米AMDは10月7日、Radeon RX 5500を発表した。現時点では発表だけで、実機での性能などはこれから(そもそも評価カードなどが存在しない)ではあるが、まずは内容をご紹介したい。

7nmプロセスNAVIのメインストリームモデル

Radeon RX 5500シリーズは、恐らく開発コード名がNavi 14として知られていた製品に相当する。今回はDesktop向け以外にMobile向けのSKUも用意されており、構成はPhoto01の様になっている。ちなみに発表時の説明の中で詳細は明らかにされなかったが、間を繋ぐRadeon RX 5600シリーズも別途用意されている模様である。

  • Photo01: ダイ写真をよく見ると、CUが24個存在している様に見受けられる。恐らくNAVI 14は24CU構成であり、Radeon RX 5500シリーズは22CU構成に落としてリリースしていると考えられる。

定格の動作周波数ははっきりしないが、Desktop向けの方はGame Clockは1717MHz、Boost Clockは1845MHzに設定されており、概ねRadeon RX 5700シリーズとそう変わらない動作周波数であると言える。

メモリバスは128bitで、メモリ容量はMobile向けのRadeon RX 5500Mは4GBのみであるが、Desktop向けのRadeon RX 5500は"Up to 8GB"という表現になっており、恐らく実際の製品SKUでは4GB版と8GB版が入り乱れる事になると思われる。なお構成表には記載されていないが、TDPは150Wと説明されている。また最大で5つのDisplay出力が可能である。

このNAVI 14は7nmプロセスで製造される。ダイサイズは158mm^2で、Radeon RX 480と比べて20%の性能改善と27%の消費電力改善が可能になった、としている(Photo02)。数字の正確さには若干の疑問はつくが、Polaris 10ベースで36CU(ただしBase 1.12GHz/Boost 1.266GHz)のRadeon RX 480よりも効率が改善しているのはまぁ間違いないところであろう。

  • Photo02: ただ脚注を読むと、Radeon RX 480 8GBはCore i7-5960Xで、Radeon RX 5500(4GB)はRyzen 7 3800Xでそれぞれ試したとなっている。恐らくRadeon RX 480の方は以前のテスト結果を持ってきた(Windows 10のバージョンも14393とかになっている)事と思われるので、同じ環境だと多少数字に変動がありそうではある。あと、メモリ容量はせめて同一にしてほしかった。

  • Photo03: そういう意味では、NAVI 14は普通にNAVI 10のCut Down版ということになる。

ちなみにCU(Compute Unit)数とかメモリのバス幅などを除くと、主要な特徴はNAVI 10ベースのRadeon RX 5700シリーズと共通であり、RDNAベースでPCIe Gen4をサポート。Radeon Media EngineやRadeon Display Engineを搭載している。

性能をGeForce GTX 1650と比較して公開

さて、気になる性能であるがAMDはRadeon RX 480及びGeForce GTX 1650と比較してのベンチマーク結果を出しており(Photo04・05)、GeForce GTX 1650と比べて十分競争力があるとしている。

  • Photo04: こちらは全て共通構成。Ryzen 5 3600Xベースのマシン上で行っており、解像度はおそらくFull HD、描画オプションはいずれもDirectX11, Mediumになっている。

  • Photo05: 環境はPhoto04と同じで、なぜか何れもDirectX 11での比較である。ただ描画品質はHigh~Ultraになっている。恐らく解像度はFull HD。

これはMobile向けのRadeon RX 5500Mも同じで、GeForce GTX 1650Mと比較すると主要なゲームで60fpsを、eSports向けタイトルでは90fpsを確保できるとしている(Photo06)。

  • Photo06: こちらはRyzen 7 3750Hベースのマシンでの比較。解像度はやはりFull HDの様だが、描画品質はDX11/DX12でMedium~Ultraまでタイトルごとにかなり入り混じっている。

またFidelityFXやFreeSync2、Radeon Anti-RagなどRadeon RX 5700シリーズ発表時に登場した新技術もそのまま利用できるとする(Photo07~09)。ちなみにDesktop版のRadeon RX 5500を購入した場合、Borderlands 3かGhostRecon Breakpointのどちらかが貰える模様だ(Photo10)。

  • Photo07: GhostRecon Breakpointでの効果。

  • Photo08: Borderlands 3ではレスポンスが23msまで短縮可能とする。

  • Photo09: まぁこれはFreeSync2対応モニターと組み合わせると、FreeSync2が利用できるというだけの話。

  • Photo10: もらえると言ってもメディアが貰えるわけではなくDonwload Keyが提供されるという話だとは思うが、後述の話と絡めて、どういう形で提供されるのかはまだ不明。

Radeon RX 5500はいつ発売? 価格は?

さてDesktop版のRadeon RX 5500であるが、例えばPhoto01でMemory Clockが示されていないとか、ここまで価格が出てこないというのには訳があり、今回AMDからReference版のカードは発売されない事になったそうだ。パートナー7社からRadeon RX 5500ベースの製品が投入される事になるが、そうなると例えばメモリ量とかメモリのスピード、あるいはBase/Boost Clockなどは当然メーカー毎に細かくチューニング(というか、まぁOverClockであるが)されることになるので、確定的な数字が(価格を含めて)出せないということらしい。そんなわけで登場時期も2019年第4四半期中(要するに今から年末までの間)、という極めて緩い範囲とされている。まぁそうは言っても恐らくどこかのタイミングで一斉に製品投入が始まるとは思うのだが、現時点でそれがいつか、ははっきりしない。

  • Photo11: 現在Radeon RX 5700ベースの製品をリリースしているメーカーはいずれもRadeon RX 5500を投入することにした模様。

なお、Photo12~Photo13は、参考までにAMDのReferenceカードの写真である。OEMの中には、最初の製品はこれに近いものを出してくるところもあると思われる。Photo14はAMD提供の、ダイというかパッケージ写真である。

  • Photo12: RADEON R9 Nanoを思わせる寸法。

  • Photo13: ReferenceはHDMI×1、DisplayPort×3の構成。ただOEMの中には5画面出力を用意するところもあるだろう。

  • Photo14: Photo02でダイサイズが158mm^2とされているので、ダイ寸法は概ね14mm×11.3mmといったあたりと推定される。

ちなみにAMDはRadeon RX 5500を1080p(つまりFull HD)のGaming Platform向けと位置付けている。今年6月に、GeForce GTX 16シリーズ3製品のレビューをお届けしたが、ターゲットはまさにこのレビューで行ったような感じになるかと思う。この時はRadeon RX 570を対抗馬として用意しており、結果で言えば「Radeon RX 570は大体GeForce GTX 1650と同程度の性能でしかも少し安いけど、消費電力多すぎで爆熱」というものだった。

恐らくはRadeon RX 5500はこの爆熱が多少解消されることが期待できる。というのは、Radeon RX 480やRadeon RX 570もやはりボードTDPは150Wだったからで、Photo02の説明によれば消費電力が3割近く落ちる事を考えると、実際の消費電力は120W程度に抑えられるのではないかと期待できる。性能的には(Photo04,05を信じるなら)GeForce GTX 1650を上回っており、性能・消費電力共にGeForce GTX 1660(無印)と大体同等になりそうな雰囲気だ。

あとは実売価格がどのあたりに入るかで、これがGeForce GTX 1650と同レンジであればかなりお買い得感というか満足度が高い製品になりそうな気はする。という訳で、OEM各社からの製品出荷アナウンスを待ちたいところである。