言葉と文字の違いは大きい。ノリや雰囲気で気軽に吐くこともある言葉とは異なり、文書には記録するという大事な要素が加わる。ましてや、印刷されるものは手軽に訂正することもできない。表示する事実が正確かどうか?矛盾が無いか?法律上問題がないか?などなど、調べなければならない項目は多岐にわたる。場合によっては回収やラベルの貼り替えなどのコストも生じてしまう。想像以上に大変な業務だ。
大日本印刷(DNP)は27日、印刷物制作の際に表示義務がある事項や成分内容などが正しく表示されているかをチェックする校正や校閲業務にAIを活用する取り組みを強化していくことを発表、企業ごとに最適化したSaaS(Software as a Service)型のサービス開発を行い、校正や校閲の業務軽減を目指す。
同社が取り組むシステムは、商品パッケージ上で認識した文字や画像情報と原稿情報をAIで照合し、アラートさせるもので、アサヒビール、キリンビール、キリンビバレッジ、小林製薬、サントリーコミュニケーションズ、日清食品ホールディングス、バンダイ、明治、ユニ・チャーム、ライオン、ロッテなど製品を消費者に送り出すメーカー各社(五十音順)と合同検証に取り組む。
商品パッケージを制作するには、業界のルール、ロゴやマークの表示方法など企業独自ルールに準拠する必要があるため、社内の多部門が横断的に校正・校閲作業を行ういわゆるクロスチェックを行うが、機械化・自動化がなかなか進められないこと、製品ライフサイクルの短期化や多品種化により、校正・校閲作業が増加していること、などを開発の背景として同社は挙げている。なお、同社では今回の取り組みとは別にポスターやチラシ、POP、契約書などに業界や企業独自ルールをAI学習する広告物向けサービスの開発も予定しており、SaaS形式で企業ごとの印刷物を中心とした校正・校閲作業軽減を目指す姿がうかがえる。
開発には、金融機関の業務システムや情報セキュリティ関連のシステムソリューションを手がけるインテリジェント ウェイブやAI関連のコンサルティングも提供するブレインズコンサルティング、AI OCRに実績のあるAI insideの3社と協力し、校正・校閲作業の負荷7割減、2020年の春の実用化を目指す。