自宅では日本語と英語の翻訳は試してみましたが、気になるのは「海外の人に使って実用的に利用できるのか?」です。今回、知人のフランス人、エチエンヌさんに協力をお願いし、実際にTL01を使いながら会話してみました。

  • フランス人のエチエンヌさん。母国語はもちろんフランス語なので「日本語←→フランス語」の翻訳を試します

日本人はだいたい中学校から英語を学んでいるので、英語なら何となく「こういうことを言っているのかな?」と想像がつきます。でもフランス語はというと、「ボンジュール」という挨拶と料理名くらいしかわからない筆者。TL01にがんばってもらわないといけません。

エチエンヌさんと待ち合わせしたカフェ、思っていたより環境音が大きくて、TL01から再生されるスピーカーからの音がよく聞こえません。公共の場でTL01のボリュームを大きくしすぎるのもよくないので、アプリの翻訳履歴をフル活用。もとの文章と翻訳文章の両方を履歴でチェックでき、誰がどの文章を話したのかもわかるように表示されます。

最初は自分が話したあと「TL01のスピーカーを相手の耳に近づける」という動きをしていましたが、途中からはお互いのスマホにリアルタイム表示される履歴を見ながら会話するようになりました。

  • TL01
  • ザワザワしたカフェだったので、最初は翻訳された文章を聞くのにお互いTL01を耳に近づけていましたが、アプリの翻訳履歴で相手の言葉をチェックすることで問題解決。翻訳履歴はほぼリアルタイムで送られてきます

写真の翻訳履歴を見ると、最初の挨拶と「何を頼みますか?」といった会話は問題なく行えているのがわかります。ただし、エチエンヌさんが「ポテトフライを添えたステーキとビール」を注文したはずが、こちらは「ビールで揚げたステーキ」に誤翻訳。これはフランス語の慣用句である「ステーキフライ(フライドポテトを添えたステーキ)」がわからなかったためだと思われます。「ステーキとポテトフライとビール」といった風に単語を分けたところ、きちんと認識してくれました。

実際に使用してみると、日本語で話してからフランス語が表示されるまで2~5秒くらいのタイムラグがある印象。

筆者「こんにちは」
(二人でアプリの画面を数秒じっと見つめる)
TL01「"こんにちは"」

といった会話になりがちですが、どの翻訳機も似たようなもの。意志を疎通できる点こそ重要なんです。会話中に意外と問題になったのは、長文と固有名詞、慣用句などが入った文章です。

ただこれも、できるだけ簡潔な文章で会話することで翻訳精度がアップします。たとえば「今日はありがとうございます、ところでメニューは何を頼みますか?」といった会話なら、「今日はありがとう」「メニューは何を頼みますか?」のように短く、簡潔な文章を使うのがコツ。

また、人の名前や、ちょっとマイナーな地名などが入ると、似たような単語を無理に当てはめて誤訳しやすい傾向があり、アクセントも認識していないようです。フランス語は語尾の発音を上げると疑問形になるようですが、疑問形の文章を普通の断定系で翻訳し、文章から内容を推測するケースもありました。

これはTL01というより、翻訳エンジン(Microsoft Azure Cognitive Services)の問題でしょう。翻訳エンジンは成長するそうですから、いずれもっと高精度になることに期待です。

  • TL01

    「みゆきさんは元気ですか?」と質問したところ「人気さんは元気ですか?」に。人名やマイナーな地名などの固有名詞を入れると誤訳しやすい傾向

余談(?)ですが、「日本で暮らしていて必要になりそうなコメントをお願いします」とエチエンヌさんにお願いしたところ……。「そこの通りで襲われたんだけど警察署はどこ!?」という文章をチョイス。

日本はそこまで物騒ではないと思うよ!

この文章、「警察署の前で襲われた」と誤訳される結果に。こちらは「通りで襲われた!」「警察署はどこ?」と、文章を分けることで正しい内容になりました。

  • マイクに向かって話すエチエンヌさん

  • TL01

    「警察署はどこ?」と聞く内容のはずが「警察署の前で襲われた」ことに。一方で、「頭痛と吐き気がある」「アスピリンにアレルギーがあります」など、医者とのやりとりを想定した会話はうまく翻訳していました

最近はGoogle翻訳など、精度の高いスマホの翻訳アプリもありますが、「スマホを取り出してロック解除してアプリを起動」と、翻訳にたどりつくまでに手間がかかります。一方、TL01は電源を入れればすぐに使えて、軽量コンパクトな本体は旅行中にサッと出しやすいというメリットがあります。スマホのバッテリー温存にもなるでしょう。

また「ボタンを押してしゃべる」だけというTL01のシンプルな操作性は、スマホの操作などが苦手な人にはかなり魅力的だと思います。そして「スマホで相手に地図を見せながら、現地の人に行きたい場所を聞く」というように、スマホを使いながら同時に翻訳ができるのも大きなメリットです。

ポータブル翻訳機には「スマホのほかにもう1台デバイスが増える」というデメリットもあります。このあたりは自分が翻訳機を利用するシチュエーションを想像して、どちらが便利か判断してください。ポータブル翻訳機を利用したいユーザーにとっては、TL01は翻訳精度もそれなりに高く、持ち歩きやすく、ユーザーインタフェースも使いやすいと感じました。なんといっても双方向翻訳ながら1万円以下と、非常にコストパフォーマンスが高いので、ポータブル翻訳機を試してみたいという人にもおすすめです。