUSB Type-Cに変更されたのも大きな注目ポイント。ソニーの調査では「ウォークマンの不満点トップ10」の中でも「ウォークマン専用ケーブルしか使えない」点が筆頭に上がるほどだったという。今回ユーザーの声を反映して、従来のZX300まで採用されていたWM-PORTを廃し、USB-Cを採用。回路設計や音質面への影響などを考慮し、左側面に端子を配置した。

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    ZX500の左側面。USB Type-CとmicroSDカードスロットを備える

付属のケーブルで充電できるほか、アイ・オー・データ機器製の光学ドライブ“CDレコーダー”「CDレコ」(別売)をつないで、手持ちのCDをPCを使わずにウォークマンに直接取り込める。

左側面にはmicroSDカードスロットも搭載し、ストレージの増設ができる(内蔵ストレージは64GB)。右側面にはZX300と同様のハードウェアキーを備える。

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    microSDカードはトレーに載せて装着するタイプ。スマートフォンのようだが、SIMカードには対応しない

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    ZX500の右側面。ZX300と同様のハードウェアキーを備える

高音質部材・パーツを各所に採用

ZX300と同様に、本体にはアルミ削り出しシャーシを使用。また、電気回路の基準となるグランドを安定させ、「楽器が同時に音を出したときの音の安定感向上のため」に“銅のかたまり”である銅切削ブロックを本体内に配置。これにより、しっかりとした低音が出せるようになるという。

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    NW-ZX507(左)とNW-ZX300(右)を並べたところ

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    NW-ZX500シリーズには高音質部材・パーツを各所に採用した

4.4mmバランス出力用のアナログ電源系統を強化。ソニーの最高級ポータブルプレーヤー「DMP-Z1」で採用した、高分子コンデンサ「FT CAP2」を4基搭載して、音もチューニング。内部構造も改良しており、「ボーカルや楽器の伸び、透明感が向上。しまりのある力強い低音域を実現した」とする。

ステレオミニのシングルエンド出力のアナログ電源系統も強化し、アンプブロックの電源に用いる「POS-CAP」の容量をZX300比で2倍以上(47μF→100μF)にアップ。アンバランス出力の低音再生能力を向上させ、スケール感を拡大した。

  • NW-ZX500

    NW-ZX507(左)は、NW-ZX300(右)同様に、4.4mmバランス出力とステレオミニのシングルエンド出力を備える

基板へので各パーツ取り付けに新しい高音質はんだを採用。下位モデルのA100では音質に最も影響するバッテリーとの接続部にのみ使用しているが、ZX500ではヘッドホン出力やバッテリー、電気二重層キャパシタのはんだ付け部に、この高音質糸はんだを使った。金を添加することで音質を高め、その添加量は設計者が試聴を繰り返してチューニングしている。

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    NW-ZX500シリーズの内部構造。下のアルミシャーシに最も近い、黄銅色のパーツが銅切削ブロック

Android採用、ストリーミングも高音質再生

音楽再生の機能面では、フルデジタルアンプの「S-Master HX」を搭載。11.2MHzまでのDSDネイティブ再生ができる。PCMは384kHz/32bitまでサポートする。

CD音源や、MP3などの圧縮音源も、ハイレゾ相当(最大192kHz/32bit相当)にアップスケーリングして再生する「DSEE HX」には、新たに機械学習(AI技術)を導入。処理している楽曲のタイプを自動で判別し、音の広がりや奥行きの補正に加え、「高さ感」の補正性能も向上させた。これらのウォークマンの高音質化技術は、音楽ストリーミングサービスの再生時にも適用できるとする。

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    ZX500シリーズの利用イメージ(ヘッドホンは付属しない)

音楽専用機として、通常のAndroid端末とは異なるボリュームの仕組みを装備。通常のAndroid端末は“メディアの音量”(メディアボリューム)で段階的に音量が決まるが、A100ではこれとは別のMaster Volume(マスターボリューム)を用意。メディアの音量とマスターボリュームの掛け合わせで、120段階で細かく音量を調整できる。

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    Master Volumeにより、120段階で細かく音量を調整できる

また、ウォークマンの高音質機能の設定を単独アプリ化し、新たに「音質設定アプリ」として搭載。従来は、ウォークマンの中の楽曲にしか設定できなかったが、単独アプリになったことであらゆるサービス・アプリの音にウォークマンの高音質設定を適用して聴けるようにした。

本体サイズは121.8×57.3×14.8mm(縦×横×厚さ)で、ZX300よりもやや縦長になった。画面のサイズは従来の3.1型から3.6型へ大型化しつつ、解像度も800×480ドットから1,280×720ドットへと高精細化した。本体の下側面にはストラップホールを備える。

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    NW-ZX507(左)本体の下側面にはストラップホールを備える。NW-ZX300(右)にはあったWM-PORTがなくなり、丸みを帯びつつスッキリしたデザインになった

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    NW-ZX507の背面

カセットが画面で回る、ユニークな再生画面UI

標準プレーヤーアプリ(W.ミュージック)には、再生中のアルバムや楽曲のジャケットなどの代わりに、カセットテープが回っているかのようなビジュアルを表示するユニークな機能「カセットテープスクリーンセーバー」を備えている。再生画面で一定時間操作をしないでいると、カセットテープUIが現れてハブとともにテープが回る。早送りや巻き戻しも、それに準じた回転となる。

これはウォークマン登場から40周年を迎えた、2019年モデルのウォークマンを象徴する機能で、下位モデルの「A100シリーズ」にも備わっている。

表示するカセットテープの種類(見た目)は、音楽ファイルの“再生品質”によって異なり、詳細は以下の通り。また、再生楽曲の曲名やアーティスト名はテープのラベル(に相当する箇所)に表示する。

【CDクオリティ未満】

  • CHF ノーマルポジション(廉価):MP3 / AAC / WMA 128kbps以下
  • BHF ノーマルポジション(普及):MP3 / AAC / WMA 160kbps以下
  • AHF ノーマルポジション(上級):MP3 / AAC / WMA 256kbps以下
  • JHF ハイポジ(初代):MP3 / AAC / WMA 320kbps以下

【CDクオリティ】

  • UCX ハイポジ(JHFの後続):FLAC / ALAC / APE /MQA
  • UCX-S ハイポジ(UCXの上位):AIFF
  • DUAD フェリクローム(メタルテープ以前の最高級):PCM

【ハイレゾ】

  • METAL(初代メタルテープ):FLAC /MQA / ALAC / PCM / AIFF / APE
  • METAL Master(最高級メタルテープ):DSD