UWBとは「Ultra Wide Band」の略で、超広帯域無線通信を意味します。数百MHzから数GHzという非常に広い周波数帯域を使用し、障害物による影響が少ないことが特徴です。1960年代から軍事用として研究が進められ、レーダーなどの機器に応用されてきましたが、民生利用の開始は米国連邦通信委員会(FCC)の認可が降りる2002年を待つことになります。
FCCでは、UWBを10dB比帯域幅が中心周波数の20%以上のもの、または500MHz以上の帯域幅を使用する無線通信と定義したうえで、その用途を「イメージング」と「車両用レーダー」、「通信/測定システム」という3つのカテゴリに分類しています。スマートフォンなどデジタル機器に関係するのは「通信/測定システム」で、信号の密度を高めることにより近距離における高速ワイヤレス通信を実現します。
近距離高速ワイヤレス通信を目的としたUWBは、2000年代半ばにIEEE802.15.3aやWireless USBで標準規格化が計られました。10mで100Mbps以上の性能を必須条件として規格化が進められましたが、対象の電波帯が広く各国の電波割り当てを考慮した互換性の確立が難しいこともあり、作業は難航しました。結果として製品への採用は進まず、2019年現在UWB対応製品はごくわずかです。
しかし、近距離であれば高精度な測距・測位が可能というUWBの特長に注目し、近年では屋内位置情報サービスに活用しようという動きがあります。2000年代に注目されたときは、USBとHDMIをワイヤレスで代替する技術という位置付けでしたが、100~200メートルほどの距離でセンチメートル単位の測位精度を実現できることが注目されています。
実際、9月10日(米国時間)に発表された「iPhone 11(Pro/Pro Max)」は、UWBをサポートしています。スペックシートにも「空間認識に対応した超広帯域チップ(Ultla Wideband Chip for spatiacl awareness)」として紹介され、屋内での測位/位置情報サービスに活用されるものと考えられます。