スマートフォンのカメラは高性能化が進んでいますが、「もっとワイドに撮りたい」「インスタ映えするような撮影がしたい」というニーズもあります。多くの人が使っているのが、スマホカメラに装着するタイプのアタッチメントレンズ。ただ、クリップのようにスマホに挟み込むタイプの製品は、レンズの脱着が面倒だったり、レンズの位置を正確に合わせないときれいに撮れない、といった欠点があります。

そこで話題になっているのが、複数のレンズを手軽に付け替えて撮影できるiPhoneケース「ShiftCam 2.0」(日本での代理店はグレイスリンクス・エンタープライズ)。便利さや描写性能はどれほどのものか、試してみました。

  • iPhoneシリーズのケースを兼ねた「ShiftCam 2.0」。iPhone XS用やiPhone XS Max用など、各種iPhone用が用意されている。実売価格は、iPhone XS用が税込み9,800円前後

レンズの脱着や位置合わせが必要ない

ShiftCamは、iPhoneシリーズに装着するケースの背面に、6種類のレンズを搭載しているのが特徴。このレンズはレールに組み込まれており、左右にスライドさせるだけでスマートにチェンジできます。わずらわしいレンズの脱着や細かな位置合わせが不要なところが、ShiftCamが画期的な点といえます。オプションで、より高品位の大型レンズを装着できるのも特徴で、写真にこだわるユーザーも満足できます。

6つのレンズは、上段の広角カメラ側が「120度広角レンズ」「180度魚眼レンズ」「10倍マクロレンズ」の3種類。下段の望遠カメラが「2倍望遠レンズ」「2倍望遠レンズ」「20倍マクロレンズ」という仕様です(いずれもiPhone X用の場合)。広角カメラと望遠カメラはカメラアプリ側で自動あるいは手動で切り替えられ、さまざまな焦点距離で撮影できます。

  • iPhone X用のShiftCam 2.0。iPhone Xの広角レンズと望遠レンズ用に、それぞれ3種類のレンズが搭載されている。望遠カメラ側の「2倍望遠レンズ」は2箇所に装着されている

実際にiPhoneを手に街を歩いてみましたが、これは!という被写体を発見したら、プレートをカチカチとスライドさせて好みの画角に合うレンズをセットし、即座に撮影できるのが好ましいと感じました。現在一般的に使われているクリップ式の挟み込みレンズにありがちな装着や位置合わせの手間がなく、シャッターチャンスを逃さずに済みます。

ShiftCamは、全部で5つの焦点距離で撮影できますが、特に有効だと感じたのは「180度魚眼レンズ」と「10倍マクロレンズ」です。ノーマルのiPhoneでは決してできない表現が可能で、狭い室内や広大な風景、昆虫など小さな被写体のクローズアップ、ネイルなどの近接撮影で威力を発揮しそうだと感じました。これらの特徴あるレンズ群がサッと切り替えて使えるのが大きな魅力です。

  • 標準搭載の「10倍マクロレンズ」で、懐かしいアメリカのカメラ通販カタログを撮影しました。印刷の細かさや紙の質感まで、しっかりと描写してくれます

  • 標準搭載の「20倍マクロレンズ」で、公園にあった水道の蛇口からほとばしる水にグッと寄ってみました。さまざまな不純物や気泡が混じっているのが確認できるほど、しっかりした写りでした

  • 渋谷の路地を、標準搭載の「180度魚眼レンズ」で撮影。さすがに周辺部は描写が流れますが、迫力あるワイド感で雰囲気を写せました

  • 標準搭載の「120度広角レンズ」で寺社を逆光気味に撮ったカット。シャドウ部のディテールもしっかりとしており、周辺部の描写もなかなか。誇張されすぎない広角感も良好だと感じます

  • 標準搭載の「2倍望遠レンズ」で千社札を狙いました。iPhone Xよりやや長めの印象の焦点距離ですが、画面中心部のシャープさはお見事。撮影距離によっては湾曲収差が目立つ場合もありました

  • 標準搭載の10倍マクロレンズの写りは圧巻。花壇に咲いていたパンジーを接写しましたが、中央部分の精細な写りには驚きました。iPhone単体では不可能なショットですね

描写性能の高い大口径レンズもオプションで用意

ガラス製の大口径レンズエレメントを採用した別売の「プロレンズ」群に付け替えて撮影できる点も注目できます。プロレンズは「広角レンズ」「望遠レンズ」「望遠マクロレンズ」「マクロレンズ」「魚眼レンズ」の5種類をラインアップしています。このレンズは脱着が必要となりますが、標準装備のプレートと同じくスライドするだけでセットできるので、位置合わせの手間はかかりません。より高い描写性を求めたいシーンでは、こちらを使用すると満足感の高い写真を手にできるはずです。

  • オプションで用意する高性能レンズ「プロレンズ」シリーズ。5種類を用意しており、実売価格はそれぞれ税込み8,800円~10,800円

  • プロレンズは、いずれもプレートと一体になっており、位置合わせの手間なく装着できる

  • 別売のプロレンズの「フィッシュアイ」で、とあるギャラリーのエントランスを撮影。広がりがあって豊かな写りです。標準搭載の「Travel Lens Set」のレンズよりも収差が少なく感じました

  • 35mm判換算で18mm相当となるプロレンズの「広角レンズ」はナチュラルな写りが気に入りました。肉眼で感じた色合いやテクスチャー感をiPhoneで再現してくれると感じます。太陽を画面に入れ込みましたが、イヤな光芒もごくわずかでした

  • 60mm相当となるプロレンズの「望遠レンズ」の解像感はなかなかのもの。硬くなりすぎず品があり、立体感もあふれる写りとなりました。花びらが浮き立つような表現になりました

  • 75mm相当で接写できるプロレンズの「マクロレンズ」の写りは圧巻。レンズ前すぐにピントが来るので、しっかりとしたホールドが求められますが、このようにゲートのヒンジの質感を見事に捉えてくれました。Proレンズは表現力がワンランク上だ、と感じさせます。クイックなレンズ交換が楽しめるShiftCamですが、このようにオプションレンズで手軽に拡張できるところもいいですね