ソニーから“ひとひねり”加えた面白いウェアラブルデバイスが登場します。インナーウェアに装着して首もとを冷やしたり、温めたり。スマホと連動するポータブルタイプの冷温パック。その名も「REON POCKET(レオンポケット)」です。

ソニーのクラウドファンディングサービスで支援者を募集

  • REON POCKET(レオンポケット)

    ソニーが開発したポータブルタイプの冷温パック「REON POCKET(レオンポケット)」。クラウドファンディングによる商品化プロジェクトがスタートしました

ソニーが手がけるクラウドファンディングのプラットフォーム「First Flight」にて7月22日11時から、レオンポケットの支援プロジェクトが公開されました。商品はレオンポケットとインナーウェアをセットにしたパッケージが3種類。

インナーウェアの枚数は1枚・3枚・5枚から選べます。最も安価なレオンポケットとインナーウェア1枚のセットは、早期支援者特典価格が14,080円(税込)。インターウェアの色はホワイトとベージュ、サイズはS・M・Lから選択できます。

  • REON POCKET(レオンポケット)

    首もとを冷やしたり、温めたりするデバイスです

支援金が6,600万円を超えるか、または4,000台強の見込み受注台数を獲得した場合に、プロジェクトが成立します。そして2020年3月ごろに商品が支援者の手もとに届けられます。反対にプロジェクトが成立しなかった場合は、残念ながら商品化は見送られます。

機械を冷やす技術から生まれたウェアラブル

レオンポケットとは、エレクトロニクス機器の開発によってソニーが培ってきた熱制御、放熱、冷却技術を応用して、人間の首もとを冷やしたり、温めたりしてくれるポケットサイズのウェアラブルデバイスです。本体の質量は約85g、サイズは少し大きなマウスぐらいです。

  • REON POCKET(レオンポケット)

    iPhone Xとサイズ感を比較。少し大きめなマウスぐらい。質量は約85g

  • REON POCKET(レオンポケット)

    背面のパッドを首もとに当てて冷やしたり、温めたりします。金属プレートの外側に薄いシリコンを貼って、肌に直接当てた時にも心地よい質感が得られるように工夫しています

インナーウェアはVネックタイプの専用シャツで、背中の首もと近くに小さなポケットが用意されています。ここに電源を入れたレオンポケットを装着して使います。インナーウェアには、東レインターナショナルが開発した、吸水速乾性能に優れる極細繊維のポリエステル素材が使われています。

  • REON POCKET(レオンポケット)

    東レが開発した、ポケット付の専用インナーウェアを身に着けて装着します

  • REON POCKET(レオンポケット)

    レオンポケットを装着したイメージ。ウェアと一緒に身に着けた時に重さの負担は感じられないのかなど気になる所です

レオンポケットには向きがあり、背面側に配置されているプレートを首もとに当てて身に着けます。プレートにはペルチェ素子という、電圧をかけると発熱・吸熱(冷却)する部品が組み込まれています。プレート部分部分を冷やしたり温めたりすることで、涼しさと温かさを感じられる仕組みです。

使い方ですが、レオンポケットとスマホをBluetoothでペアリングして、iOS・Android対応のモバイルアプリから「冷たさ・温かさ」を好みの設定に調節します。使用温度は0度から45度の間で5段階に切り替え可能。レオンポケットの電源は内蔵バッテリーで、フル充電から約90分間駆動できますが、安全性に配慮して連続使用時間は30分までとしています。

確かなヒンヤリ感が持続!

  • REON POCKET(レオンポケット)

    夏は涼しく、冬は暖かい、ハイブリッドな使用感が得られるそうです

7月にソニーが開催した記者説明会で、レオンポケットの試作機に触れて“ヒンヤリ度”をチェックできました。プレートに指で触れてみると、確かに元の金属の冷たさよりも一歩踏み込んだヒンヤリ感。しかも触れている指から体温が伝わって、プレートがぬくもることがありません。ヒンヤリ感が持続します。

  • REON POCKET(レオンポケット)

    試作機で表面が冷たくなる使用感が体験できました

ペルチェ素子の特性として、冷却側の反対側は発熱します。その熱は、レオンポケット本体に内蔵したファンによる空冷システムを使って、内部にこもらないように逃がす設計です。この空冷ファンの風量を専用アプリから強くすると、レオンポケットをポータブル扇風機のようにも使えます。パフォーマンスを下げることなく冷却・発熱効果を最大化する技術は、ソニーが長年蓄積してきたエレクトロニクス機器の放熱・冷却技術の賜物です。

  • REON POCKET(レオンポケット)

    冷たさと温かさはアプリから5段階で切り替えが可能

なお、レオンポケットには「スタンダードモデル」と「ライトモデル」の2種類があります。スタンダードモデルは、上記の風量調整機能をはじめ、内蔵する加速度センサーでユーザーの状態(歩行中・立ち止まり中など)を検知して自動で適温設定にしてくれる「オートモード」、オフタイマー設定などがカスタマイズできる「マイモード」を備えています。

一方のライトモデルは、手動による温度設定のみに限定した簡易版です。ライトモデルは、スタンダードモデルよりも3,000円ほど安くなるそうです。

ビジネスパーソンの夏が涼しくなる。そして冬も暖かく

  • REON POCKET(レオンポケット)

    インナーウェアにレオンポケットを装着して、上からジャケットを着るとこのような感じに。薄手のジャケットを羽織っても、レオンポケットが目立ちません

フィットネスやヘルスケアを目的とせず、インナーウェアと連携してユーザーの首もとを冷やしたり温めたりするために、先端テクノロジーを生かした変わり種といえるウェアラブルデバイス――。このレオンポケットは、ソニーのスタートアップを創出して事業化を支援する、「Sony Startup Acceleration Program」のプラットフォームから芽を吹かせます。

  • ソニー、伊藤陽一氏

    ソフトウェアの設計を担当した伊藤陽一氏

ソフトウェア設計を担当したソニーの伊藤陽一氏は、2014年に、電子ペーパー搭載でファッション性の高いリストウォッチ「FES Watch」の開発にも携わってきました。「FES Watchの発売後、アパレル業界の皆様からソニーのテクノロジーで衣服の快適性を高めてほしいというフィードバックを数多くいただいたことから新たな模索を始めた」(伊藤陽一氏)と振り返ります。その伊藤陽一氏が2017年に、レオンポケットのハードウェア設計を担当した伊藤健二氏と出会ったことでプロジェクトが始動しました。

レオンポケットの主要ターゲットは、男性のビジネスパーソン。伊藤陽一氏は「インナーシャツにデバイスを装着して、上からジャケットなどを羽織ったときにも違和感なく見えるように本体を薄型にした」と、プロダクトデザインを固める段階で気を配ったことをアピールしていました。

  • ソニー、伊藤健二

    ハードウェアの開発をリードした伊藤健二氏

通勤時間に使った後、エアコンの効いたオフィスに到着したら、本体をインナーウェアからすぐに外せるように、インナーポケット“口部分”のサイズ調整にも腐心したそうです。伊藤陽一氏は「身に着けているユーザーの体感温度環境が過ごしやすくなれば、エアコンの温度を穏やかな値に設定する習慣ができたり、空間全体の消費エネルギーを抑えるエコライフにも貢献できるのでは」と、レオンポケットの可能性に期待を寄せます。

女性のビジネスパーソンも、レオンポケットは試せるのでしょうか。残念ながら今回のクラウドファンディングでは、女性向けにサイズを最適化した本体やインナーシャツは用意されないそうです。

レオンポケット本体は汗ぬれには配慮した設計になっているそうですが、完全防水・防滴設計ではありません。雨に直接打たれたり、スポーツシーンで多くの汗をかく場面では、使用を避けたほうがよさそう。また、レオンポケットを装着したまま、インナーウェアを洗濯機に入れてしまわないよう注意が必要です。

「クラウドファンディング開始後の反響を見ながら、将来はパートナーを募って、様々なタイプのインナーウェアを展開する可能性についても探っていきたい」(伊藤陽一氏)

一風変わった面白そうなウェアラブルデバイスのレオンポケット、「さっそく買って今年の夏から即戦力にしよう」とはいかないところが残念ですが、興味を持ったら、まずクラウドファンディングのプロジェクトを応援するところから検討してみてはいかがでしょうか。