インターネットイニシアティブ(IIJ)は5月22日、医療プラットフォーム「IIJ電子@連絡帳サービス」において、新たなコミュニケーションツール「ここのーと」の提供を開始しました。

IIJ電子@連絡帳サービスは、在宅医療に関わる医師や看護師といった支援専門職と、患者やその家族が、医療・介護情報を共有するものです。ここのーとは全国の自治体・施設向けの機能で、患者自身や家族がスマホやタブレットを通じて、専門職と情報を共有できるようになります。提供価格は月額5万円(行政あたり、税別)となっていますが、IIJ電子@連絡帳サービス(月額20万円、行政あたり、税別)のオプションサービスとなります。

  • ここのーとの例。「みんなにつぶやく」で近況を専門家チーム全員に知らせます。チームからの返信も可能ですし、読めば既読マークが付きます

  • 「先生とのやり取り」は、指定した医師だけにメッセージを伝えます

患者や被介護者が、医者やケアチームに対して近況を伝えるツールがここのーと。いわゆる医療・介護分野において、セキュリティとプライバシー保護が強化されたLINEのようなSNSツール、あるいは担当専門家チームが閲覧する患者日記と思えばいいでしょう。

対象となるチーム全員に伝える「みんなにつぶやく」と、医師への個別連絡となる「先生とのやりとり」という2のメニューがあります。これにより、患者が通院先に行かなくても、近況や気になることを医療チームに伝え、ゆるやかなつながりを維持できます。

  • インターネットイニシアティブ 地域システム推進本部 ヘルスケア事業推進部長の喜多剛志氏

ここのーとを使うと、患者の普段の生活記録を参考にした専門家の判断によって、在宅療養支援の品質向上につながります。また、患者に加えて家族のアカウントを追加することで、家族が患者に知られることなく、医療チームに情報を伝えられるのもポイントです。

すでに、長野県立こども病院がここのーとの運用をスタート。患者の印象として、先生に見守られている感が高まるといいます。病気やリハビリに対するモチベーションアップにつながり、家族の負担が軽減されたそうです。

  • ここのーとは、小児医療に携わる医師の要望から生まれました。身近な情報を解決に役立てるのは、子どもだけでなく、高齢者の介護にも重要です

  • 簡単な操作で、治療や介護に役立つかもしれない情報を共有。家族アカウントを使うと、患者本人にとってセンシティブな情報を、医師と家族だけでやりとりできます

IIJ電子@連絡帳サービス

ここのーとの利用は、地域包括ケア専門職向けの「IIJ電子@連絡帳サービス」が前提となっています。

高齢化社会や医師不足などの地域課題を少しでも解決するには、地域の中核病院、医師、ケアマネージャー、そして行政が一体となって連携する必要があります。こうした連携について、名古屋大学 医学部付属病院 先端医療開発部 先端医療・臨床研究支援センターが実証実験と開発を行っていました。

しかし、名古屋大学のものはオンプレミス版で、多くの自治体に普及させにくいことがネックでした。そこで、医療情報ガイドラインに対応したセキュリティ実装、クラウドサービスの開発・運用ノウハウを持つIIJが共同研究に取り組み、IIJ電子@連絡帳サービスが生まれました。

自治体それぞれの名前(例えば名古屋医療圏では「はち丸ネットワーク」)を付けて運用されていますが、現在は60行政・地域で導入。さらに、複数の自治体で広域連携する運用も、5地域39行政で行われています。

広域連携によって、患者や介護対象者の情報を、医師のほか30職種以上の参加者で共有できるそうです。見守られる患者は13,000人を超えています。

  • 医療・介護サービスの改革や品質向上には、多職種の連携が必要。名古屋大学 医学部付属病院 先端医療開発部 先端医療・臨床研究支援センターと、IIJの共同研究で生まれたのが「IIJ電子@連絡帳サービス」

  • すでに60行政・地域で導入されており、13,000人以上の患者に関して、「医師やスタッフの手で入力された生きている情報」を蓄積、共有しています

  • 元々が名古屋大学で開発されていたこともあり、愛知県ではほぼ導入済み。他の地域でも運用が進んでおり、和歌山県のように6市町村が広域連携している事例もあります

  • 違う組織に属していても、それぞれが記録した情報を共有することで、ケアの質を上げようというのがIIJ電子@連絡帳サービスの狙い