先日発表された「カメラグランプリ2019」で見事に大賞を受賞したのが、パナソニックのフルサイズミラーレス「LUMIX S1R」(DC-S1R)です。ソニーやニコン、キヤノンが先行する同ジャンルでは最後発となる製品ですが、有効4730万画素の高画素センサーがもたらす描写や2億画素に迫る写真が撮影できるハイレゾモードの存在、精細な表示のEVF、練り込まれた操作性などが注目を集めています。改めて、LUMIX S1Rの特徴をチェックしていきましょう。

  • パナソニックのフルサイズミラーレスカメラ「LUMIX S1R」

    3月下旬に販売を開始したパナソニックのフルサイズミラーレス「LUMIX S1R」。装着しているのは、使い勝手のよい標準ズームレンズ「LUMIX S 24-105mm F4 MACRO O.I.S.」。実売価格は、LUMIX S1R単体が税込み49万円前後、前述のレンズが付属する標準ズームレンズキットが税込み61万円前後となります

ライカやシグマが推進するLマウントを採用

まず、LUMIX S1Rのおもな特徴をまとめておきたいと思います。

  • ライカやシグマと共同で推進する「Lマウント」を採用
  • 現在最高水準の画素数を持つ有効4,730万画素のフルサイズCMOSセンサー
  • 1億8,700万画素相当の写真が撮影できるハイレゾモード
  • 操作性を重視したゆとりのある設計のボディー
  • 現在最高水準の精細な表示が可能な576万ドットのEVF(電子ビューファインダー)
  • 最大5.5段分の補正効果が得られるボディー内手ぶれ補正機構
  • 動物や鳥などを認識して追従する高速オートフォーカス
  • XQDメモリーカードとSDメモリーカードのダブルスロット

LUMIX S1Rの特徴の1つが、ライカが開発した「Lマウント」を採用したことにあります。これまでは、ライカのフルサイズミラーレスカメラ「ライカ SL」などで使われてきましたが、ライカ、パナソニック、シグマの3社がメーカーの壁を超えて協業し、普及を推進していくことになりました。3社が交換レンズなどのアクセサリーを精力的に投入していくと表明しており、ほかのフルサイズミラーレスよりも交換レンズが早期に充実することが期待できます。

各社のフルサイズミラーレスのなかでも最高水準の高画素フルサイズセンサーを搭載したのも、LUMIX S1Rの特徴として挙げられます。画素数は有効4,730万画素と高画素で、センサーの表面には内面反射を抑えるAR(Anti Reflection)コーティングが施され、画質を徹底的に追求した設計になっています。

  • LUMIX S1Rは、解像感を重視したローパスフィルターレスの有効4,730万画素フルサイズCMOSセンサーを搭載。レンズマウントは、ライカおよびシグマと推進するLマウントを採用します

ボディー内手ブレ補正機構を利用して、センサーを細かく動かしながら8回連続で撮影した画像を合成し、約1億8700万画素もの高解像写真を生成する「ハイレゾモード」を搭載するのも特徴です。撮影には三脚が必須となりますが、2億画素に迫る異次元の写真が手軽に撮れるのは大きな魅力といえます。

ちなみにフルサイズとは、かつて使われていた35mmフィルムに由来するフォーマットで、イメージセンサー(撮像素子)はおよそ36×24mmの大きさを持ちます。古くから多くのカメラで使われている代表的なフォーマットであることや、使うレンズの焦点距離からおおよその画角が把握しやすこと、ひとまわり小さいAPS-Cフォーマットなどと比べて画質面で有利なことなどから、ミラーレスや一眼レフで主流になっています。

ボディーは大きいが操作しやすい

LUMIX S1Rを手にして感じるのが、存在感のあるボディー。競合のフルサイズミラーレスと比べてもひと回り以上大きく、フルサイズデジタル一眼レフ並みのボリュームがあります。LUMIX S1Rの大きさはW148.9×H110×D96.7mm、重さは1016gと、W150.7×H116.4×D75.9mm、重さ890gのフルサイズ一眼レフ「EOS 5D Mark IV」と肩を並べるほど。重さはEOS 5D Mark IVより実に100g以上も重たいのです。純正レンズも大きく重い高性能タイプばかりなので、少しでも機材を軽くしたいと考える写真愛好家は残念に感じるかもしれません。

  • 大柄なボディーは、小型軽量化を目指しているライバルと大きく異なるところ。プロやハイアマチュアの使用を意識した設計といえ、グリップも余裕あるサイズなのでしっかりとカメラをホールドできます。カメラらしい硬派なデザインは好感の持てる部分です

  • 背面にはボタンやレバー類が多く搭載されていますが、ほとんどが1ボタンにつき1機能であるため、迷うことなく直感的で確実な操作を可能としています

とはいえ、ボディーが大柄で持ちやすいため、望遠ズームレンズなど大きなレンズを装着したときのバランスは良好だと感じました。ゆとりのあるボディーを生かし、ボタンやレバーなどの操作部は基本的にひとつの機能しか割り当てられていないため、ある程度慣れれば迷うことなく操作できるでしょう。

  • 撮影モードダイヤルとドライブモードダイヤルは左側の肩に置かれています。ボタン類の操作を無効とする操作ロックレバーが用意されているのは、プロ向けモデルらしい配慮といえます

  • パナソニック独自の3連ボタンをシャッターボタン後方に装備。中央のISOボタンには小さな突起があり、指先で認識できる工夫が施されています。ただし、使用頻度の高い露出補正ボタンの位置はちょっと考えてほしかったところです

  • AFフレームを選択するジョイスティックやコントロールダイヤルは、撮影中に手探りでも操作できる位置に置かれています

EVFの精細さや見やすさは抜群、背面液晶にも工夫あり

576万ドットの精細なEVFも、LUMIX S1Rの見どころといえます。一説によると、一眼レフの光学ファインダーのようなクリアで鮮明な見え具合は、800万ドットから1000万ドットであれば可能とのことですが、LUMIX S1RのEVFの見え具合はこれまでのミラーレスで経験したことがないほど高精細で、細かなピント位置なども容易に把握できます。評価したいのは、接眼部の光学系の設計で、ファインダー像のにじみやゆがみといった不満はまったく感じられません。ミラーレスの将来を占うEVFと述べてよいものです。

  • 丸いラバーが特徴的なアイピース部。EVFは576万ドットの有機ELで、ザラザラとした粒状感のようなものがほとんどなく、OVF(光学ファインダー)に迫る見え具合を誇ります。120fpsの滑らかな表示や、タイムラグ0.0005秒の遅延のない高速表示もポイントです

  • 背面液晶は3.2インチで、ドット数は210万ドットと現在最高水準の精細な表示が可能です

  • 液晶は3軸チルト式で、上方向および下方向のほか、タテ位置での撮影時に便利な横方向にも動きます

手ぶれ補正で一世を風靡したLUMIXらしく、LUMIX S1Rもセンサーシフト方式の手ぶれ補正機構を搭載しています。シャッター速度に換算して最高5.5段分の補正効果が得られるほか、手ぶれ補正機構内蔵レンズと組み合わせた場合は補正効果が最大6段分に高まります。

  • ボディー内手ぶれ補正機構とレンズ内の手ぶれ補正機構を連動させ、補正機能を高める機能も備わってます

高速オートフォーカスも特筆すべき部分といえます。大きくピントが外れた状態からでも、カメラが悩むことなく素早くピントを合わせてくれるうえ、コンティニュアスAF時の被写体追従性についてもデジタル一眼レフとほとんど遜色がなく、ストレスフリーで撮影ができます。オートフォーカスは-6EVの低照度下でも機能するのも特筆すべき点といえます。

さらにユニークなのが、AFモードの「自動認識」機能です。人物の顔や瞳のほかに、人体、動物(ネコ科およびイヌ科)、鳥などを認識してピントを合わせてくれるので、スポーツなどで素早く動く人物やペットの生き生きとした表情を確実に捉えることができます。

メカシャッターで9コマ/秒を実現する連写機能や、シャッタータイミングを見逃すことのない4K PHOTO/6K PHOTO、大型化されたバッテリー、質感が高くプロ機にふさわしい防塵防滴構造のボディーなど、完成度の高いフルサイズミラーレスに仕上がっていると感じます。

  • バッテリーは3,050mAhと大型。フル充電からの静止画撮影可能枚数は、EVFおよび SDカード使用時で360枚としています。実売価格は税込み9,700円前後

  • カードスロットはXQDとSDXC(UHS-I/II対応)のWスロット。両方のスロットにカードを差し込んだ際は、順次記録/バックアップ記録/振り分け記録が可能となります

次回の後編では、現在販売しているパナソニック製のLマウント交換レンズ3本を用い、LUMIX S1Rの描写性能を実写で紹介します。

著者プロフィール
大浦タケシ

大浦タケシ

宮崎県都城市生まれ。日本大学芸術学部写真学科卒業後、雑誌カメラマンやデザイン企画会社を経てフォトグラファーとして独立。以後、カメラ誌および一般紙、Web媒体を中心に多方面で活動を行う。2018年は、昨年に続き写真展(個展)が開催できず猛省。2019年は少なくとも写真を撮りため、写真展の足がかりをつくりたいと考えています。日本写真家協会(JPS)会員。