様々な人たちとコラボレーションできる場に

米マイクロソフトのレガート氏は、The Garageのこれまでの取り組みを3つの段階に分ける。

最初の「Garage 1.0」では、「Cultual Value(文化的価値)」の創出を目指したという。マイクロソフト社内に、自由に発想してアイデアを形にする風土を定着させ、その象徴として、グローバル規模でのハッカソンを開催。社員たちが結びついたり、コミュニティを形成したりといったことを目指した。

具体的には、2014年7月に、初めて全社的なハッカソンを開催。同年10月には、社外向けサイトを開設し、Garageの取り組みを公開。開発中のテストアプリを、誰でもが試用できるようにした。

「Garage 2.0」では、「Business Value(ビジネス的価値)」を追求。アイデアをビジネスにつなげるための取り組みを進めたという。4カ所の施設で、インターンシップ制度を導入することも行われた。

そして「Garage 3.0」として、「Customer Value(顧客的価値)」を掲げ、顧客やパートナーとの連携を強化。マイクロソフト社内に留まらない連携を、ダイナミックに行っていくことを目指す。

  • The Garageから生まれた数々のアイデア

こうした取り組みのなかで、グローバル規模でのハッカソンは、The Garageをマイクロソフトに定着させるために、大きな役割を担った。

米マイクロソフトのレガート氏は、「2014年に、マイクロソフト全体が変化するなかの取り組みのひとつとして、グローバルイベントとしてハッカソンを行った。それまでは小規模のハッカソンだったが、このときには1万人以上が登録した。社員自らが、マイクロソフトの社風を変革していくことにつながっている」と振り返る。

マイクロソフトは毎年9月に、全社員を集めたカンパニーミーティングを行う。そこで各部門の責任者が戦略を発表し、今後の方向性について社員が共有する場としていたが、これを廃止。代わって、7月に「One Week」と呼ぶ全社員参加型のイベントを開催することにした。

One Weekの中心になるのが、グローバル規模で展開するハッカソンである。2018年のグローバルハッカソンには2万3,000人が参加。2019年は、これを上回る参加を見込む。

「エンジニアだけでなく、あらゆる部門の社員に参加してもらいたいと考えている。そして、顧客やパートナー、コミュニティ、大学や研究機関など、様々な人たちとコラボレーションできる場にもしていきたい」(アン・レガート氏)

  • 米マイクロソフト本社のキャンパス内にはハッカソンの参加を呼びかける告知が見られた

2019年のハッカソンは7月22日~24日に開催される予定であり、「Everyone has a Superpower」がキーワードとなっている。米マイクロソフト本社のキャンパス内にも、ハッカソンの開催と参加を呼びかける告知があちこちに見られ、全社をあげた取り組みであることが伝わってくる。

The Garageやグローバルハッカソンを通じて、すでに多くの成果が生まれている。たとえば、目が見えない人に代わって、AIが周りの状況を教えてくれる「Seeing AI」も、The Garageを通じて生まれた技術のひとつ。身体的障害が、健常者の友達と一緒にゲームができるように開発され、2018年から発売されたゲームコントローラー「Xbox Adaptive Controller」も、3年前のハッカソンから生まれたものだ。

  • ゲームコントローラー「Xbox Adaptive Controller」もハッカソンから生まれた

Garageプロジェクトは、マイクロソフトがベンチャー企業の精神を持ち続けるための役割を果たすとともに、成長を続けるための重要な取り組みのひとつだといえる。