思いっきり楽しんだ写真甲子園3日間の成果

そして、運命のファイナルステージを迎えます。「ここまで来たら自分たちのスタイルを貫き通すしかない」と、富岡実業高校のメンバーは腹を決めました。得意のカラーで、自分たちを被写体に作品を撮る。残されたわずかな時間を新作の撮影に費やしました。

  • 青、黄色、赤の“信号カラー”ポンチョで撮影に臨む群馬県立富岡実業高校の選手たち

ファイナル公開審査会でも、自分たちのカラーを生かした作品を提出した富岡実業高校メンバー。作品がスクリーンに映し出されると、会場からはどよめきが起こります。

  • 富岡実業高校のファイナルステージ作品『1日の冒険』

講評を担当した北海道新聞社写真部次長・野勢英樹氏からは「スタイルを貫き通した姿勢は高く評価する。しかも、北海道の大自然を入れつつ、自分たちを被写体に良い作品に仕上げたと思う」。立木氏も「3日間、シンプルにカラフルな世界を表現した。彼女たちが実際に汗をかいて撮影したものが写真に出ている。初日から右肩上がりで、作品を原色にしたのも良かった。ただ、自分たちが写っていない写真も見たかった」と講評しました。

  • 立木義浩審査委員長

自分たちの撮りたいものを撮る、というスタイルを貫き通した富岡実業高校。結果は敢闘賞(実質順位は11位)でしたが、彼女たちに涙はなく、清々しい笑顔を見せてくれました。キャプテンの宮下さんは「毎日楽しく、みんなで撮影が楽しめた3日間でした」。三ツ木さんは「早起きなど大変なことも多かったけど、写真甲子園を楽しむことができたと思います」。石井さんは「正直、大変そうだし行くのをためらっていたんですが、来てみると充実していて楽しい時間を過ごすことができ、また来たいと思いました」。

作品のスタイルに関しては「講評でキツいことを言われだけど、こういう写真を撮りたかったので、何を言われても変えるつもりはありませんでした。やりたいことができたので、賞はいただけませんでしたが満足です」(宮下さん)。彼女たちには、やり切った達成感にあふれていました。布目監督も「彼女たちがやりたいと思っていたイメージ通りにできたので、今回はこれでいいと思っています。ファイナルステージの作品も、自分たちが納得して楽しんだのなら、僕はそれで良かったと思います」とメンバーをねぎらっていました。

  • 表彰式後の懇親会にて。富岡実業高校のメンバーに涙はなかった

表彰式後の囲み取材で、立木義浩審査委員長は富岡実業高校の作品にも触れ、「(ファイナルステージの作品は)その前の2日間があって、ここにたどり着いた感じがする。ファースト、セカンドの作品は少し苦笑いするような作品だったが、彼女たちは自信満々だった。そこが鼻につく感じがした。モノクロも悪くはなかったけど、やっぱりファイナルのカラー作品は三原色の色で撮影したのもいいし、控えめながらテクニカルな部分も出して8枚をまとめているのも好感が持てた。この(ファイナルステージの作品の)ために2日間があったというのは素晴らしい」とコメント。

自分たちのスタイルを変えなかったことに関しては、「ブレないという言葉をよく使うが、僕はブレてもいいし、ブレなくてもどっちでもいいと思っている。とかくブレないことを評価しがちだが、我々は良い写真を見たいだけ。セカンドステージまでだけなら、単にブレなかったというところだけが評価されただろうけど、ファイナルステージの作品があったからこそ、作品として評価することができた」と立木氏はファイナルステージの作品を高く評価していました。

こうして、群馬県立富岡実業高校の初舞台は幕を閉じました。もちろん、今回の結果は満足できるものではなかったかもしれません。でも、「自分たちが撮りたいものしか撮りたくない」という強いメンタルは、必ず今後の人生に生きてくるに違いありません。彼女たちは、まだ2年生と1年生のチーム。今回の写真甲子園出場の経験を活かし、来年また一段とレベルアップした姿で東川町に戻ってくることを期待したいと思います。

  • 敢闘賞を手にした富岡実業高校。初の大舞台で自分たちのやりたいことを表現できた満足感は、今後の生き方にもつながるはず