ハイエンドのRyzen 9 3900X及びメインストリームトップのRyzen 7 3700Xの性能はこちらでご紹介した通りだが、エントリー向けのRyzen 3 3200Gやメインストリーム向けのRyzen 5 3400G/3600/3600Xも評価する機会が得られたので、簡単にレポートしたいと思う。

>>参考記事【CPU編】
「Ryzen 9 3900X」と「Ryzen 7 3700X」を試す - 第3世代Ryzen+NAVI徹底攻略
https://news.mynavi.jp/article/20190707-854576/
>>参考記事【GPU編】
「Radeon RX5700」と「Radeon RX5700XT」を試す - 第3世代Ryzen+NAVI徹底攻略
https://news.mynavi.jp/article/20190707-855531/
>>参考記事【Deep Dive編】
Ryzen Deep Dive! 「Zen2」の内部構造を分析する - 第3世代Ryzen+NAVI徹底攻略
https://news.mynavi.jp/article/20190808-874103/

◆評価製品

7月22日のリリースにもあるように、AMDはハイエンドのRyzen 9 3900とメインストリーム向けRyzen 7 3700X/3800Xに加え、メインストリーム中核向けのRyzen 5 3600/3600X、それと12nmプロセスで製造されたエントリー向けのRyzen 3 3200G/Ryzen 5 3400Gを発表した。今回はこの4製品がターゲットである。

表1にこの4製品の簡単なスペックをまとめてみたが、「基本的には」従来の同等製品(例えばRyzen 5 2600とRyzen 5 3600)と同等の価格で、より高い性能という事になっている。

■表1
Ryzen 3 3200G Ryzen 5 3400G Ryzen 5 3600 Ryzen 5 3600X
コア/スレッド数 4/4 4/8 6/12 6/12
動作周波数 (定格/最大) 3.6GHz/ 4.0GHz 3.7GHz/ 4.2GHz 3.6GHz/ 4.2GHz 3.8GHz/ 4.4GHz
L2+L3容量 6MB 6MB 35MB 35MB
対応メモリ DDR4-2933 DDR4-2933 DDR4-3200 DDR4-3200
GPU CU数 8 11 N/A N/A
GPU 最大動作周波数 1.25GHz 1.4GHz N/A N/A
製造プロセス Globalfoundries 12nm Globalfoundries 12nm TSMC 7nm TSMC 7nm
TDP 65W 65W 65W 95W
価格(USD) $99 $149 $199 $249
価格(JPY) 11,800円 18,800円 23,980円 29,800円

「基本的には」というのは、実売価格で見れば多少のずれが生じるためだ。例えば今例に取ったRyzen 5 2600は7月の時点で既に平均価格が20,000円ほどに落ちており、Ryzen 5 3600の23,980円という推奨小売価格とややかけ離れている訳で、このあたりの差があるのはどうしようもない。そんなわけで、実売価格ベースで言えばまだ第3世代Ryzenは全体的に割高にはなっているが、逆にこれは時間経過と共に差が無くなってゆくと思われるので、今回はあくまでも発売時の推奨小売価格ベースでの比較とさせていただく。

さて、実際のパッケージである。Ryzen 5 3600XとRyzen 5 3400Gは、同梱しているクーラーがWraith SPIREということで箱もちょっと大きめである(Photo01,02)。一方Ryzen 5 3600/Ryzen 3 3200GはクーラーとしてWraith STEALTH同梱のため、一回り小さい箱になっている(Photo03,04)。パッケージはSocket AM4準拠ということで、ヒートスプレッダ表面の印刷が唯一の違いということになる(Photo05~08)。CPU-Zでの表記(Photo09~16)も、特におかしな部分は見当たらなかった。

  • Photo01: 上面はほぼ正方形に近い。昔のRyzen 7 2700などと同じ大きさである。

  • Photo02: 内容はCPUとシール、クーラーと取扱説明書のみ。

  • Photo03: 正面から見た大きさは同じだが、奥行きが半分位に減っている。Ryzen 5 3600は何気にPCIe Gen4対応をアピールしている。

  • Photo04: 内容物は同じで、クーラーが背の低いWraith SPIREになっているのが唯一の違い。ただTDP 65Wだとこれで十分冷える。

  • Photo05: Ryzen 3 3200G。他の製品に比べると、ちょっと印刷が薄い気がする。

  • Photo06: Ryzen 5 3200G。Ryzen 3 3200Gもそうだが、"(c) 2016 AMD"なのは、実は12nmではなく14nmでの製造なのだろうか?(AMDは公式には12nm FinFETプロセスで製造としている)。

  • Photo07: Ryzen 5 3600。実は7nm世代は、左下の三角形の大きさがかなり小さくなったのが差異の一つとなっている。

  • Photo08: Ryzen 5 3600G。Diffused in USAとDiffused in Taiwanが並んでいるのは、CPU ChipletがTSMC(=Taiwan)、I/O ChipletがGlobalfoundries(=USA)という事であろう。

  • Photo09: Ryzen 3 3200G。Ryzen 3 2200Gの表記と比較すると、Model/Steppingが異なっており、14nmそのままという訳ではないようだが。

  • Photo10: Cacheの構成も特におかしな部分は無し。

  • Photo11: Ryzen 5 3400G。Ryzen 5 2400GとはやはりSteppingが異なっている。ところでCore Voltageが大きすぎないだろうか?

  • Photo12: これだけみるとRyzen 3 3200Gと違いが無い。

  • Photo13: Ryzen 5 3600。SteppingやRevisionは、以前テストで利用したRyzen 9 3900XとかRyzen 7 3700Xと同じ。

  • Photo14: このグレードで16MB×2のL3はやはり巨大である。

  • Photo15: Ryzen 5 3600X。Max TDPが95Wになっているのが判る。

  • Photo16: キャッシュ構成は当然Ryzen 5 3600と同じ。

さて評価であるが、比較対象としてはRyzen 5 2400G及びRyzen 5 2600Xを用意。マザーボードは(筆者私物の)ASUS TUF B450M-PLUS Gamingを利用した。これは元々(これも私物の)Ryzen 5 2400G用に購入したものだが、一応今年3月にリリースされたBIOS 1003で第3世代Ryzenへの対応を果たしており、6月リリースのBIOS 1607で互換性が向上したとしている(現在は7月末リリースのBIOS 1804が最新)。今回はこれを利用してテストを行った。

またビデオに関しては、メインストリーム向けということもありRadeon RX 5700(無印)を利用したが、GPU統合のRyzen 3 3200GとRyzen 5 2400G/3400Gは統合グラフィックでの性能も確認している。

メモリモジュールはCrucialのDDR4-3200 16GB×2だが、Ryzen 5 2400G/2600XはDDR4-2666として、Ryzen 3 3200G/Ryzen 5 3400GはDDR4-2933としてそれぞれ利用した。Ryzen 5 2400G/2600XはそもそもDDR4-3200だと起動せず(恐らく電圧を上げれば動作しただろうと思われる)、Ryzen 3 3200G/Ryzen 5 3400Gは一応起動するものの、高負荷が掛かった状態(例えばSandraのProcessor Arithmetic Test)でリブートするという現象に見舞われたためだ。いずれも定格動作にするとちゃんと完走したので、今回は定格にあわせての比較とした。

その他の環境は表2に示す通りである。

■表2
CPU Ryzen 5 2400G
Ryzen 5 2600X
Ryzen 3 3200G
Ryzen 5 3400G
Ryzen 5 3600
Ryzen 5 3600X
M/B ASUS TUF B450M-PLUS GAMING
BIOS Version 1607
Memory Micron 16ATF2G64AZ-3GE21 DDR4-3200 16GB×2
DDR4-2666 CL18 DDR4-2933 CL20 DDR4-3200 CL21
Video RADEON RX 5700/統合GPU
Driver Radeon Software Adrenaline 2019.7.5
Storage Intel SSD 660p 512GB(M.2/PCIe 3.0 x4) (Boot)
WD WD20EARS 2TB(SATA 3.0)(Data)
OS Windows 10 Pro 日本語版 Version 1903 Build 18362.175

なお、以下のグラフでの表記は

R5 2400G Ryzen 5 2400G+Radeon RX 5700
R5 2400G(APU) Ryzen 5 2400G(内蔵GPU利用)
R5 2600X Ryzen 5 2600X+Radeon RX 5700
R3 3200G Ryzen 3 3200G+Radeon RX 5700
R3 3200G(APU) Ryzen 3 3200G(内蔵GPU利用)
R5 3400G Ryzen 5 3400G+Radeon RX 5700
R5 3400G(APU) Ryzen 5 3400G(内蔵GPU利用)
R5 3600 Ryzen 5 3600+Radeon RX 5700
R5 3600X Ryzen 5 3600X+Radeon RX 5700

となっている。

また本文中では解像度の表記として

720P:1280×720pixel
1.5K:1600×900pixel
2K:1920×1080pixel(Full HD)
2.5K:2560×1440pixel(WQHD)

を利用している。